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第22章 改革の歌
第320話 改革の産声
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「本当にいいんだな……ジフウ」
「ああ……俺も満足だ。陛下から貰った特別ボーナス……しっかり堪能させてもらったぜ……」
人気がない夜の王都の正門前広場で、ゼロラとジフウは話し合っていた。
ゼロラは仰向けになって倒れたままのジフウの傍に座り、この戦いの結末について尋ねていた。
ジフウにとってゼロラに敗北したことは悔しかった。
だが、それ以上にこの戦いを楽しめたことが嬉しかった。
一切の責務を忘れ、縛り付けられた鎖から解き放たれ、【龍殺しの狂龍】としての本性を曝け出したことへの解放感――
それがジフウにとって、何よりの勲章だった。
「さてと……。それじゃ、<絶対王権>の力の元、他の奴らにもこの戦いの決着を知らせるとしますか」
倒れたままのジフウは左拳を夜空に掲げ、宣言した――
「この俺! 王国側の総大将、国王直轄黒蛇部隊のジフウは! 改革派に敗北した! この戦いは……この時をもって改革派の勝利とする!!」
ジフウが事前に<絶対王権>で自らを王国側の総大将へと仕立て上げていたため、その宣言はルクガイア王国中に届いた。
王都にいた住人達は、動揺しながらも少しずつ姿を現す。
「ほ、本当に改革が成立したのか……?」
「こ、これからどうなるんだ……?」
「分からない……。でも、やるべきことはあるはずだ」
動揺している住人達だったが、事前にオジャル伯爵とザ・マスの呼びかけによって、多少なりとも変化を受け止めることができた。
「ゼロラさーん! 自分達も聞きましたー!」
「とうとうやったんスね! ルクガイア王国の改革実現を!」
「てか、なんでジフウの兄貴が王国側の総大将になっとるんや!?」
そんなゼロラとジフウの元に、ラルフルとサイバラとシシバの三人が駆け付けた。
ジフウが敗北を宣言したことで、王国騎士団も戦意を失ったため、三人ともここまで問題なく来ることができた。
ラルフルは涙を流しながら、ゼロラと共に歩んできた道の終着点にたどり着いたことを喜んだ。
サイバラも元々貴族を嫌っていた身。この勝利を心から喜んだ。
シシバも勝利に喜んでいたが、なぜ自らの兄が敵の総大将になっているのかを不思議がっていた。
「ウハハハ……。気にするな、シシバ。事情は後で説明してやるよ。ともかく……俺の――王国側の敗北なのは事実だ」
ゼロラとの戦いで満身創痍だったジフウだが、体を起こしながら周囲にそのことを伝えた。
「ああ。確かにこれで俺達改革派の勝利となった。だが、本当の意味での改革はまだ始まってすらいない」
喜ぶ周囲に対して、ゼロラは座りながら答えた。
これはまだ改革を行うための第一歩に過ぎない。
"貴族制度の撤廃"――格差社会の解消。
それらを始めとするルクガイア王国への本当の変化はこれから始まる。
「ここからはガルペラやロギウスの力が特に必要になる。この国を正しく導くためには……あいつらの力が必要だ」
ゼロラは願い、そして信じた。
自分達が築き上げた改革への道が、このルクガイア王国を本当の意味で発展させることを――
「よくぞここまでたどり着いてくれた。諸君」
そんなゼロラ達の元に、一人の人物がやって来た。
現ルクガイア王国国王・ルクベール三世が――
「ウハハ……。すいませんね、陛下……。<絶対王権>を俺の私欲のために使っちゃって……」
「気にするな、ジフウ。元より<絶対王権>は、これまで余を支えてきてくれたお主への褒美。それにお主なら、腐敗した貴族のように悪用はしないだろうと信じておったぞ」
「ありがたいお言葉ですね……。ウハハハ……」
国王はゼロラ達の健闘を称え、側近として支え続けてきてくれたジフウを称賛した。
国王も望み続けたルクガイア王国の改革。
