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第9章 激突・ギャングレオ盗賊団

第111話 獅子の本丸

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 コゴーダから地図を受け取った翌日の朝。俺は記された場所に来ていた。

「やっぱり何もねえな。あれだけ巨大な盗賊団なんだから、でかい建造物でもあるはずなんだが……ん?」

 林の中に入っていくと何やら小さな小屋があった。

「まさかこれがギャングレオ盗賊団のアジトじゃねえよな?」

 とりあえず中に入ってみたが、誰もいない。入口以外は窓すらないが……ただ一つだけスイッチがあった。

「……これを押せってことだよな?」

 俺は恐る恐るスイッチを押してみた。

 ゴォウン!

「うお!? な、なんだ!? 床が下がった!?」

 いや! これは部屋自体が下へと移動している!? まさかこの地下にアジトがあるのか!?
 しばらく下降すると部屋が停止したので、元々あった入り口から外へ出てみた。

 外へ出るとそこは先程の林ではなく、巨大な地下空洞になっていた。やはり地下へと向かっていたんだな。
 だが何より驚くべきことは――

「これは……城か……?」

 俺の目の前に飛び込んできたのは、巨大な地下空洞に収まる巨大な城だった。城門があり、その手前には水が流れる堀に橋まで架けられている。

「まさか……これがギャングレオ盗賊団の……?」
「そのとーり! ここはかつて、【伝説の魔王】率いる魔王軍が大陸侵攻の足掛かりとして用意していた"地底魔城"だ! それをおれたちギャングレオ盗賊団のアジトとして改造したのがここだ!」

 俺の疑問に答えるかのように、城門の方から聞き覚えのある声が飛んできた。

「よく来たな、ゼロラ! "地底魔城"改め、ギャングレオ盗賊団本部! "ギャングレオ城"へ!」
「サイバラ……!」

 センビレッジでの対決以来か。相変わらずグラサンに半裸の奇抜な格好だな。

「前も思ったんだがよ。お前、服着ろよ」
「うるせぇ! これがおれのポリシーだ!」

 捨てちまえ、そんなポリシー。
 サイバラの周りにはギャングレオの下っ端と思われる連中が何人かいた。出迎えの準備は万端のようだ。

「ギャングレオ盗賊団頭領、シシバのカシラからてめえを"ギャングレオ流"で盛大に手荒く歓迎してやれとのご通達だ!」

 本当に手荒い歓迎をしてくれたもんだ。してくれたもんだが……。

「……おい。そこの看板に『ようこそ、ゼロラ様』ってデカデカと書いてあるのはなんだ?」
「……いや、おれは反対したんだぜ? 歓迎ムード出し過ぎだって」

 うん、確かに出し過ぎだな。これじゃあ"手荒く歓迎"どころか"手厚く歓迎"しちまってるぞ。

「と、とにかくだ! シシバのカシラはてめえを試す気らしい! だが、おれはこの前の借りもある! おれの給料から差し引かれた店の弁償代も含めて、てめえを全力で叩き潰させてもらうぜ!」

 いや、店壊したのはお前だろ。

「御託はいい。かかってくるならさっさとかかってこい」
「上等だ! あれからパワーアップしたおれの力を見せてやるぜ!」

 俺とサイバラ、そして周りの下っ端たちが対決の合図を待つように身構える。


 ヒュ~…… パァン!

「……おい。花火が上がったんだが、あれが対決の合図か?」
「あー!? ヤカタ主任とネモト部長の仕業だな!? いらねえんだよ! そんな演出!」
「主任? 部長? 誰だそいつら?」
「ウチの建設現場主任と企画営業部長だよ!」

 それ盗賊団の役職じゃねえだろ。……ダメだ。よく分からんが相手のペースだ。

「サイバラ隊長。俺達帰っていいですか?」
「なんだか気が抜けちゃったといいますか……」
「馬鹿野郎! おれだって入った気合が全速力で抜けそうだよ!」

 いや。向こうもペースを乱してるらしい。

「も、もうこうなったらヤケクソだー! ぜっっったいてめえをぶちのめしてやるぜー!」

 サイバラの中の何かが切れてしまったようだ。もうそれでいい。こっちも始めるならさっさと始めたい。

「お前ら! このおっさんやっちまいなぁ! ブチ殺しちまいなぁ!!」
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