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第12章 舞台へ立つために

第150話 果報はプリンを食べて待て

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「ローゼス~。ゼロラさんはまだ帰ってこないですか~?」
「ギャングレオ盗賊団のアジトへ向かったのです。遅くなるのは仕方ないでしょう」

 私、ガルペラ侯爵はお屋敷でギャングレオ盗賊団に会いに行ったゼロラさんを一日待っているのです。
 でももう陽が暮れてしまっているです。帰りが遅いのです。
 ゼロラさんがやられたとも考えられるですが、私の読みが正しければ勝っても負けてもゼロラさんは帰ってこれるはずなのです。

「ローゼス~。暇なのです~」
「ならば少し休んでてください。このところ、ガルペラ様は働きづめでしたから」

 確かに最近は色々手続きや対処に追われてて大変だったのです。でもその仕事も頑張って終わらせたのです。なのですることがないのです。休むといっても今日はお昼寝もしたので眠くもないのです。
 "果報は寝て待て"という言葉がありますが、寝れなければ待てないのです。

 ……でも、"寝て待つ"のならば"食べて待つ"のも変わらないのではないのです?

「ローゼス~。プリン食べたいのです~」

 そう、"果報はプリンを食べて待て"なのです! 今ここに、新たな名言が誕生したのです!

「ダメです。ガルペラ様はこのところプリンばかり食べています。それにもう夜も更け始めています。今食べるのは健康にも良くありません」

 ……ローゼスに止められたのです。ケチなのです。
 折角プリンを保存できるようにこのお屋敷に配電設備を設置して、冷蔵庫が使えるようにしたのです。プリンが食べられないと冷蔵庫を設置した意味がないのです。

「ローゼス~。そこをなんとかなのです~」
「ダーメーでーすー! ここ最近でどれだけプリンを食べてると思ってるのですか? もう軽く三十個は食べてますよ?」

 おいしいデザートは別腹なのです。おいしいは正義です。つまり、プリンを食べることも正義なのです。
 それでもローゼスはプリンを出してくれないのです。冷蔵庫にはローゼスが勝手にカギを付けてしまったので、盗み食いもできないのです。
 ……こうなったら仕方ないのです。奥の手を使うのです。

「ママ~! プリン食べたいです~!」
「!? そ……そんなこと……言ったって……!」

 ローゼスの守りが緩んだのです! これぞ必殺作戦、<ママ~! あれ頂戴!>なのです!

「ハァ……ハァ……! ダ、ダメです! 今回ばかりはそうはいきません!」

 な!? 私の必殺作戦が通用しないのです!? 今日のローゼスは手ごわいのです!

「ママ~、ダメ~?」

 さらに私が目を輝かせて<おねだりビーム>も放ったのですが、これも通用しないのです!
 ローゼス……レベルを上げているのです!
 こうなったら仕方ないのです。私のお口はプリンを食べる準備で万端なのです。もはや手段は選ばないのです……プリンのためです!

「やだやだやだ~! ママ~! プリン食べたいです~!」

 私は床の上で仰向けになって両手足をバタバタとしたのです。これぞ最終奥義<駄々っ子ムーブ>なのです! プリンのためならば、侯爵という立場も関係ないのです!

「あ、あわわわ……!? ガ、ガルペラ様……!?」

 ローゼスが困惑しているのです! あと一歩なのです!
 ……あれ? なんでローゼスは扉の方を見ているのです?

「……何やってんだ? お前ら?」

 ……ゼロラさんが帰って来たのです。ってか、さっきのを見られたのです。

 スクッ イソイソ…… キィ

「ゼロラさん、お帰りなのです。報告を聞くのです」

 ごく自然な動きで床から起き上がった私はそのまま椅子に腰かけて、かっこよく机の上で手を組んだのです。これで誤魔化しきれ――

「いや、それで誤魔化せるわけねえだろ……」

 ――なかったのです。でもここで態度を変えたらなおのこと恥ずかしいのです。強引に押し通すのです。

「ギャングレオ盗賊団との交渉はどうだったのですか?」
「あくまでさっきのはなかった事で押し通すつもりかよ……。まあいい」

 ゼロラさんは呆れながらも報告してくれたのです。

 ギャングレオ盗賊団や頭領シシバとの戦い。
 ギャングレオ盗賊団の元締め、バクト公爵の存在。
 バクト公爵とギャングレオ盗賊団の目的。
 バクト公爵が協定を結ぶ意思があること。

 どれも有益な情報だったのです。
 バクト公爵との会談の機会まではまだ時間がありそうなのですが、ギャングレオ盗賊団の主要メンバーとは明日会えるそうなのです。
 ゼロラさんには大変な一日だったですけど、これは大きな一歩なのです。

「これはお祝いなのです! プリンを食べるのです!」
「……ローゼス。もう、食べさせてやれよ……」
「ええ……そうするわ」
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