223 / 476
第16章 自分はあの日から変わりました
第223話 ボク、そんなこと言ってないよね?
しおりを挟む
ラルフル君の魔力はマカロンの身へと還っていった。
ラルフル君に戻せない以上、姉であるマカロンの身に宿るのは断然妥当だね。
あの後バルカウスは、「今一度、剣のみの道を歩み直す」と言ってボク達の元を去っていった。
彼も思えば哀れな男だ。逆らえないままラルフル君の魔力を奪ったのだから。
でも、これでバルカウスも過去のしがらみから抜けられただろう。
ラルフル君の魔力も還るべき場所に還ったし、一件落着だね。
そうしてボク達四人は帰りの馬車の中にいる。
「それにしても、お姉ちゃんに宿った魔力がゼロラさんから貰ったブローチにも宿るなんて……。感動的ですね」
ラルフル君はマカロンのブローチを見ながらご満悦だ。
想い人から贈られた宝物に、新しい力が宿る。
ありふれた話かもしれないけど、実にロマンチックだ。ボクはこういうロマンスが大好きなんだ。
――その相手が、"ボクではなかった"ことには正直嫉妬しちゃうけど……。
そんなことをボクは自らのブローチを手に取りながら考えていた。
「リョウ大神官。もしかして、マカロンさんに嫉妬してる? 同じようにゼロラさんから貰ったブローチに魔力が宿っていないから」
ミリア様は鋭いね。彼女には人の心を包み込む能力があるようだ。
流石は聖女。
「嫉妬心はあるね。でもボクに気を遣う必要はないよ。帰ったらマカロンに魔法の使い方をボクがレクチャーするよ。ボクに残されている時間は分からないけど、今はボクの意志として、マカロンが引き継いだ魔力を最大限に活かせるように努めたいんだ」
「あ、ありがとうございます! お願いしますね、リョウ先生!」
「先生呼びはやめてほしいかな?」
とりあえずマカロンも前向きなようで良かった。
いつボクが魔幻塔に戻らないといけないかは分からないけど、それまでの時間、ボクはボクにできることをしよう。
「リョウ大神官のブローチにもきっといつか同じようなことが起こる日が来ますよ! お姉ちゃんと一緒のお店でゼロラさんに買ってもらったんですし!」
「そうよ! マカロンさんと同じ日にゼロラさんに買ってもらったブローチなんでしょ! リョウ大神官のブローチにも同じことがきっと起こるわよ!」
ちょっと落ち込み気味のボクをラルフル君とミリア様は気遣ってくれている。
仲良しカップルで他者への気遣いもできるなんて最高じゃないか。
これは妄想が捗――いや、今は自重しておこう。
――それにしても、二人揃って"ポンコツ"だよね。
「ねえ~、ラルフル~? ミリアちゃ~ん? ちょ~っと二人に聞きたいことがあるんだけど~?」
マカロンも気付いたようだ。笑顔で二人に質問している。
それはもう怖いぐらいの笑顔で。
これはボクもかつて見たことがあるものだね。しかもその時は向けられた側で。
ここはボクも便乗しようか。
「クフフフフ~。マカロンと同じく、ボクも二人に聞きたいことがあるな~」
「あら~? リョウさんも気になってたんですね~」
ボクもマカロンと同じように怖い企みの微笑みを浮かべてみる。
マカロンもボクの考えを読み取ったようだ。
「な、なんでしょう……?」
「マカロンさん? リョウ大神官? 顔は笑ってるけど、怒ってますよね?」
うん。ちょっと怒ってる。
ボクとマカロンに見つめられて、ラルフル君もミリア様もタジタジだ。
「じゃあ、リョウさん。どうぞこの二人に質問をお願いしま~す」
マカロンがボクに発言権を譲ってくれた。とびっきり怖いぐらいの笑顔のままで。
それではお言葉に甘えるとしよう――
「ラルフル君にミリア様。ボクが持っているこのブローチは確かにマカロンのものと同じだけど……『マカロンと同じくゼロラ殿に買ってもらった』なんて、一言も言ってないよ? それなのにどうして二人ともそのことを知っているのかな?」
「あっ!?」
「うぅ……!?」
二人ともハトが豆鉄砲を食らったような顔をしてるね。
ちょっと怒ってるボクだけど、結構楽しい。
「まるであたかも"ラルフルもミリアちゃんもその現場を見ていた"ような言い草よね~? ……見てたのね?」
マカロンの表情が笑顔から真顔に戻る。すごく怖い。
ボクに向けられなくてよかったよ。
「ち、違うんです! 自分達が見ていたのはゼロラさん達三人がお店の前で話をしていたところまでなんです!」
「そ、そうよ! ブローチを買ったところまでは見てないわよ!」
ラルフル君とミリア様の必死の弁解。それは墓穴を掘るというものだよ。
この二人、本当にボロがボロンボロン出てくるね。
二人揃って"あの現場を隠れて見てました"って言ってるようなものじゃないか。
実にポンコツなカップルだ。"ポンコップル"とでも名付けようかな?
「『お前が言うな』って言われそうなのを覚悟で言うけど、デバガメはよくないんじゃないかな~? クフフフフ~?」
「そうですね~。それとこれとは話が別、ってことで~? ね~?」
ボクとマカロンの怖~い笑顔がラルフル君とミリア様に近づいていく。
普段と立場が逆だけど、ちょ~っとお仕置きしたい気分かな?
