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第16章 自分はあの日から変わりました

第214話 いざ、過去との対峙へ

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 ゼロラさんと別れた後、自分ラルフルはマカロンお姉ちゃん、ミリアさん、そしてリョウ大神官と一緒にかつて自分が魔力を失った洞窟へと向かいました。
 以前は魔物が蔓延る危険な道中でしたが、【伝説の魔王】がいなくなった今は平穏なものです。
 ガタゴトと馬車に揺らされながら、自分達は目的の洞窟に向かっているのですが――

「あ~! マカロンもミリア様も本当にかわいいな~! 魔幻塔は退屈だったし、抜け出すのも面倒だったから、久しぶりに満足いくまでこうやってかわいい子を愛でられて、ボク幸せ~!」
「リョウさん……頭撫ですぎです……」
「元気になったらなったで、また元通りなのね……」

 ――リョウ大神官はお姉ちゃんとミリアさんを両手に抱えて、頭をナデナデしています。
 出発前に言ってた、『今回は大真面目』発言はどこへ行ったのでしょうか?

「う~ん。ボク、ホントに幸せ~。ゼロラ殿にも会いたかったけど、やっぱり皆にも会いたかったからね。これでも寂しかったんだよ?」

 でも不思議といつものような嫌な予感はしません。
 多分この人は本当に、自分達に会えたことが嬉しくて仕方ないのだと思います。
 お姉ちゃんもミリアさんもそれが分かっているから、大人しくナデナデされているのでしょう。
 リョウ大神官は物凄く変人でとてつもなく変態ですが、行動で嘘をつくことができない人なのはなんとなく分かってきました。
 結局のところ、この人は凄くいい人なんだと思います。
 恋敵であるお姉ちゃんを目の敵にするどころか、仲良くなってしまっていますし。

 ……でも、ゼロラさんはお姉ちゃんのものですからね?

「ところでラルフル君。君自身は大丈夫なのかな?」
「え? 大丈夫とは……?」

 お姉ちゃんとミリアさんを愛でていたリョウ大神官は、突然表情を切り替えて自分に質問を投げかけてきました。

「これから君が直面するのは、君自身の忌まわしき"過去との対峙"だ。"かつての仲間に裏切られた"という可能性……。その結末はラルフル君にとって、とても心苦しいものになるかもしれない」

 ――リョウ大神官の言いたいことは分かります。

 ロギウス殿下が立てた仮説。『自分の魔力はリフィー様によって奪われ、バルカウス様へと移された』。
 それが確かだという物的証拠はありません。
 ですが、"自分が魔力を失った時"と"バルカウス様が魔法を使えるようになった時"が重なっているという状況証拠はあります。
 今の状況で、"全て無関係だった"なんて結末は考えにくいです。

 ――もしかしたら、バルカウス様やリフィー様だけでなく、勇者レイキース様にも裏切られているのかもしれません。
 それでも――

「全て覚悟の上です。自分は――今の自分ならば、あの時の出来事とも向き合える気がします」

 自分は魔力を失った日から、虐げられる日々を送っていました。
 魔力を失ったことで、自信さえも失ってしまいました。

 それでも、ゼロラさんと出会った日から変わりました。
 自分と同じように魔力がないのに、それどころか記憶さえないのに、とっても強くて頼れる人です。
 自分はそんなゼロラさんに憧れて、同じく武闘家の道を進みました。
 魔法使いではなくなり、まだまだゼロラさんには遠く及びませんが、確実に強くなってきている実感があります。
 それは身体的な強さだけでなく――精神的な強さも含めてです。

 ここから先、どのような結末が訪れようと、今の自分になら受け止めることができます。

 それに、今の自分は一人ではありません――

「ラルフル、心配しないで。アタシもついていてあげるから」

 自分の恋人、ミリアさん――

「何があっても、お姉ちゃん達が支えてあげるから」

 自分の唯一の肉親、マカロンお姉ちゃん――

 ゼロラさんについてきた自分の周りには、いつの間にかたくさんの仲間がいました。
 自分のことを心から心配し、自分が心から信頼できる人達……。
 自分は今――勇者パーティーにいたころよりも恵まれています。

「リョウ大神官。どうか自分に協力して、自分が失った魔力の真相を究明してください」
「……決意は固いんだね。いい目をしてるよ。流石はマカロンの弟だ」

 リョウ大神官は自分の目をじっと見つめて、この決意を受け取ってくれました。
 この人も自らが大変な立場でありながら、こうして自分に協力してくれています。

 どうしようもなく変態な人ですが、今は自分にとっても大切な仲間――

「じゃあ、ラルフル君。次は君を撫でまわしてもいいかな?」

 ――だと思います。多分。
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