上 下
108 / 476
第9章 激突・ギャングレオ盗賊団

第109話 突入前日

しおりを挟む
「ゼロラさん! 大丈夫ですか!?」

 地下室から戻った俺をマカロンが心配して出迎えてくれた。

「大丈夫だ。どこもケガなんてしてねえし」
「ケガ!? やっぱり戦ったんですか!? 無事なんですか!?」
「だからどこもケガしてねえって」
「むしろ相手の方がケガしてそうですよね……」

 もっともだ、ラルフル。それにしてもマカロンが普段にも増して心配性だ。

「まあ、コゴーダの眼鏡には適うよな。それでどうなったんだ?」

 ジフウも気にはなっていたようで俺に問いかける。

「明日の朝、俺一人で指定された場所に来るように言われた」
「そ、それってまさか罠じゃ!?」
「いーや、ない。シシバに限ってそんなことはしない」

 マカロンは不安を述べるが、ジフウはハッキリと否定する。シシバの望みは俺と戦うことにあるようだ。俺の力量を図りつつ、自らが戦うにふさわしい相手かを見極めたいようだ。だがそうなると一つだけ解せないことがある。

「ジフウ。お前の弟もお前と同じで戦うことが好きなタイプか?」
「戦うことが好きなタイプっていうと少し語弊があるな。"戦う事こそ生き甲斐"ってタイプと言ったほうがいいな」

 要するに戦闘狂ってやつか。ならますます気になるのは……。

「ならそいつは"回りくどく義賊のような行為を進んでする"タイプなのか?」
「……痛いところを突いてくるな。少なくとも本来はそんな奴じゃない」

 ジフウの言い方が妙に引っかかるが、それ以上のことは答えてくれなかった。ここから先は本人に会って直接確認するか。

「後はガルペラに報告しに行くか」
「だったらアタシとラルフルがしてくるわ」
「そうですね。お姉ちゃんとゼロラさんは二人で街でも歩いてきてください」

 ミリアとマカロンがニコニコしながら促す。何か悪意のようなものを感じる……。

「し、仕方ないわね。ラルフルとミリアちゃんがそこまで強く言うなら私とゼロラさんはちょっと出かけてくるわ」

 いや、そこまで強く言ってねえだろ。
 そんな俺の気持ちを他所に、俺はマカロンに半ば強引に街へと連れ出された。



「こ、こうしてゼロラさんと二人きりでセンビレッジの街を歩くなんて初めてですよね」
「あ、ああ。そうだな」

 俺とマカロンは二人で街を歩いていた。……なぜだか気まずい。

「お? あれは……」
「え? 何ですか?」

 俺は目の前の人だかりを見た。

「好き嫌いは許さない! 愛と正義の野菜戦士! キャプテン・サラダバー! とぉう!」
「来たな~、キャプテン・サラダバー! 今日こそはこのヘンショッカー様がこの一帯を"不健康・揚げ物専門店街"に変えてくれるわ~!」

 キャプテン・サラダバーとヘンショッカーだ。あいつらまだショーは続けてるのか。

「え!? 何ですかあれ!? 面白そう!」

 マカロンはこういうのが結構好きらしい。中身は普通の青年と普通の商会長だがな。

 ショーが終わるとせっかくなので俺は二人に声をかけた。

「よお。その後の調子はどうなんだ?」
「あ! ゼロラさん! おかげであれから野菜の売り上げも上々ですよ!」
「でもショーの人気もすごいので、今後も続けていく予定です!」

 元気そうで何よりだ。

「おや? 今日は彼女さんもご一緒ですか?」
「よろしければこちらをどうぞ。新商品の"野菜とお肉のカップルサンド"です。その名の通り、カップルにも人気なんですよ」

 商会長は俺に新商品を渡してくれた。いつもならここでマカロンが『カップルなんかじゃないです!』と反論してきそうなものだが――

「……私達って、カップルに見えます?」

 反論どころか確認してきた。

「あれ? 違うのですか?」
「親子とかには見えませんか?」
「確かに歳の差はありますが、親子とは違う気がしますね。カップルと言ったほうがしっくりきます」

 さらにマカロンは質問を重ねた後――

「……よし! 私にだってチャンスはある!」

 何かに対して意気込んだ。
 何にだ? 何のチャンスがあるんだ? ……いや、俺も"もしかしたら"というレベルだが、分かってきてはいる。

 その後、マカロンは俺の方に向き直って宣言した。

「私だって……ライバルには負けませんから!」

 顔を赤くしながら宣言した後、一人でどこかへ走り去ってしまった。
 話が飛び過ぎていてよく分からない。こういうところ、ラルフルとも似てる気がする。

 だが俺にはマカロンが言った"ライバル"がリョウのことであるのがなんとなく分かった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

アリーチェ・オランジュ夫人の幸せな政略結婚

里見しおん
恋愛
「私のジーナにした仕打ち、許し難い! 婚約破棄だ!」  なーんて抜かしやがった婚約者様と、本日結婚しました。  アリーチェ・オランジュ夫人の結婚生活のお話。

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

【完結】ある公爵の後悔

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
王女に嵌められて冤罪をかけられた婚約者に会うため、公爵令息のチェーザレは北の修道院に向かう。 そこで知った真実とは・・・ 主人公はクズです。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処理中です...