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第9章 激突・ギャングレオ盗賊団
第107話 兄弟関係
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「いらっしゃいませ……ええ!? お、お客様はあの時の!?」
俺達が店に入ると店員が俺を見て驚いてきた。そりゃそうか。前回俺はこの店を襲いに来たわけなんだから。
「あの時は何と言いますか……気遣っていただきありがとうございました」
「いや、こちらこそすまなかった。あれ以降店は順調なのか?」
「はい。ドーマン男爵の姿も最近は見なくなったので、経営は順調です」
あー。あいつギャングレオ盗賊団に襲われて没落したのか。
「最近は新しく来たギャングレオ盗賊団幹部の方が店の経営をマネジメントしてくれたおかげで売り上げも上がってきてます」
例の参謀長か。しかし盗賊団が店の経営をマネジメントとはこれ如何に。
「あの時壊れた店の内装も修理していただけました」
「本当だな。壁や床に穴が開いてたのに綺麗に直ってる」
「壁や床に穴って……ゼロラさん何をしたんですか?」
『うわ~、この人やっぱりそこまでやっちゃったか~』みたいな顔をするんじゃない、マカロン。店を壊したのは用心棒であるサイバラの方で――
「棚のお酒も補充してもらえました」
――すまん。やっぱり俺も壊してたわ。
「やっとお出ましか、ゼロラ。待ちくたびれたぜ」
突如俺を呼ぶ声がした。噂の参謀長かと思ったが、そこにいたのはジフウだった。
「ジフウ? 何でここに?」
「ギャングレオ盗賊団をつけておけば、いずれお前にも会えると思ってな」
俺に用があるのか? しかしこいつはギャングレオ盗賊団の件には不介入とか言ってたよな? 確かに目的は俺のようだが。
「ん? ん~? ラルフル、あの人は?」
「国王直轄黒蛇部隊の隊長、ジフウさんです。ミリアさんがお会いするのは初めてでしたっけ」
「初めてなんだけど……この人の顔、どっかで見たことが……。髪の色は違うけど、瞳の色は同じ赤色だし……」
ミリアはジフウと似た人間に会ったことがあるようだ。それを聞いたジフウは汗をダラダラ流しながら顔を強張らせている。
「あー!? シシバよ! このジフウって人、ギャングレオ盗賊団頭領のシシバと見た目がそっくりなのよ! 眼帯はないけど、顔立ちとかほとんど同じだし!」
ジフウとシシバの容姿がそっくり? それを聞いたジフウは何かを諦めたように話し始めた。
「あー、くそ。そこまでバレたなら仕方ない。俺とシシバは兄弟なんだよ。俺が兄でシシバが弟だ」
「ええ!? 国王直轄の人がギャングレオ盗賊団頭領のお兄さん!?」
「自分も初めて聞きましたよ!?」
ジフウの話を聞いて驚くマカロンとラルフル。俺も驚いたが納得もいった。ジフウがギャングレオ盗賊団への不介入を決め込んでいたのは、相手が自身の弟だったからか。
「一応隠してたんだがな~……。俺とシシバの関係って表に出ると色々マズイんだよ……。ボリボリ」
「ジフウさん、また胃薬を噛み砕かないでください……」
よっぽど胃が痛いのかジフウは取り出した胃薬を貪り食っている。ラルフルの言葉からして王宮にいる時もこんな感じのようだ。……相当苦労してんだな。
「とにかく、このことは他言無用で頼むぞ」
「分かったよ。それよりも俺に要件があったんじゃないのか?」
「あー、そうだった」
ジフウは気を取り直して俺に尋ねてくる。
「お前、以前フォーレスの森でそこのマカロンを助けに行ったとき、パンクタイガーを倒したそうだな?」
「あの虎のモンスターか。確かに倒したな」
「率直に聞く。お前は【虎殺しの暴虎】じゃねえよな?」
「ええ!? なんでジフウさんがその二つ名を知ってるんですか!?」
【虎殺しの暴虎】。そういえばラルフルがパンクタイガーを倒した俺を見てそんな風に呼んでたな。
「え? 本当にゼロラが【虎殺しの暴虎】なのか?」
「ラルフルが勝手にそう呼んでるだけだ」
「なんだ、ただの偶然の一致かよ……。確かにゼロラが【虎殺しの暴虎】だと筋が合わねえから違うとは思ってたが……」
ジフウはどこか安心したように納得する。
「ところでその【虎殺しの暴虎】ってのはなんなんだ? お前の二つ名、【龍殺しの狂龍】とも関係があるのか?」
「貴族達の間で俺と並び称される男だ。ただ、向こうは俺と違って国王直轄とかじゃねえ。むしろジャコウが裏で糸を引いている」
ジャコウ……。"壁周り"でラルフルを痛めつけていたあのクソ軍師か。
「【虎殺しの暴虎】の正体は俺にも分からねえ。ただそういう人間が存在していて、その存在が陛下にとって悩みの種だから、こうやって調べてる最中さ」
もしその話が全て本当ならば、【虎殺しの暴虎】は今後俺達にとっても強大な敵として立ちふさがるだろう。
「そういうゼロラは女まで連れてここに何しに来たんだ?」
「ギャングレオ盗賊団の参謀長に会おうと思ってな」
「ほーう。ゼロラの方から来るとは、シシバの思惑的中ってところか」
ジフウの言い方は俺がギャングレオ盗賊団と接触するのをあらかじめ読んでいたような口振りだ。
コツ コツ コツ
俺達が話していたところに誰かが近づいてくる。
「噂をすれば、か。お目当ての参謀長様がお出ましのようだ」
近づいてきたのは俺よりも年上と思われる、シルクハットをかぶってモノクルをつけた紳士のような男だった。
