319 / 476
第22章 改革の歌
第319話 決戦・【龍殺しの狂龍】⑤
しおりを挟む
両腕にそれぞれ<蛇の予告>と<龍の宣告>をかけ、全身から<青色のオーラ>を滾らせながら、ジフウはゼロラへと近づく。
その顔に浮かんでいるのは、これまで以上の狂気の笑み。
渇望していた戦いへの欲求が、今まさに満ち足りてきたことの証明――
「どうやら……完全に本性が出てきたみたいだな……!」
ジフウの姿を見たゼロラには理解できた。
これまで国王直轄黒蛇部隊の隊長として。シシバとリョウの兄として。
自らの責務のために、自らの意志とは別の行動を余儀なくされていたジフウ。
それがゼロラとの戦いの中で、自らが本当に望んでいた強者との戦いによって、ついに完全に目覚めさせたのだ――
【龍殺しの狂龍】――その狂った本性を――
「ウッハッハッハッ! さあ! そろそろ決着と行こうかぁあ! ゼロラァアア!!」
ジフウは高らかな宣言と共に、ゼロラへと挑む。
狂った本性を曝け出せど、ジフウのテクニックに衰えはない。
ジフウのコンディションは最高潮に達し、"冷静なまま狂う"という相反した二つの感情を同居させていた。
「ジフウゥウウ!!」
「ゼロラァアア!!」
そんなジフウの姿にゼロラも全力で応える。
ここまでくると余計な考えも必要ない。
必要なのは、それぞれの身に刻まれた力と技のみ――
<黒蛇の右>と<青龍の左>を常時展開させたジフウの猛攻に対しても、ゼロラは互角に渡り合う。
国の命運をかけた二人の男の戦いだが、その結末は"修羅"と"龍"という、二匹の男によって結末を迎えようとしていた。
ボガァ! ドギャァ!
「負けられねえんだよぉお!!」
「だったら俺を倒してみやがれぇえ!!」
思いを乗せたゼロラの拳をジフウは捌く。
それでも終わらぬとゼロラが猛烈に攻め立てる。
ドガンッ! バギャンッ!
「ケリつけてやるよぉお!!」
「やってみろ……! 改革最後の敵は……この俺だぁあ!!」
ジフウが忠誠を誓う国王の思惑は、王国側の敗北――すなわち、ジフウの敗北。
だがこの狂う程に昂る戦いで、"わざと負ける"などという無粋な真似は許されなかった。
――それは、ゼロラもジフウも同じ気持ち。
「ハァ……ハァ……!」
「ウハハ……ウハ……!」
戦いの衝撃による余波で、王都正門前広場は大きく荒れていた。
人智を超越した激闘は、人の身でありながら人を超えた二人にも限界が近づいていた。
「そろそろ決めるとするか……!」
「ああ、そうだな……!」
互いの限界が近づいたことを感知した二人は、距離を置いたままそれぞれの拳に力を込める。
ゼロラは<灰色のオーラ>が纏われた右拳を――
ジフウは<青龍の左>を発動させた左拳を――
「ジィィフゥウゥウウ!!」
「ゼェェロォラァアア!!」
互いが同時にそれぞれの全力を込めた拳を振り上げ、殴り掛かる。
その拳は互いの頬目がけて――
ドギャアァン!!
――交差した。
「んぐぅ……!」
「だぐぁ……!」
それぞれの拳が衝突した瞬間、二人の動きが止まる。
ゼロラの右拳はジフウの右頬へ――
ジフウの左拳はゼロラの左頬へ――
拳を交差させたまま、少しばかりの時間が流れた――
「へ……へへ……。本当にとんでもない男だ……。魔力なんて……ねえくせによ……」
――そしてジフウの口から言葉が漏れた。
それは己の限界を示す言葉――
その言葉と同時にジフウの両手に纏われていた風魔法も、全身を纏っていた<青色のオーラ>も、霧散するように消えていった。
そしてジフウは膝から崩れ落ち、地面へと仰向けに倒れ込んだ。
「やっと決着がついたな……ジフウ」
ジフウの姿を上から見下ろすゼロラは、<灰色のオーラ>を纏いながら語り掛けた。
「ああ……お、俺の……負けだ……」
ジフウが完全に敗北を認めたのを確認したゼロラ。
それによってゼロラの<灰色のオーラ>も消えていった――
ルクガイア王国の改革のための戦い――
【零の修羅】と【龍殺しの狂龍】の雌雄――
その決着が、今まさについたのだった。
その顔に浮かんでいるのは、これまで以上の狂気の笑み。
渇望していた戦いへの欲求が、今まさに満ち足りてきたことの証明――
「どうやら……完全に本性が出てきたみたいだな……!」
ジフウの姿を見たゼロラには理解できた。
これまで国王直轄黒蛇部隊の隊長として。シシバとリョウの兄として。
自らの責務のために、自らの意志とは別の行動を余儀なくされていたジフウ。
それがゼロラとの戦いの中で、自らが本当に望んでいた強者との戦いによって、ついに完全に目覚めさせたのだ――
【龍殺しの狂龍】――その狂った本性を――
「ウッハッハッハッ! さあ! そろそろ決着と行こうかぁあ! ゼロラァアア!!」
ジフウは高らかな宣言と共に、ゼロラへと挑む。
狂った本性を曝け出せど、ジフウのテクニックに衰えはない。
ジフウのコンディションは最高潮に達し、"冷静なまま狂う"という相反した二つの感情を同居させていた。
「ジフウゥウウ!!」
「ゼロラァアア!!」
そんなジフウの姿にゼロラも全力で応える。
ここまでくると余計な考えも必要ない。
必要なのは、それぞれの身に刻まれた力と技のみ――
<黒蛇の右>と<青龍の左>を常時展開させたジフウの猛攻に対しても、ゼロラは互角に渡り合う。
国の命運をかけた二人の男の戦いだが、その結末は"修羅"と"龍"という、二匹の男によって結末を迎えようとしていた。
ボガァ! ドギャァ!
