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第14章 まどろむ世界のその先へ

第192話 それぞれの役割

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「うぁあああ! ゼロラ殿ぉおお! 会いたかったよぉおお! うわぁあああ!!」

 俺に会うなり、リョウは大泣きしながら抱き着いてきた。
 俺が目覚めた時のマカロンと同様、かなりやつれて髪もボサボサだ。相当俺のことを心配してくれていたことがよく分かる。
 俺と一緒に来てくれたマカロン、ラルフル、ミリアも余計な茶々は入れずに、俺とリョウの様子を見守ってくれている。

「フッ。お前がこんな風に泣くとは思わなかったぜ?」
「グスッ……。ボクだって、思わなかったさ……。でも……ゼロラ殿が生きていたのが、嬉しくて……嬉しくて……! うわぁあああん!!」

 こんなリョウの姿は今まで見たことがない。こいつが俺にここまで感情を露にしてくれるのは、なんだか嬉しい気がする。
 心配かけてすまなかったな……リョウ。

「ゼロラはん。とりあえずリョウは数日間は外に出られる。せやけど、いつまでおれるかは分からへん。リョウに頼みたいことがあるんやろ? 一応急いだほうがええと思うで」
「ゼロラ殿が……ボクに頼みたいこと……?」

 シシバが俺にしてきた提言に、リョウも反応する。

「リョウ。出てきてそうそうすまないが、お前に頼みたいことがある。ラルフルと一緒に行ってほしい場所があるんだ」
「ラルフル君と? どういうことかな?」

 俺はリョウに事情を説明した。

 ラルフルの魔力は勇者パーティー戦士のバルカウスに奪われた可能性がある。
 その魔力を取り戻すために、魔法の知識に長けているリョウが必要であること。
 そのためにバルカウスをラルフルが魔力を失った洞窟に誘い出すこと
 俺はこれからロギウスと共にドクター・フロストの元に向かう必要があるので一緒に行けないが、代わりにマカロンとミリアがラルフルとリョウに同行してくれることになった。

 今の俺達には、リョウの力が必要だ。

「クフフフ……。久しぶりの再会だっていうのに、ゼロラ殿と共に過ごす時間はお預けか」
「すまない……。お互いの役目が終わったら、また一緒に馬鹿話をさせてくれ」
「クッフフフフ! 一緒に馬鹿話は実に楽しそうだ! お預けのことは気にしないでくれたまえ。今のボクは最高に機嫌がいいんだ。ゼロラ殿と頼みとあらば、ボクも見せてあげるよ――」

 そう言いながらリョウは自らの周囲に七色の魔力の塊を回転させながら、その身を魔法の光で覆った。

「――【七色魔力の響音】。その力を、ボクの大切な友達のためにね!」

 光が消えるとそこにいたのはいつもの姿のリョウ。髪も衣服もすっかり元通りになっている。言葉にも活気が戻っている。
 【七色魔力の響音】。このルクガイア王国において、賢者リフィーに並ぶほどの魔法の使い手。
 魔法や魔力関係でこいつほど頼りになる奴はいない。

「ラルフル君。君の失った魔力の真相究明、魔力の奪還。ボクは喜んで協力させてもらうよ」
「よろしくお願いします! リョウ大神官!」
「ミリア様、マカロン。今回のボクは大真面目だ。二人のこともボクが守る」
「信頼してるわよ。リョウ大神官」
「行きましょう! リョウさん!」

 ラルフル、ミリア、マカロンもリョウの同行を快く受け入れてくれた。
 こっちは大丈夫だろう。俺は俺で、するべきことをするか。





「ゼロラ殿。リョウ大神官には会えたかい?」
「ああ。待たせてすまなかったな、ロギウス」

 ラルフル達一行を見送った後、俺は先に馬を用意してもらっていたロギウスと合流した。

「テコロン鉱山までは遠い。一度途中にある"ダウンビーズ"で一泊してから向かうとしよう」
「"ダウンビーズ"?」
「テコロン鉱山から一番近い街さ。あまり治安は良くないけど、野宿よりはマシだろう」

 "ダウンビーズ"か。治安の悪い街らしいが、ロギウスの言う通り野宿よりはマシだ。
 テコロン鉱山に着いたら戦うこともあるだろう。丁度いいところに街があるなら立ち寄らない手はないな。

「よし。それじゃあ、行くか」
「ああ。ラルフル達のことは向こうに任せて、僕達は僕達の役割をこなそう」

 こうして俺とロギウスはドクター・フロストに会うために、まずは近くにあるダウンビーズの街へと向かうのであった。


◇◇◇


「……おや? ゼロラ様とロギウス殿下は出立されたところですか」
「コゴーダの兄貴!? 今までどこ行ってたんすか!? こっちは大変だったんすよ!?」

 ゼロラとロギウス。その二人を近くで眺めていた人物がいたことに、二人は気付かなかった――
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