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第22章 改革の歌

第314話 決着の時『龍』

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 ■ ◇ ■ ◇ ■


 バサァア―― バサァア――

 ゼロラとジフウ。その二人が同時に上着を脱ぎ捨てたその時、再びその現象は起こった。



 ゼロラの体から溢れ出る、<灰色のオーラ>。
 ジフウの体から溢れ出る、<青色のオーラ>。



 ゼロラがサイバラと戦った時と同じく、ジフウが両目が健在のシシバと戦った時と同じく――
 今この場にいる二人の心技体が、極めて高く同レベルまで達したことで、二人の体はそれぞれの色のオーラに纏われた。

「やっぱりお前もできるんだな、ゼロラ。絶対にこうなると信じてたぜ……!」
「こっちこそこうなると思ってたぜ、ジフウ……!」

 すでに陽は完全に落ちている。王都内の火事も、おおよそ消火活動が終わり始めていた。
 暗くなった王都の広場で、二人のオーラの輝きだけが辺りを照らす――

 王国騎士団との騒動でこの場に近づく人間はいなかった。
 二人だけで雌雄を決するための舞台――

「俺は改革派として勝利すためにお前を倒す。だが――」
「俺は王国側の総大将としてお前を倒す。だが――」

 ゼロラとジフウは互いに睨み合いながら距離を空ける。
 そして語るは各々がこの戦いにかける目的。



 だが、それ以上のものがこの二人を突き動かしていた。



「今度こそ完全に決着をつける……!」
「ああ。もう誰にも邪魔なんてさせやしねえ……!」

 二人の男が共に抱く、戦いへの衝動――
 それがゼロラとジフウを突き動かしていた。

 過去二度に渡る戦いの機会。
 王都の"壁周り"で偶然出会った時は、ジフウを落ち着かせることが目的だったため、お互いの力量を出し切ることなく終わった――
 バクト公爵邸でジフウが王国側の先兵として出てきた時は、王国騎士団団長バルカウスの横やりが入り、不完全燃焼に終わった――

 しかし今回は違う。
 今度こそ完全な形でこの二人の勝負に決着がつけられる。

 そして、個人的な決着をつけようとする二人の肩には、ルクガイア王国の未来も乗せられていた――

「覚悟はいいな? ジフウ……!」
「いつでもいいぜ。ゼロラ……!」

 ゼロラとジフウはお互いに距離が空いた状態で走り出す構えをとる。



 "己の過去よりも、人々の未来を望む男"、ゼロラ。
 "未来のため、過去として立ちふさがる男"、ジフウ。



 国の未来と雌雄の決着。
 その双方を賭けた戦いが今、幕を上げようとしていた――

「ジィィフゥウゥウウ!!」
「ゼェェロォラァアア!!」

 互いの名前を叫び合いながら、ゼロラとジフウは駆け始める。



 ――ドガァアアン!!



 そのままお互いが睨み合ったまま、二人の額と肩が激しく衝突する。
 【零の修羅】と【龍殺しの狂龍】。
 その二人の決戦が今まさに始まった――
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