「あなたがゼロラ様ですね? お待ちしておりました。私はギャングレオ盗賊団参謀長のコゴーダと申します。以後、お見知りおきを」
俺達が店に入ると店員が俺を見て驚いてきた。そりゃそうか。前回俺はこの店を襲いに来たわけなんだから。
「あの時は何と言いますか……気遣っていただきありがとうございました」
「いや、こちらこそすまなかった。あれ以降店は順調なのか?」
「はい。ドーマン男爵の姿も最近は見なくなったので、経営は順調です」
あー。あいつギャングレオ盗賊団に襲われて没落したのか。
「最近は新しく来たギャングレオ盗賊団幹部の方が店の経営をマネジメントしてくれたおかげで売り上げも上がってきてます」
例の参謀長か。しかし盗賊団が店の経営をマネジメントとはこれ如何に。
「あの時壊れた店の内装も修理していただけました」
「本当だな。壁や床に穴が開いてたのに綺麗に直ってる」
「壁や床に穴って……ゼロラさん何をしたんですか?」
『うわ~、この人やっぱりそこまでやっちゃったか~』みたいな顔をするんじゃない、マカロン。店を壊したのは用心棒であるサイバラの方で――
「棚のお酒も補充してもらえました」
――すまん。やっぱり俺も壊してたわ。
「やっとお出ましか、ゼロラ。待ちくたびれたぜ」
突如俺を呼ぶ声がした。噂の参謀長かと思ったが、そこにいたのはジフウだった。
「ジフウ? 何でここに?」
「ギャングレオ盗賊団をつけておけば、いずれお前にも会えると思ってな」
俺に用があるのか? しかしこいつはギャングレオ盗賊団の件には不介入とか言ってたよな? 確かに目的は俺のようだが。
「ん? ん~? ラルフル、あの人は?」
「国王直轄黒蛇部隊の隊長、ジフウさんです。ミリアさんがお会いするのは初めてでしたっけ」
「初めてなんだけど……この人の顔、どっかで見たことが……。髪の色は違うけど、瞳の色は同じ赤色だし……」
ミリアはジフウと似た人間に会ったことがあるようだ。それを聞いたジフウは汗をダラダラ流しながら顔を強張らせている。
「あー!? シシバよ! このジフウって人、ギャングレオ盗賊団頭領のシシバと見た目がそっくりなのよ! 眼帯はないけど、顔立ちとかほとんど同じだし!」
ジフウとシシバの容姿がそっくり? それを聞いたジフウは何かを諦めたように話し始めた。
「あー、くそ。そこまでバレたなら仕方ない。俺とシシバは兄弟なんだよ。俺が兄でシシバが弟だ」
「ええ!? 国王直轄の人がギャングレオ盗賊団頭領のお兄さん!?」
「自分も初めて聞きましたよ!?」
ジフウの話を聞いて驚くマカロンとラルフル。俺も驚いたが納得もいった。ジフウがギャングレオ盗賊団への不介入を決め込んでいたのは、相手が自身の弟だったからか。
「一応隠してたんだがな~……。俺とシシバの関係って表に出ると色々マズイんだよ……。ボリボリ」
「ジフウさん、また胃薬を噛み砕かないでください……」
よっぽど胃が痛いのかジフウは取り出した胃薬を貪り食っている。ラルフルの言葉からして王宮にいる時もこんな感じのようだ。……相当苦労してんだな。
「とにかく、このことは他言無用で頼むぞ」
「分かったよ。それよりも俺に要件があったんじゃないのか?」
「あー、そうだった」
ジフウは気を取り直して俺に尋ねてくる。
「お前、以前フォーレスの森でそこのマカロンを助けに行ったとき、パンクタイガーを倒したそうだな?」
「あの虎のモンスターか。確かに倒したな」
「率直に聞く。お前は【虎殺しの暴虎】じゃねえよな?」
「ええ!? なんでジフウさんがその二つ名を知ってるんですか!?」
【虎殺しの暴虎】。そういえばラルフルがパンクタイガーを倒した俺を見てそんな風に呼んでたな。
「え? 本当にゼロラが【虎殺しの暴虎】なのか?」
「ラルフルが勝手にそう呼んでるだけだ」
「なんだ、ただの偶然の一致かよ……。確かにゼロラが【虎殺しの暴虎】だと筋が合わねえから違うとは思ってたが……」
ジフウはどこか安心したように納得する。
「ところでその【虎殺しの暴虎】ってのはなんなんだ? お前の二つ名、【龍殺しの狂龍】とも関係があるのか?」
「貴族達の間で俺と並び称される男だ。ただ、向こうは俺と違って国王直轄とかじゃねえ。むしろジャコウが裏で糸を引いている」
ジャコウ……。"壁周り"でラルフルを痛めつけていたあのクソ軍師か。
「【虎殺しの暴虎】の正体は俺にも分からねえ。ただそういう人間が存在していて、その存在が陛下にとって悩みの種だから、こうやって調べてる最中さ」
もしその話が全て本当ならば、【虎殺しの暴虎】は今後俺達にとっても強大な敵として立ちふさがるだろう。
「そういうゼロラは女まで連れてここに何しに来たんだ?」
「ギャングレオ盗賊団の参謀長に会おうと思ってな」
「ほーう。ゼロラの方から来るとは、シシバの思惑的中ってところか」
ジフウの言い方は俺がギャングレオ盗賊団と接触するのをあらかじめ読んでいたような口振りだ。
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俺達が話していたところに誰かが近づいてくる。
「噂をすれば、か。お目当ての参謀長様がお出ましのようだ」
近づいてきたのは俺よりも年上と思われる、シルクハットをかぶってモノクルをつけた紳士のような男だった。
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