上 下
106 / 476
第9章 激突・ギャングレオ盗賊団

第107話 兄弟関係

しおりを挟む
「いらっしゃいませ……ええ!? お、お客様はあの時の!?」

 俺達が店に入ると店員が俺を見て驚いてきた。そりゃそうか。前回俺はこの店を襲いに来たわけなんだから。

「あの時は何と言いますか……気遣っていただきありがとうございました」
「いや、こちらこそすまなかった。あれ以降店は順調なのか?」
「はい。ドーマン男爵の姿も最近は見なくなったので、経営は順調です」

 あー。あいつギャングレオ盗賊団に襲われて没落したのか。

「最近は新しく来たギャングレオ盗賊団幹部の方が店の経営をマネジメントしてくれたおかげで売り上げも上がってきてます」

 例の参謀長か。しかし盗賊団が店の経営をマネジメントとはこれ如何に。

「あの時壊れた店の内装も修理していただけました」
「本当だな。壁や床に穴が開いてたのに綺麗に直ってる」
「壁や床に穴って……ゼロラさん何をしたんですか?」

 『うわ~、この人やっぱりそこまでやっちゃったか~』みたいな顔をするんじゃない、マカロン。店を壊したのは用心棒であるサイバラの方で――

「棚のお酒も補充してもらえました」

 ――すまん。やっぱり俺も壊してたわ。

「やっとお出ましか、ゼロラ。待ちくたびれたぜ」

 突如俺を呼ぶ声がした。噂の参謀長かと思ったが、そこにいたのはジフウだった。

「ジフウ? 何でここに?」
「ギャングレオ盗賊団をつけておけば、いずれお前にも会えると思ってな」

 俺に用があるのか? しかしこいつはギャングレオ盗賊団の件には不介入とか言ってたよな? 確かに目的は俺のようだが。

「ん? ん~? ラルフル、あの人は?」
「国王直轄黒蛇部隊の隊長、ジフウさんです。ミリアさんがお会いするのは初めてでしたっけ」
「初めてなんだけど……この人の顔、どっかで見たことが……。髪の色は違うけど、瞳の色は同じ赤色だし……」

 ミリアはジフウと似た人間に会ったことがあるようだ。それを聞いたジフウは汗をダラダラ流しながら顔を強張らせている。

「あー!? シシバよ! このジフウって人、ギャングレオ盗賊団頭領のシシバと見た目がそっくりなのよ! 眼帯はないけど、顔立ちとかほとんど同じだし!」

 ジフウとシシバの容姿がそっくり? それを聞いたジフウは何かを諦めたように話し始めた。

「あー、くそ。そこまでバレたなら仕方ない。俺とシシバは兄弟なんだよ。俺が兄でシシバが弟だ」
「ええ!? 国王直轄の人がギャングレオ盗賊団頭領のお兄さん!?」
「自分も初めて聞きましたよ!?」

 ジフウの話を聞いて驚くマカロンとラルフル。俺も驚いたが納得もいった。ジフウがギャングレオ盗賊団への不介入を決め込んでいたのは、相手が自身の弟だったからか。

「一応隠してたんだがな~……。俺とシシバの関係って表に出ると色々マズイんだよ……。ボリボリ」
「ジフウさん、また胃薬を噛み砕かないでください……」

 よっぽど胃が痛いのかジフウは取り出した胃薬を貪り食っている。ラルフルの言葉からして王宮にいる時もこんな感じのようだ。……相当苦労してんだな。

「とにかく、このことは他言無用で頼むぞ」
「分かったよ。それよりも俺に要件があったんじゃないのか?」
「あー、そうだった」

 ジフウは気を取り直して俺に尋ねてくる。

「お前、以前フォーレスの森でそこのマカロンを助けに行ったとき、パンクタイガーを倒したそうだな?」
「あの虎のモンスターか。確かに倒したな」
「率直に聞く。お前は【虎殺しの暴虎】じゃねえよな?」
「ええ!? なんでジフウさんがその二つ名を知ってるんですか!?」

 【虎殺しの暴虎】。そういえばラルフルがパンクタイガーを倒した俺を見てそんな風に呼んでたな。

「え? 本当にゼロラが【虎殺しの暴虎】なのか?」
「ラルフルが勝手にそう呼んでるだけだ」
「なんだ、ただの偶然の一致かよ……。確かにゼロラが【虎殺しの暴虎】だと筋が合わねえから違うとは思ってたが……」