「す、すみませ~~ん! 覗いてました~!!」
「ごめんなさ~~い! 見てました~!!」
半泣きで謝罪するラルフル君とミリア様。ちょっとかわいい。
でも、コソコソするのはいただけないね。
どうせやるならボクのようにオープンでやらなきゃ。
ラルフル君に戻せない以上、姉であるマカロンの身に宿るのは断然妥当だね。
あの後バルカウスは、「今一度、剣のみの道を歩み直す」と言ってボク達の元を去っていった。
彼も思えば哀れな男だ。逆らえないままラルフル君の魔力を奪ったのだから。
でも、これでバルカウスも過去のしがらみから抜けられただろう。
ラルフル君の魔力も還るべき場所に還ったし、一件落着だね。
そうしてボク達四人は帰りの馬車の中にいる。
「それにしても、お姉ちゃんに宿った魔力がゼロラさんから貰ったブローチにも宿るなんて……。感動的ですね」
ラルフル君はマカロンのブローチを見ながらご満悦だ。
想い人から贈られた宝物に、新しい力が宿る。
ありふれた話かもしれないけど、実にロマンチックだ。ボクはこういうロマンスが大好きなんだ。
――その相手が、"ボクではなかった"ことには正直嫉妬しちゃうけど……。
そんなことをボクは自らのブローチを手に取りながら考えていた。
「リョウ大神官。もしかして、マカロンさんに嫉妬してる? 同じようにゼロラさんから貰ったブローチに魔力が宿っていないから」
ミリア様は鋭いね。彼女には人の心を包み込む能力があるようだ。
流石は聖女。
「嫉妬心はあるね。でもボクに気を遣う必要はないよ。帰ったらマカロンに魔法の使い方をボクがレクチャーするよ。ボクに残されている時間は分からないけど、今はボクの意志として、マカロンが引き継いだ魔力を最大限に活かせるように努めたいんだ」
「あ、ありがとうございます! お願いしますね、リョウ先生!」
「先生呼びはやめてほしいかな?」
とりあえずマカロンも前向きなようで良かった。
いつボクが魔幻塔に戻らないといけないかは分からないけど、それまでの時間、ボクはボクにできることをしよう。
「リョウ大神官のブローチにもきっといつか同じようなことが起こる日が来ますよ! お姉ちゃんと一緒のお店でゼロラさんに買ってもらったんですし!」
「そうよ! マカロンさんと同じ日にゼロラさんに買ってもらったブローチなんでしょ! リョウ大神官のブローチにも同じことがきっと起こるわよ!」
ちょっと落ち込み気味のボクをラルフル君とミリア様は気遣ってくれている。
仲良しカップルで他者への気遣いもできるなんて最高じゃないか。
これは妄想が捗――いや、今は自重しておこう。
――それにしても、二人揃って"ポンコツ"だよね。
「ねえ~、ラルフル~? ミリアちゃ~ん? ちょ~っと二人に聞きたいことがあるんだけど~?」
マカロンも気付いたようだ。笑顔で二人に質問している。
それはもう怖いぐらいの笑顔で。
これはボクもかつて見たことがあるものだね。しかもその時は向けられた側で。
ここはボクも便乗しようか。
「クフフフフ~。マカロンと同じく、ボクも二人に聞きたいことがあるな~」
「あら~? リョウさんも気になってたんですね~」
ボクもマカロンと同じように怖い企みの微笑みを浮かべてみる。
マカロンもボクの考えを読み取ったようだ。
「な、なんでしょう……?」
「マカロンさん? リョウ大神官? 顔は笑ってるけど、怒ってますよね?」
うん。ちょっと怒ってる。
ボクとマカロンに見つめられて、ラルフル君もミリア様もタジタジだ。
「じゃあ、リョウさん。どうぞこの二人に質問をお願いしま~す」
マカロンがボクに発言権を譲ってくれた。とびっきり怖いぐらいの笑顔のままで。
それではお言葉に甘えるとしよう――
「ラルフル君にミリア様。ボクが持っているこのブローチは確かにマカロンのものと同じだけど……『マカロンと同じくゼロラ殿に買ってもらった』なんて、一言も言ってないよ? それなのにどうして二人ともそのことを知っているのかな?」
「あっ!?」
「うぅ……!?」
二人ともハトが豆鉄砲を食らったような顔をしてるね。
ちょっと怒ってるボクだけど、結構楽しい。
「まるであたかも"ラルフルもミリアちゃんもその現場を見ていた"ような言い草よね~? ……見てたのね?」
マカロンの表情が笑顔から真顔に戻る。すごく怖い。
ボクに向けられなくてよかったよ。
「ち、違うんです! 自分達が見ていたのはゼロラさん達三人がお店の前で話をしていたところまでなんです!」
「そ、そうよ! ブローチを買ったところまでは見てないわよ!」
ラルフル君とミリア様の必死の弁解。それは墓穴を掘るというものだよ。
この二人、本当にボロがボロンボロン出てくるね。
二人揃って"あの現場を隠れて見てました"って言ってるようなものじゃないか。
実にポンコツなカップルだ。"ポンコップル"とでも名付けようかな?
「『お前が言うな』って言われそうなのを覚悟で言うけど、デバガメはよくないんじゃないかな~? クフフフフ~?」
「そうですね~。それとこれとは話が別、ってことで~? ね~?」
ボクとマカロンの怖~い笑顔がラルフル君とミリア様に近づいていく。
普段と立場が逆だけど、ちょ~っとお仕置きしたい気分かな?
「す、すみませ~~ん! 覗いてました~!!」
「ごめんなさ~~い! 見てました~!!」
半泣きで謝罪するラルフル君とミリア様。ちょっとかわいい。
でも、コソコソするのはいただけないね。
どうせやるならボクのようにオープンでやらなきゃ。
0
お気に入りに追加
134
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる