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第17章 追憶の番人『公』

第229話 カッコイイものはカッコイイ

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 自分とミリアさんはお姉ちゃんやリョウ大神官と別れた後、二人でのんびり野原をお散歩していました。

「お姉ちゃんとリョウ大神官はどこへ行ったのでしょうか? 帰って来てるはずのゼロラさんの姿も見当たりませんし」
「二人してゼロラさんを振り回してるんじゃないかしら? 悪いようにはならないでしょう」

 ミリアさんの言う通り、悪いことは起こらないでしょうね。
 お姉ちゃんとリョウ大神官は今は仲良しです。二人でゼロラさんを取り合って揉めるようなことはないでしょう。

「……ん? あそこにいる人は誰かしら?」
「本当ですね? すごく大きい人ですね」

 ミリアさんと二人で散歩をしていると、全身に鎧のようなものを身に着けたすごく大きな人に出会いました。

「フオ~~~」

 その人は大きな岩に腰掛けながら、野原を飛んでいる蝶々を眺めています。

「もしかして……あの人が話に聞いてた【王国最強】って人?」
「あっ! 多分そうですね! あの時は遠くてよく分かりませんでしたが、王宮から脱出する時に自分達を助けてくれた人だと思います!」

 これはお礼を言う必要がありますね。早速近くに言って話しかけてみましょう。

「こんにちは! あなたが【王国最強】さんですか?」
「フオ~? フ、オーオー。フオオオー」
「いや……何を言ってるか分からないんだけど……」

 【王国最強】さんは蒸気音のような声しか出せないようです。ミリアさんも困惑してます。



 ――でも、自分はなんとなく分かります。

「この人は『おや、カップルかな? ぼくの名前はフレイム。恥ずかしいけど【王国最強】なんて呼ばれてるよ』と、言ってます」
「フオオォオ!?」
「なんで分かるのよ!?」

 なんでと言われましても……なんとなくです。

「フオ~……。フオオ、オオ~……」
「……今度は何て言ってるのよ?」
「『まさか兄ちゃん以外にもぼくの言葉が分かる人がいたなんて……』、ですね」

 ミリアさんはこのフレイムさんという人の通訳を自分にお願いしてきたので、訳します。
 不思議ですね……。自分には自然とこの人の言葉が分かります。

 それにしてもこの人のお兄さんですか。
 それって確か元王国騎士団の二番隊隊長で、ゼロラさんが協力を要請しに行ったという――



「なーんで、お前は人が作ってやった物にケチばっかりつけるのかな~? このアホ公爵!」
「貴様が作った"心電数値"とやらは分かりづらい。患者の心肺状況を数値ではなく、もっと一目で分かるように表記しろ。このバカ学者」
「注文の多いお医者様だね~、まったく! だったらグラフにでも表せばいいのか~? そうなると"心電図"とでも呼んだ方がいいもんかね~」
「それでいい。とにかく俺の注文通りに作れ。クレームは後でまたつける」

 ――ドクター・フロストさん。
 そのご本人がバクトさんと一緒に文句を言い合いながらやってきました。

「ん? フレイム、こんなところで何をして―― ウゲェエ!? なんでラルフルまでいるんだよ!?」
「チィ! スタアラの小娘まで一緒か!? 面倒な連中に出くわしたものだ……!」

 フロストさんとバクトさんは自分達を見てどこか驚いています。
 何か自分達におかしなところでもあるのでしょうか?

「おい! フレイム! さっさとズラかるぞ! こいつらと一緒に居続けるのは御免だぜ~……」
「フオ! フーオオオー、オー!」
「は~!? ラルフルがお前の言葉を理解しただって~!? そ、それはありえるかもな~……。マカロンは理解できなかったっぽいのによ~……」

 フロストさんもフレイムさんの言葉が分かるようです。やっぱり兄弟だからでしょう。
 ――それにしても妙なことを言ってるような気が……。

「……仕方ない。俺も引き上げる。ケツの青いスタアラの小娘とこんなところで一緒になど居られるものか」
「なっ!? 誰のケツが青いって――!?」

 バクトさんもミリアさんとは一緒にいたくないようで、悪態をつきながら反対の方向を向きました。
 後、ミリアさん。女性が『ケツ』とか口にするのは下品です。

「フレイム! 余計なことを喋ってねーだろーな~?」
「フオオ、フオ、フオオオ」
「なに~? 『そもそもあの二人がラルフルとミリアちゃんだって気付かなかった』だと~? バカか~!? ラルフルは王宮脱出の時に見てるだろーが!」
「どうせ上空からじゃ、遠くてよく確認できなかったんだろ。貴様はフレイムの目を通して映像を拡大することで確認できたんだろうがな」

 フロストさんもフレイムさんもバクトさんも、それぞれ何かを言い合いながらこの場を去っていきました。

「何だったのかしら……あの三人は……?」
「何だったのでしょう……?」

 ミリアさんも自分も呆気に取られてただ眺めているだけになってました。
 お姉ちゃんや自分を助けてもらったことなど、もう少し話を聞きたかったのですが……。





「それにしても……カッコよかったと思いませんか?」
「カッコイイ? 何がよ?」

 そんなの決まってるじゃないですか!

「フレイムさんですよ! あのゴツゴツした装備と大きな体格! 凄くカッコイイです!」
「……アンタの趣向がなんとなく分かってきたわね」
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