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第10章 黒幕達

第127話 ようこそ、ギャングレオへ

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「いや~、お待たせしました、ゼロラさん! おれが案内しますのでどうぞどうぞ~」

 ギャングレオ城を案内してもらうために呼び出されたサイバラなのだがメチャクチャ腰が低い。手でゴマをすりながら案内してくれている。ところどころ体に湿布や絆創膏を貼っているが、もう元気なのか……。

「サイバラ、さっき戦った時の威勢はどこいったんだ?」
「……シシバのカシラを倒して、さらに現在は食客扱い。ここで粗相を働いたら、おれがお説教すよ……」

 サイバラが言うには俺は現在ギャングレオ盗賊団内でも別格で、シシバと同格の客人扱いになっているらしい。
 そりゃ腰も低くなるか。

「とりあえずゼロラさん。こちらで用意したパンフレットをもとに案内します」
「パンフレット?」

 サイバラが取り出したのは『ギャングレオ盗賊団概要説明』と書かれた冊子だった。

「ギャングレオ盗賊団の構成員を増やす時に使った求人パンフレットっす」
「もうどこからツッコんだらいいんだか……」

 俺は頭が痛くなりながらもパンフレットを見ながらサイバラの案内に付いていった。

〇 〇 〇

 "ギャングレオ盗賊団概要説明"

 ギャングレオ盗賊団は盗賊事業を中心とした多くの事業へと取り組む、最先端盗賊団です。
 盗賊部門では"安全・確実・手早く"をモットーにした襲撃計画を立て、構成員の皆様の身を第一に考えて盗賊行為を行っております。

 盗賊行為に抵抗があるあなたも大丈夫。
 ギャングレオ盗賊団には盗賊部門以外の事業部門が多数存在します。建設・営業・飲食・護衛・事務・清掃・雑務等々。あなたに合った部門への配置をギャングレオ盗賊団でお約束します。

 女性の方の雇用促進にも努めており、現在は諜報部門・忍衆しか配属先はありませんが、今後はお望みの方がいらっしゃれば女性のためのサポートを考えた他部門への配属も考えて行きます。

 また、ギャングレオ盗賊団に加入された際には本部である"ギャングレオ城"の各種施設もご利用いただけます。

 食堂はバイキング形式で好きなメニューを選ぶことができます。健康が気になる方には、低カロリーの健康メニューもご用意してあります。

 蔵書室には知識のための文献だけでなく、娯楽用の書物も多数そろえてあります。蔵書室内にはカフェも設置されており、お好みの紅茶を飲みながら優雅な休息を過ごしてみませんか?

 運動不足でお悩みの方はトレーニングルームをお勧めします。城内には訓練用の道具も多数存在し、あなたにあったトレーニングをお選びいただけます。

 そして一仕事終わった後はやっぱりお風呂。ギャングレオ城には大きな大衆浴場があります。普通のお風呂だけでなく、電気風呂にバブルバス、サウナも用意して一日の仕事の疲れを癒すことができます。

 構成員のための寮も完備しており、城内からすぐに出勤できます。もちろん退勤だってすぐにできます。

 「盗賊団ってブラックじゃないの?」とお考えの人も大丈夫。
 出勤は交代制。給料は時給+成果報酬。残業代もでますが、無理な残業は要求しません。タイムカード制で時間も正確に管理いたします。成果が認められた人には昇給、昇格の機会もあります。

 『ナウなギャングにバカウケ』。そんな明るい未来の盗賊団を目指して。
 ギャングレオ盗賊団は『イノベイト&レボリューション』を組織理念とし、これからの新しい時代を切り開いていきます。

 さあ! 今日からあなたもギャングレオ!

〇 〇 〇

「――っと、大まかな説明は以上すかね。何か質問とかありますか?」
「…………」

 パンフレットに沿う形でサイバラの案内が終わった。
 頭が痛い。とにかく痛い。
 あまりにもツッコミ所が多すぎるのだが、とにかく俺が言いたいことは……。

「お前ら……本当に盗賊団なのか?」
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