「負けられねえんだよぉお!!」
「だったら俺を倒してみやがれぇえ!!」
思いを乗せたゼロラの拳をジフウは捌く。
それでも終わらぬとゼロラが猛烈に攻め立てる。
ドガンッ! バギャンッ!
「ケリつけてやるよぉお!!」
「やってみろ……! 改革最後の敵は……この俺だぁあ!!」
ジフウが忠誠を誓う国王の思惑は、王国側の敗北――すなわち、ジフウの敗北。
だがこの狂う程に昂る戦いで、"わざと負ける"などという無粋な真似は許されなかった。
――それは、ゼロラもジフウも同じ気持ち。
「ハァ……ハァ……!」
「ウハハ……ウハ……!」
戦いの衝撃による余波で、王都正門前広場は大きく荒れていた。
人智を超越した激闘は、人の身でありながら人を超えた二人にも限界が近づいていた。
「そろそろ決めるとするか……!」
「ああ、そうだな……!」
互いの限界が近づいたことを感知した二人は、距離を置いたままそれぞれの拳に力を込める。
ゼロラは<灰色のオーラ>が纏われた右拳を――
ジフウは<青龍の左>を発動させた左拳を――
「ジィィフゥウゥウウ!!」
「ゼェェロォラァアア!!」
互いが同時にそれぞれの全力を込めた拳を振り上げ、殴り掛かる。
その拳は互いの頬目がけて――
ドギャアァン!!
――交差した。
「んぐぅ……!」
「だぐぁ……!」
それぞれの拳が衝突した瞬間、二人の動きが止まる。
ゼロラの右拳はジフウの右頬へ――
ジフウの左拳はゼロラの左頬へ――
拳を交差させたまま、少しばかりの時間が流れた――
「へ……へへ……。本当にとんでもない男だ……。魔力なんて……ねえくせによ……」
――そしてジフウの口から言葉が漏れた。
それは己の限界を示す言葉――
その言葉と同時にジフウの両手に纏われていた風魔法も、全身を纏っていた<青色のオーラ>も、霧散するように消えていった。
そしてジフウは膝から崩れ落ち、地面へと仰向けに倒れ込んだ。
「やっと決着がついたな……ジフウ」
ジフウの姿を上から見下ろすゼロラは、<灰色のオーラ>を纏いながら語り掛けた。
「ああ……お、俺の……負けだ……」
ジフウが完全に敗北を認めたのを確認したゼロラ。
それによってゼロラの<灰色のオーラ>も消えていった――
ルクガイア王国の改革のための戦い――
【零の修羅】と【龍殺しの狂龍】の雌雄――
その決着が、今まさについたのだった。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
妹を見捨てた私 ~魅了の力を持っていた可愛い妹は愛されていたのでしょうか?~
紗綺
ファンタジー
何故妹ばかり愛されるの?
その答えは私の10歳の誕生日に判明した。
誕生日パーティで私の婚約者候補の一人が妹に魅了されてしまったことでわかった妹の能力。
『魅了の力』
無自覚のその力で周囲の人間を魅了していた。
お父様お母様が妹を溺愛していたのも魅了の力に一因があったと。
魅了の力を制御できない妹は魔法省の管理下に置かれることが決まり、私は祖母の実家に引き取られることになった。
新しい家族はとても優しく、私は妹と比べられることのない穏やかな日々を得ていた。
―――妹のことを忘れて。
私が嫁いだ頃、妹の噂が流れてきた。
魅了の力を制御できるようになり、制限つきだが自由を得た。
しかし実家は没落し、頼る者もなく娼婦になったと。
なぜこれまであの子へ連絡ひとつしなかったのかと、後悔と罪悪感が私を襲う。
それでもこの安寧を捨てられない私はただ祈るしかできない。
どうかあの子が救われますようにと。
義理の妹が妊娠し私の婚約は破棄されました。
五月ふう
恋愛
「お兄ちゃんの子供を妊娠しちゃったんだ。」義理の妹ウルノは、そう言ってにっこり笑った。それが私とザックが結婚してから、ほんとの一ヶ月後のことだった。「だから、お義姉さんには、いなくなって欲しいんだ。」
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
私、幸せじゃないから離婚しまーす。…え? 本当の娘だと思っているから我慢して? お義母さま、ボケたのですか? 私たち元から他人です!
天田れおぽん
恋愛
ある日、ふと幸せじゃないと気付いてしまったメリー・トレンドア伯爵夫人は、実家であるコンサバティ侯爵家に侍女キャメロンを連れて帰ってしまう。
焦った夫は実家に迎えに行くが、事情を知った両親に追い返されて離婚が成立してしまう。
一方、コンサバティ侯爵家を継ぐ予定であった弟夫婦は、メリーの扱いを間違えて追い出されてしまう。
コンサバティ侯爵家を継ぐことになったメリーを元夫と弟夫婦が結託して邪魔しようとするも、侍女キャメロンが立ちふさがる。
メリーを守ろうとしたキャメロンは呪いが解けてTS。
男になったキャメロンとメリーは結婚してコンサバティ侯爵家を継ぐことになる。
トレンドア伯爵家は爵位を取り上げられて破滅。
弟夫婦はコンサバティ侯爵家を追放されてしまう。
※変な話です。(笑)
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる