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第18章 光と闇の分岐点
第245話 自分の目標
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大変な目に会いました……。
自分のちょっとしたお礼の気持ちのはずがリョウ大神官にメイド服を着せられて、ずっと"撮影会"というものをやらされ続けました。
メイド服のまま色々なポーズを"カメラ"という記録装置によって、その姿を写されました。
『これでオカズに困らないよ』とリョウ大神官は言ってましたが、何のことかはよく分かりません。
……よく分からないままにしておきたいです。
「そう……。大変だったわね、ラルフル」
撮影会を終えた自分は今、ミリアさんと一緒にいます。
一緒にいるのですが――
「あの……なんで自分はメイド服のままミリアさんの膝の上に乗せられて、抱きかかえられながら頭を撫でられているのでしょうか?」
「…………」
答えてください……ミリアさん!
「以前から気になっていたのですが、皆さんは自分のことを女性と間違えすぎです。そして可愛がり過ぎです」
「それは……仕方ない面もあるんじゃないかしら? アンタって昔っからそういう容姿だし。魔法使いだった時も、ウィッチハットとローブの姿はどう見ても女の子にしか見えなかったわよ? しかも可愛いし」
そこまで自分って女の子っぽいのですか……。
最近は武闘家に転向して筋肉もついてきたのですが、どうも自分はムキムキにはならない体質のようです。
服を着ているとパッと見では体格の変化が分かりません。
「うぅ……。"魔法使い・ラルフル"とはお別れできたのに、この女性っぽい容姿からは決別できませんか……」
「……ねえ、ラルフル。本当に魔法使いだった過去とは決別できたの?」
ミリアさんがどこか寂しそうに問いかけてきます。
ミリアさんとは幼い頃から一緒に魔法の特訓をした間柄。
その特訓の成果が自分の元に戻ってこなくなったのは悲しいです。
――でも、決別はできました。
「大丈夫です、ミリアさん。今の自分は"武闘家・ラルフル"です。自分の魔力もお姉ちゃんに移りましたし、もう悔いはありません」
「それなら良かったわ。確かにアンタは武闘家としても確実に強くなってるしね。どこまで強くなれるのかしら?」
『どこまで強くなれる』――ですか。
日々のトレーニングを続けてはいますが、まだまだ強くなれる可能性を自分自身で感じています。
どこまで強くなれるのかは分かりません。
――ですが、目標はあります。
「自分は……ゼロラさんと同じぐらい――いえ、ゼロラさんよりも強くなってみたいです」
「『ゼロラさんよりも強く』、かー……。途方もないほど遠い目標ね」
ミリアさんが言う通り、ゼロラさんの実力に追いつくのはまだまだ遠いです。
ですが一度武闘家として強くなると決めた以上、いつかはその領域にたどり着いてみたいです。
――ラルフルという男が、【零の修羅】と呼ばれるゼロラさんにどこまで近づけるのか。
それをいつの日かハッキリと試してみたいのです。
これまでもゼロラさんとは戦う機会はありましたが、全て手加減されてきました。
手加減なしで、自分の実力をハッキリと――
「いつになるかは分からない。だけど……アンタならいつかゼロラさんにだって追いついて、追い越すことだってできるとアタシは信じてる」
ミリアさんは笑顔で自分の気持ちに答えてくれました。
ミリアさんやお姉ちゃん。自分の周りにいるたくさんの大切な人達。
そんな人達を守るためにも、自分はもっと強くなりたいです。
「でも……そういう決意は今の格好ですることじゃないわよね?」
「……あ」
ミリアさんに言われて気が付きましたが、今の自分の姿ってメイド服でしたね。
しかもミリアさんの膝の上で抱きかかえられていますし……。
「け、決意は本物ですからね!」
「分かってるわよ……」
自分のちょっとしたお礼の気持ちのはずがリョウ大神官にメイド服を着せられて、ずっと"撮影会"というものをやらされ続けました。
メイド服のまま色々なポーズを"カメラ"という記録装置によって、その姿を写されました。
『これでオカズに困らないよ』とリョウ大神官は言ってましたが、何のことかはよく分かりません。
……よく分からないままにしておきたいです。
「そう……。大変だったわね、ラルフル」
撮影会を終えた自分は今、ミリアさんと一緒にいます。
一緒にいるのですが――
「あの……なんで自分はメイド服のままミリアさんの膝の上に乗せられて、抱きかかえられながら頭を撫でられているのでしょうか?」
「…………」
答えてください……ミリアさん!
「以前から気になっていたのですが、皆さんは自分のことを女性と間違えすぎです。そして可愛がり過ぎです」
「それは……仕方ない面もあるんじゃないかしら? アンタって昔っからそういう容姿だし。魔法使いだった時も、ウィッチハットとローブの姿はどう見ても女の子にしか見えなかったわよ? しかも可愛いし」
そこまで自分って女の子っぽいのですか……。
最近は武闘家に転向して筋肉もついてきたのですが、どうも自分はムキムキにはならない体質のようです。
服を着ているとパッと見では体格の変化が分かりません。
「うぅ……。"魔法使い・ラルフル"とはお別れできたのに、この女性っぽい容姿からは決別できませんか……」
「……ねえ、ラルフル。本当に魔法使いだった過去とは決別できたの?」
ミリアさんがどこか寂しそうに問いかけてきます。
ミリアさんとは幼い頃から一緒に魔法の特訓をした間柄。
その特訓の成果が自分の元に戻ってこなくなったのは悲しいです。
――でも、決別はできました。
「大丈夫です、ミリアさん。今の自分は"武闘家・ラルフル"です。自分の魔力もお姉ちゃんに移りましたし、もう悔いはありません」
「それなら良かったわ。確かにアンタは武闘家としても確実に強くなってるしね。どこまで強くなれるのかしら?」
『どこまで強くなれる』――ですか。
日々のトレーニングを続けてはいますが、まだまだ強くなれる可能性を自分自身で感じています。
どこまで強くなれるのかは分かりません。
――ですが、目標はあります。
「自分は……ゼロラさんと同じぐらい――いえ、ゼロラさんよりも強くなってみたいです」
「『ゼロラさんよりも強く』、かー……。途方もないほど遠い目標ね」
ミリアさんが言う通り、ゼロラさんの実力に追いつくのはまだまだ遠いです。
ですが一度武闘家として強くなると決めた以上、いつかはその領域にたどり着いてみたいです。
――ラルフルという男が、【零の修羅】と呼ばれるゼロラさんにどこまで近づけるのか。
それをいつの日かハッキリと試してみたいのです。
これまでもゼロラさんとは戦う機会はありましたが、全て手加減されてきました。
手加減なしで、自分の実力をハッキリと――
「いつになるかは分からない。だけど……アンタならいつかゼロラさんにだって追いついて、追い越すことだってできるとアタシは信じてる」
ミリアさんは笑顔で自分の気持ちに答えてくれました。
ミリアさんやお姉ちゃん。自分の周りにいるたくさんの大切な人達。
そんな人達を守るためにも、自分はもっと強くなりたいです。
「でも……そういう決意は今の格好ですることじゃないわよね?」
「……あ」
ミリアさんに言われて気が付きましたが、今の自分の姿ってメイド服でしたね。
しかもミリアさんの膝の上で抱きかかえられていますし……。
「け、決意は本物ですからね!」
「分かってるわよ……」
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