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第17章 追憶の番人『公』

第237話 対決・ルクガイア貴族公爵兼ギャングレオ盗賊団元締め①

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「くたばれぇええ!! ゼロラァアアア!!!」

 バクトは右手に持った刀を肩に背負いながら、勢いよく振り下ろしてきた。

「むっ!? 思ったより力はあるみたいだな――」

 バクトが持っている刀はその動きからかなりの重量感があるように見える。それをバクトは片手で簡単に振り回している。
 だが技術面は全くないようだ。剣術は身に着けていないようなのでこれなら――

「やれぇえ!」
「「はっ!」」

 ――だが次の瞬間、バクトの合図により護衛二人が俺目がけて銃を放つ!

「くそ! 三人がかりは面倒だ――」

 なんとか体を逸らして銃撃を躱すことはできた。
 だが俺が考えている間もなく、バクトは振り下ろしていた刀を今度は振り上げて俺の喉元を狙う!

 俺は何とかその刀を後ろに下がって躱すが――

「死に晒せぇええ!!」

 ――今度はバクトが左手に持っている銃で俺を狙う!

 バァアン! ――キンッ!

「うぐぅ!? 刀と銃の二刀流か……!」

 なんとか<鉄の防御>を腕にかけて銃弾を捌くが、想像以上にバクトは厄介な相手だ。

「ゼロラァア! 貴様がミリアから信頼されていようが! この俺の秘密を暴こうとする以上! 貴様のその口を縫い合わせて、喋れないようにしてくれるわぁあ!!」

 バクトはこれでもかと激高しながら俺に宣言する。
 『口を縫い合わせる』なんて医者でもあるバクトに言われると、冗談に聞こえない。

「まったく……。普段もキレてる人間だったが、あれでも大人しい方だったんだな……」

 バクト自身に戦うための術の類はない。
 だが、ギャングレオ盗賊団元締めとして手に入れたものか、戦況を見る目は備わっているようだ。

 今のバクトに命を救う医師としての信念はない。
 あくまで自らの秘密に触れてきたこの俺を倒すことを目的とした怒りに燃える、ギャングレオ盗賊団の本当のトップとしての姿が今のバクトだ。

「この俺を本気で怒らせたことを後悔させてくれる――始末しろぉお!!」

 バクトの号令で今度は護衛二人が接近戦を仕掛けてきた!
 二人掛かりでの蹴りを主体にした格闘戦! さらに隙あらば持っている銃で俺を撃ち抜こうと狙ってくる!

「グラァアア!!」

 そして俺が護衛二人から離れた隙を狙って襲い掛かるバクトの荒々しい太刀!
 躱したりガードしたりしても、バクトは左手の銃で俺を執拗に狙ってくる!

「ハァ、ハァ……! "三公爵"なんて呼ばれてふんぞり返っているだけの人間じゃなかったんだな……!」
「俺はギャングレオ盗賊団の元締めだぞ? 狸ジジイや狐ババアのような、他の"三公爵"と一緒にするな」

 少し間が空き、お互いに態勢を整えるが、バクトはなおも俺を睨みながら攻撃の機会を伺っている。
 護衛も同じように銃を構えてバクトの合図を待っている。
 この二人の実力もシシバが言っていた通り、ギャングレオ盗賊団の幹部クラスだ。

 バクトと護衛二人による三人掛かりの連携をどうにかしないことには俺一人で太刀打ちできそうにない。

 とにかくまずやるべきことは――

「掛かれぇえ!」

 バクトの号令で護衛二人が再び俺に襲い掛かってくる!
 とにかく先に倒すべきはこの二人だ! バクト一人になってしまえば、後は問題ない!

「挟撃」
「了解」

 護衛二人はお互いに合図を出し、一人がこちらに向かってくる! もう一人は銃でこちらを狙っている!

「フゥウン!」

 ガシィ!

 俺は向かってきた一人に組みかかり、向きを変える!

「何をしてる!? 早く撃てぇえ!!」
「ダ、ダメです! もう一人が射線上に――」

 俺が向きを変えた方角にいるのはもう一人の護衛。
 バクトもその後ろにいるため、どちらも銃を撃つことはできない!

「オオオオォ――ラァア!!」

 俺は掴んだ護衛を持ち上げ、そのまま向きを変えずにもう一人の護衛に突進する!

「くそ! ならば――」

 突っ込んできた俺を見たもう一人の護衛は、銃を構えるのをやめて格闘戦を挑もうと俺へ向かってくる!



 ――今だ!

「ラァアア!!」
「「なにっ!?」」

 俺はそれぞれの手で護衛の胸倉を一人ずつ掴み、それぞれの額を――

 ゴチィイイン!!

 ――激しく衝突させる!

「うがぅ……!?」
「ぎぃ……!?」

 護衛二人はその衝撃にたまらず怯む!

「き、貴様ぁああ!!」

 俺が護衛二人を掴んだままのところに、激昂したバクトが右手に持った刀で斬りかかる!

 ドゴォムゥ!!

「なっ!? ――ガァ!?」

 だが俺は前蹴りでバクトを迎え撃ち、後逸させる!
 そして――

「ヌゥウン!!」

 ブゥウン――! ドガンッ!!

「ぐぬぅ!? お、おのれぇええ……!! ゲホッ!!」

 ――掴んでいた護衛二人をバクトに投げつける!
 護衛二人は倒れこんでしまったが、バクトは刀で体を支えながらなんとか持ちこたえている。
 頭を衝突させたダメージが大きのか、護衛は中々起き上がれずにいる。

 これでバクト一人だ。

「終わらせるぞ、バクト。護衛が倒れた今、お前一人で俺は倒せない」
「倒せない? 俺一人? フン! 何を馬鹿なことを言ってるのだ、貴様はぁああ!!」

 そう言うとバクトは持っていた刀を地面に突き刺して、右手を空ける。



 ――そしてその空いた右手で魔法を唱え始めた。

「いつまで寝てるんだ、貴様らぁあ!! さっさと起きろぉお!!」
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