 ジフウはどこか安心したように納得する。

「ところでその【虎殺しの暴虎】ってのはなんなんだ? お前の二つ名、【龍殺しの狂龍】とも関係があるのか?」
「貴族達の間で俺と並び称される男だ。ただ、向こうは俺と違って国王直轄とかじゃねえ。むしろジャコウが裏で糸を引いている」

 ジャコウ……。"壁周り"でラルフルを痛めつけていたあのクソ軍師か。

「【虎殺しの暴虎】の正体は俺にも分からねえ。ただそういう人間が存在していて、その存在が陛下にとって悩みの種だから、こうやって調べてる最中さ」

 もしその話が全て本当ならば、【虎殺しの暴虎】は今後俺達にとっても強大な敵として立ちふさがるだろう。

「そういうゼロラは女まで連れてここに何しに来たんだ?」
「ギャングレオ盗賊団の参謀長に会おうと思ってな」
「ほーう。ゼロラの方から来るとは、シシバの思惑的中ってところか」

 ジフウの言い方は俺がギャングレオ盗賊団と接触するのをあらかじめ読んでいたような口振りだ。

 コツ コツ コツ

 俺達が話していたところに誰かが近づいてくる。

「噂をすれば、か。お目当ての参謀長様がお出ましのようだ」

 近づいてきたのは俺よりも年上と思われる、シルクハットをかぶってモノクルをつけた紳士のような男だった。

「あなたがゼロラ様ですね? お待ちしておりました。私はギャングレオ盗賊団参謀長のコゴーダと申します。以後、お見知りおきを」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

仔猫殿下と、はつ江ばあさん

鯨井イルカ
ファンタジー
魔界に召喚されてしまった彼女とシマシマな彼の日常ストーリー 2022年6月9日に完結いたしました。

王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル

ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。 しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。 甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。 2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。

学年一の不良が図書館で勉強してた。

山法師
恋愛
 春休み。4月になったら高校2年になる成川光海(なりかわみつみ)は、2年の予習をしようと、図書館に来た。そしてそこで、あり得ないものを見る。  同じクラスの不良、橋本涼(はしもとりょう)が、その図書館で、その学習席で、勉強をしていたのだ。 「勉強、教えてくんねぇ?」  橋本に頼まれ、光海は渋々、橋本の勉強を見ることに。  何が、なんで、どうしてこうなった。  光海がそう思う、この出会いが。入学して、1年経っての初の関わりが。  光海の人生に多大な影響を及ぼすとは、当の本人も、橋本も、まだ知らない。    ◇◇◇◇◇◇◇◇  なるべく調べて書いていますが、設定に緩い部分が少なからずあります。ご承知の上、温かい目でお読みくださると、有り難いです。    ◇◇◇◇◇◇◇◇  他サイトでも掲載しています。

呪われ姫の絶唱

朝露ココア
ファンタジー
――呪われ姫には近づくな。 伯爵令嬢のエレオノーラは、他人を恐怖させてしまう呪いを持っている。 『呪われ姫』と呼ばれて恐れられる彼女は、屋敷の離れでひっそりと人目につかないように暮らしていた。 ある日、エレオノーラのもとに一人の客人が訪れる。 なぜか呪いが効かない公爵令息と出会い、エレオノーラは呪いを抑える方法を発見。 そして彼に導かれ、屋敷の外へ飛び出す。 自らの呪いを解明するため、エレオノーラは貴族が通う学園へと入学するのだった。

父と母は転生者!そして私は悪役令嬢・・らしいです?

naturalsoft
ファンタジー
皆様初めまして。 私はミスレイン公爵家の長女、シオン・ミスレインです。兄妹に1つ上のお兄様がいます。私はごく平凡な貴族の御令嬢で、少し魔法が使える程度の者ですが、私のお父様とお母様がとても素晴らしい方で私の自慢の両親なのです。 【私の婚約破棄】などと言う状況よりも、皆様に私の敬愛する両親のお話しをしましょう!大好きなお父様、お母様の話しを聞いて下さい! そして、敬愛する両親を罵倒した愚か者の末路をお楽しみ下さいませ。フフフ・・・ 【不定期更新】です。他の小説の合間に読んで貰えると嬉しいです。 (愚者の声で作中に参加してます) 同作品 『悪役令嬢戦記!大切な人のために戦います』 と、コラボしています。同じ世界観で絡んできます。 素人の執筆で至らない所が多々あるかと思いますが生暖かい目で読んで頂けたらと思います。 5/3:HOTランキング23位ありがとうございます!

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...