記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第20章 獅子は吠え、虎は猛る

第282話 決着の時『虎』

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 ■ ◇ ■ ◇ ■


 バサァア――


 上着を脱ぎ捨てたゼロラの体から<灰色のオーラ>があふれ出す。
 そんなゼロラの姿を見て、サイバラは特に驚くこともなく話しかける。

「……本当に本気で言ってるみたいッスね」
「ああ。今回は俺も容赦なく本気を出させてもらう。俺がお前に……ケジメをつけさせてやるよぉ!!」

 そんなゼロラの言葉を聞いたサイバラは――

「ダハハハ……。ダハハハハハ! ダーハハハハハッ!!」

 ――高々と笑い始めた。
 だがそれは決して嘲笑や侮辱の類ではない。

 サイバラは目の前にいるゼロラという男をこの瞬間、心の底から認めていた。

「まったく! つくづく! あんたってぇ人は! こーんな時でさえ、なーんにも変わりゃぁしない!! それなのに――いや、だからこそ! あんたの周りにはシシバのカシラを始めとした、多く人間が寄り添うんだろうなぁ!!」
「どうした? 俺の首では不満か?」
「いいやぁ、十分だぁ……! こんな時でも拳で語ろうって気概――オレぁ、嫌いじゃねぇよぉ……!」

 ゼロラの覚悟をヒシヒシと感じ取ったサイバラは持っていた銃を捨て、これまでずっと付けていたサングラスに手をかけ――


 カチャァアン――


 ――そのサングラスを投げ捨てた。
 そこから現れたのは血に飢えた虎の如き眼光を宿す、黄色の瞳。

 そして、ゼロラの<灰色のオーラ>と同じように、サイバラの体からもあふれ出す<黄色のオーラ>。

「そこまであんたが言ってくれるなら、オレも遠慮なく胸を借りさせていただくッスよ?」

 ゼロラもサイバラも、お互いが同じレベルに立っていることを感じ取っていた。



 以前リョウがゼロラに述べた仮説は正しかった。

 『戦う相手同士の心技体が高いレベルで発動するオーラ』――

 そのオーラをゼロラとサイバラの二人がそれぞれ身に纏っていた。

「ああ。遠慮なく来い、サイバラ。今回は俺も一切の手加減ができねえ。……死ぬことになるかもしれないが、恨むんじゃあないぜ?」

 <灰色のオーラ>を身に纏わせながら、ゼロラがサイバラへと近づく――

「そっちこそ下手に余裕をぶっこいて、うっかりオレに殺されないでほしいッスね? 【虎殺しの暴虎】の本領を見せてやりますよぉ……!」

 <黄色のオーラ>を身に纏わせながら、サイバラもゼロラへと近づく――



 お互いが至近距離で顔を合わせて睨み合うところまで近づく――

「覚悟はいいな?」
「ええ。いつでもどうぞ……!」

 一呼吸――
 ゼロラとサイバラが一呼吸をつき、お互いに改めて覚悟を決めた。



 "忌むべき過去も記憶もない男"、ゼロラ。
 "忌むべき過去の記憶に囚われた男"、サイバラ。



 その二人の決戦が今始まろうとしていた――

「来ぉおい!! サイバラァアア!!!」
「シャァアアア!! ゼロラぁああ!!!」

 お互いがお互いの名前を叫びながら頭突きを放つ。



 ――ゴゥウウン!!



 それがこの決戦のゴングとなった――
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