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第9章 激突・ギャングレオ盗賊団

第105話 作戦会議へ

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 ガルペラから準備が整ったとの連絡が入った。俺達の話を聞いてくれるようだ。
 俺はミリアが用意してくれた馬車にラルフル、マカロンと共に乗ってセンビレッジへと向かった。

「ねえ、ゼロラさん。センビレッジに着いて用事が済んだら、たまには一緒に買い物でもしない?」

 ところでさっきから気になっているのだが、マカロンと俺の距離が妙に近い。向かいの席でラルフルとミリアが同じ席に座るのは分かる。消去法で俺とマカロンが同じ席なのも分かる。
 ……だが、近すぎないか? すぐそこにマカロンの顔があるのだが?

「……ミリアさん。自分は夢でも見ているのでしょうか?」
「……リョウ大神官、何か仕組んだわね」

 向かいの席でラルフルは呆気にとられたような顔をしている。ミリアは何か知っているようだ。リョウが何かした? いかん、先日あいつに告白されてから俺の中の気持ちの整理もまだついてないというのに。

 思えばマカロンの最近の行動はおかしかった。
 朝起きれば俺の部屋にちゃんとノックして入ってくるし、朝食にはいつも出来立てのコーヒーを淹れてくれるし、料理の盛り付けにも気を使っているし、顔を合わせようとするとすぐ目を背けられるがチラチラとこちらを見てくる。

 だがもしマカロンのこの行動の変化がリョウと同じものだというならば、まさかマカロンも俺を……!?
 ……いや、それはさすがに自惚れか。マカロンもまたリョウとは違ったイメージの容姿端麗の美人だが、こいつはあいつと違って女性的な部分も多い。俺みたいな年配のおっさんとは釣り合わない……ような気がする。

「え!? まさかリョウ大神官がですか!?」
「ええ。アタシもその話を聞いた時は世界の破滅かと思ったわ……」
「そんなところにお姉ちゃんのライバルがいましたとは……!?」
「アタシとしてはどちらも応援したいけれど……」

 聞こえてるぞ、二人とも。……もしかしたら、"気がする"では終わらないのかもしれない。
 そんな俺の思考を他所に、馬車はセンビレッジへと向かって行った。



「やあやあ、皆さん! 遅くなって申し訳ないのです! ……あれ?」
「……あなた達、なんだかカップリングができてない?」

 センビレッジに着いた俺達はすぐにガルペラ侯爵邸へと向かった。
 執務室に案内されて俺達をガルペラとローゼスが出迎えてくれたが、予想と違う雰囲気だったのか、思わず面食らったようだ。

「ローゼス! 大変なのです! これはつまり、ラルフル君がゼロラさんの義理の弟になってしまったのです!」
「ええ……これは私も予想外でした」
「お前らもか……。マカロン、お前からも何か言って――」
「……ポッ」

 『ポッ』!? 『ポッ』ってなんだよ!? いつものように否定しろよ!?

「お姉ちゃん、攻めますね……!」
「リョウ大神官……。"フェア"ってのはこういうことだったのね……」

 だから聞こえてるんだよ、二人とも! ってか、やっぱりマカロンがこうなった原因はリョウにあるんだな!? ますます分からねえ!? いかん! 作戦会議をするっていうのに、俺の頭がすでにパンクしている!

「……皆さん。ゼロラさんの頭の中が大変なことになっているので、今は作戦会議に集中することにしたいのですが?」
「そ、そうね。私もちょっと破廉恥だったわ」
「お姉ちゃん! 自分は応援します!」
「アタシも……うん、頑張って」

 ガルペラの助け舟のおかげで俺達は作戦会議を始めた。



「むむ~? これは本当に"グレネードランチャー"なのです?」

 まずはマカロンが手に入れた"グレネードランチャー"をガルペラに見てもらった。銃の一種には違いないようだが、ガルペラは気になる点があるようだ。

「そしてこの銃を渡してくれたのは"ドクター・フロスト"という人なのですね?」
「はい。確かにそう名乗ってました」
「なるほどです。それならばこの造りにも納得できるのです」

 ガルペラはフムフムと考えながら語った。

「"グレネードランチャー"は本来、爆弾を発射する銃なのです。でもこれは爆弾の代わりに水を入れて、弾切れになってもすぐ替えが利くように改造されているのです。私も"グレネードランチャー"は話に聞いただけなのですが、こんな改造ができる人物は私の知る限りでドクター・フロストしかいないのです」

 どうやらマカロンが受け取った"グレネードランチャー"は正規品とは大幅に違うらしい。そんなものをマカロンに手渡したドクター・フロストとは何者なんだ?

「ドクター・フロスト……改造……。まさか元王国騎士団二番隊のフロスト隊長ですか?」

 ラルフルはドクター・フロストという人物に聞き覚えがあるようだ。

「恐らく間違いないのです。なぜマカロンさんに渡したのかは分からないですが……」
「そのドクター・フロストってのはどういう奴なんだ?」
「かつてはルクガイア王国騎士団の二番隊でしたが、異常なまでの戦力強化を推し進めたせいで王国に危険視されて追放処分を受けた人です」
「アタシも聞いたことあるわ。魔法とは異なる科学という力に傾向していて、王国内の一級危険人物に指定されている人よね?」
「はい。自分も会ったことはありませんが、何年か前に追放されたと……」

 その元二番隊隊長がマカロンを助けるために接触してきたと?

「気にはなるですが、あの人とは関わらない方がいいのです。思惑も分からないですし、下手に手を出せる相手でもないのです」

 聞けばフロストと言う男は"マッドサイエンティスト"と呼ばれ、今なお人々から恐れられているようだ。思惑が分からない以上、触らぬ神に祟りなしだ。

「では、ドクター・フロストの件は置いておいて、アタシから我々と協定を結んでくれそうな組織を推薦してもいいでしょうか?」

 今度はミリアが発言する。

「聖女ミリア様が推薦したい組織ですか!? どんな大物なのですか!?」
「ガルペラ。まだ大物と決まったわけじゃないだろ」
「いえ……大物には違いありません」

 ミリアは少し言いづらそうに相手の名前を出した。

「推薦したいのは……ギャングレオ盗賊団です」
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