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第10章 黒幕達

第128話 ギャングレオの日常

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「てやんでい。誰かと思えばサイバラ隊長にゼロラの旦那でい」
「サイバラ隊長が城内を案内しているんですかねい。コゴーダ参謀長は不在でしょうかねい」

 サイバラの案内が終わったところに、どこかで見た二人の男がやって来た。

「コゴーダの兄貴は急用で不在だ。カシラに頼まれて俺が案内してたところだ」
「サイバラ。この二人もギャングレオ盗賊団の幹部なのか?」
「そういえばきちんと紹介してませんでしたね」

 あの時は一応戦いの最中だったからな。

「てやんでい。だったら改めて自己紹介でい。俺はギャングレオ盗賊団・建設現場主任のヤカタでい。他の連中からはヤカタ主任と呼ばれてるが、ゼロラの旦那は好きに呼んでくれでい」

 建設現場主任のヤカタか。
 てやんでい口調が気になるが、見た目はいかにも頑固な土方親父だ。『安全第一』と書かれた黄色いヘルメットも妙に似合う。

「では、あっしも。あっしはギャングレオ盗賊団・企画営業部長のネモトといいやす。ギャングレオ内ではネモト部長と呼ばれてやすが、あっしの呼び方もどうぞ旦那のご自由に」

 企画営業部長のネモトか。
 見た目も喋り方も胡散臭そうだが、どこか掴みどころがない。眼鏡を指でクイッと上げる仕草が妙に似合う。

「もう今更なんだけどよ……。建設現場主任に企画営業部長って、やっぱり盗賊団の役職じゃねえよな」
「……おれも最初はそう思ってましたが、最近はツッコんだら負けかなと思い始めました」

 俺の意見に同調するサイバラ。サイバラがまともな人間に見えてきた。半裸だけど。

「てやんでい。役職に首突っ込むのは野暮ってもんでい。そもそもサイバラ隊長が幹部になったのも俺らより後でい」
「サイバラ隊長はかなりのスピード出世でやしたね。――いくら渡しやしたか?」

 ネモトは指でお金のマークを作ってサイバラに尋ねる。賄賂ってことか。

「渡してねえよ! おれは実力でのし上がったんだよ!」
「そう怒らんでくだせい。ほんの冗談でやすよ」
「てやんでい! 実際、サイバラ隊長の実力は確かでい!」

 サイバラ達幹部三人は冗談を言い合いながらも楽しく話している。
 ギャングレオ盗賊団はおかしな連中ばかりだが、こうやって敵としてではなく接してみると、フランクで明るい奴らだな。

「客人であるゼロラ様がおられるか……」
「客人であれば、我らが手を出す意味もなし……」

 俺達が男四人で話していると、背後で女四人が膝をついていた。この黒ずくめの女達は確か忍衆だったな。キャラ崩壊しながらサイバラの尻に手裏剣投げてたのを覚えてる。

「幹部三名も揃われたか……」
「我らに御用があれば何なりと……」
「いや、そのキャラもういいから。ゼロラさんの前で盛大に崩壊してたから。とっくにキャラ作ってることバレてるから」

 サイバラが忍衆に忠告する。やっぱりキャラ作ってたんだな。

「え~。だって頭領から『諜報部隊って、やっぱ怪しい雰囲気が必要やな』って言われて練習したんですよ~?」
「頭領の指示だったのに、ヤな感じ~」
「時と場所を選べってことだよ! ここにいる全員知ってることだからな!?」

 サイバラがツッコミ役に回るのも珍しい。いや、普段はこんな感じなのかもな。

「ところでサイバラ隊長! 私達は城内カフェのメニュー改善を希望します!」
「流石に紅茶ばっかりは飽きました! たまにはコーヒーも飲みたいです!」

 忍衆がサイバラにカフェのメニュー改善を頼んでいる。すごくめんどくさそうな顔をするサイバラ。でも確かコーヒーの話は――

「コーヒーがメニューに欲しいなら、コゴーダの兄貴に申し立てろ」
「諦めるしかないのか……」
「あの人には逆らえぬ……」
「コーヒーはお預けか……」
「紅茶で我慢しよう……」

 忍衆が再びキャラを作―― いや、あれは素で落ち込んでるな。落ち込んで声が暗くなってるだけだ。
 後、なんでコゴーダはそこまでコーヒーが嫌いなんだ? コーヒーに親でも殺されたのか?

「てやんでい! せめて緑茶が欲しいでい!」
「あっしは眠気を覚ませるものならなんでもいいでやすが。サイバラ隊長、何とか頼めやせんかね?」
「だーかーらー! なーんでおれが対処しなきゃいけねえんだよ!」

 頑張れ、サイバラ。俺は知らん。

 そんなこんなで俺の目の前で繰り広げられるギャングレオ盗賊団の日常。俺はそれを眺めながらコゴーダの帰りを待った。
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