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第15章 メカトロニクス・ファイト

第201話 テコロン要塞機動戦②

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「侵入者を再度捕捉しました。これより、ニナーナ指揮の元、最終防衛ラインの稼働準備を行います」

 洞窟の奥へと進んだ俺達を待っていたのは、相変わらず炎を噴出させて宙に浮かぶニナーナだった。
 ……あれって、どうやって浮いてるんだ?

 ガシャン! ガシャン! ガシャン!

 そんな俺の疑問を他所に、これまで以上の数のロボットが俺達を囲う。
 これまでとタイプの違う銃を装備し、フォルムにも違いがある。

「マスターからの全ての承認が終わりました。攻撃を開始します」

 ドガガガッ! ボォオオオ! ビィイイイ!

「うおぉお!? な、なんだこれは!? 銃弾どころか、火炎放射に光線だと!?」
「フロスト元隊長!? いくらなんでもやりすぎじゃないか!?」

 一斉にロボットから放たれる攻撃の数々。
 火炎放射に光線まで放ってきて、とてもじゃないが防御だけではやり過ごせない!
 俺もロギウスも必死に躱しながら様子を伺う。

「くそ! これじゃ手出しができない!」
「まったくだ! そもそもこんなの人間に向けるレベルじゃないよ!」

 なんとかまともに食らわないように避け続けるが、埒が明かない!

「標的の包囲を継続。そのまま接近をお願いします」

 ニナーナがロボット達に指示すると、どんどん俺達への包囲が狭まってきた。

「チィ! 一度抜けるぞ! ロギウス!」
「分かった!」

 俺はロギウスと共に、ロボットの間を潜り抜けて包囲の外に出た。

「――標的が包囲の外に出たのを確認しました。再度包囲を行います」

 俺達が包囲を抜け出したのを確認したニナーナは、再度包囲する命令をロボット達に出した。
 だが妙だ――

「さっきからこのロボット達はニナーナの命令でしか動かないのか?」
「ロボットに自我はない。あくまでただの機械人形だ。ニナーナも同じく自我は持たないが、状況判断と指揮能力は備わっているらしい。ロボット達はニナーナの指示でしか動かない。――そうだ!」

 ロギウスが何かを思いついて俺に提言してきた。

「ニナーナだ! 指示を出すニナーナを止めてしまえば、他のロボット達も止められる!」
「ニナーナを止める? 人間ではないとはいえ、人間の女の姿をした相手を殴るのは気が引けるが……」
「いや、殴る必要はない! えーっと、確か前にフロスト元隊長が言ってたんだが……『ニナーナが暴走したら背中を叩けば止まる』とかなんとか……」

 なんだその止め方? よく分からないが、やるだけやってみるか。

「ゼロラ殿。僕はニナーナに正面から攻撃を仕掛ける。その隙に背後に回って、背中を叩いてくれ!」
「分かった。ニナーナ自身も手強そうだから気を付けてくれ」

 俺とロギウスは二手に分かれてニナーナへと向かって行った。
 ロギウスは正面からニナーナへと攻撃を仕掛けた。

「正面からの敵の接近を確認。正面への<バリアフィールド>を展開します」

 バチィイン!

「くっ!? やはり簡単には行かせてくれないか!」

 ロギウスの攻撃はニナーナが発する膜のようなもので防がれてしまった。
 だがそれでいい! 俺が背後に回れるだけの時間はある!

「標的の内、一名を見失いました。前方の標的への対処のため、再度の捕捉に時間を要します」

 律儀に自らの状況を話してくれるニナーナだが、これで俺を見失っていることは分かった!
 後は背中を叩けばいいだけだが、そんなことで本当に止まるのか?



 ――だが、俺の疑問はニナーナの背中に回り込んで"そこに書かれているもの"を確認したことで、一気に払しょくされた。





『緊急停止ボタン』



「分かりやす過ぎるわぁああ!!」

 "背中を叩けば止まる"――その意味を瞬時に理解した俺は、すぐにそのボタンを押した。

「もう一名の標的をほ―――」

 俺がスイッチを押したのと同時にニナーナはセリフの途中にもかかわらず、そのまま時が止まったように会話も動きも止まってしまった。
 それに呼応して他のロボット達の動きも一斉に止まった。

「なんで緊急停止ボタンなんて付けたんだよ……」
「フロスト元隊長も、ニナーナのような美人タイプのヒューマノイドに逆らわれるのが嫌だったんじゃないかな……」

 なんだか分かるような分からないような理由だな……。
 だがこれで障害はなくなった。後はお目当てのドクター・フロストに会いに行くとするか。
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