腐敗と巨大化を続けた貴族の権力は今日この時、終わりを告げた。
これからルクガイア王国の新しい時代が始まる――
「ああ……俺も満足だ。陛下から貰った特別ボーナス……しっかり堪能させてもらったぜ……」
人気がない夜の王都の正門前広場で、ゼロラとジフウは話し合っていた。
ゼロラは仰向けになって倒れたままのジフウの傍に座り、この戦いの結末について尋ねていた。
ジフウにとってゼロラに敗北したことは悔しかった。
だが、それ以上にこの戦いを楽しめたことが嬉しかった。
一切の責務を忘れ、縛り付けられた鎖から解き放たれ、【龍殺しの狂龍】としての本性を曝け出したことへの解放感――
それがジフウにとって、何よりの勲章だった。
「さてと……。それじゃ、<絶対王権>の力の元、他の奴らにもこの戦いの決着を知らせるとしますか」
倒れたままのジフウは左拳を夜空に掲げ、宣言した――
「この俺! 王国側の総大将、国王直轄黒蛇部隊のジフウは! 改革派に敗北した! この戦いは……この時をもって改革派の勝利とする!!」
ジフウが事前に<絶対王権>で自らを王国側の総大将へと仕立て上げていたため、その宣言はルクガイア王国中に届いた。
王都にいた住人達は、動揺しながらも少しずつ姿を現す。
「ほ、本当に改革が成立したのか……?」
「こ、これからどうなるんだ……?」
「分からない……。でも、やるべきことはあるはずだ」
動揺している住人達だったが、事前にオジャル伯爵とザ・マスの呼びかけによって、多少なりとも変化を受け止めることができた。
「ゼロラさーん! 自分達も聞きましたー!」
「とうとうやったんスね! ルクガイア王国の改革実現を!」
「てか、なんでジフウの兄貴が王国側の総大将になっとるんや!?」
そんなゼロラとジフウの元に、ラルフルとサイバラとシシバの三人が駆け付けた。
ジフウが敗北を宣言したことで、王国騎士団も戦意を失ったため、三人ともここまで問題なく来ることができた。
ラルフルは涙を流しながら、ゼロラと共に歩んできた道の終着点にたどり着いたことを喜んだ。
サイバラも元々貴族を嫌っていた身。この勝利を心から喜んだ。
シシバも勝利に喜んでいたが、なぜ自らの兄が敵の総大将になっているのかを不思議がっていた。
「ウハハハ……。気にするな、シシバ。事情は後で説明してやるよ。ともかく……俺の――王国側の敗北なのは事実だ」
ゼロラとの戦いで満身創痍だったジフウだが、体を起こしながら周囲にそのことを伝えた。
「ああ。確かにこれで俺達改革派の勝利となった。だが、本当の意味での改革はまだ始まってすらいない」
喜ぶ周囲に対して、ゼロラは座りながら答えた。
これはまだ改革を行うための第一歩に過ぎない。
"貴族制度の撤廃"――格差社会の解消。
それらを始めとするルクガイア王国への本当の変化はこれから始まる。
「ここからはガルペラやロギウスの力が特に必要になる。この国を正しく導くためには……あいつらの力が必要だ」
ゼロラは願い、そして信じた。
自分達が築き上げた改革への道が、このルクガイア王国を本当の意味で発展させることを――
「よくぞここまでたどり着いてくれた。諸君」
そんなゼロラ達の元に、一人の人物がやって来た。
現ルクガイア王国国王・ルクベール三世が――
「ウハハ……。すいませんね、陛下……。<絶対王権>を俺の私欲のために使っちゃって……」
「気にするな、ジフウ。元より<絶対王権>は、これまで余を支えてきてくれたお主への褒美。それにお主なら、腐敗した貴族のように悪用はしないだろうと信じておったぞ」
「ありがたいお言葉ですね……。ウハハハ……」
国王はゼロラ達の健闘を称え、側近として支え続けてきてくれたジフウを称賛した。
国王も望み続けたルクガイア王国の改革。
腐敗と巨大化を続けた貴族の権力は今日この時、終わりを告げた。
これからルクガイア王国の新しい時代が始まる――
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