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第8章 気付き始めた思い
第98話 凶鬼、動く
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「ほう。シシバ殿がわしのところに訪れるとは珍しい」
「本物の【隻眼の凶鬼】じゃん!? なんでここにいるじゃん!?」
兄のジフウからゼロラの話を聞いたシシバがまず向かったのは、王都"壁周り"に住むチャン老師の元であった。
「兄貴の行動パターンから考えるに、チャン老師ならゼロラはんのことも知っとると思うてな」
「お主は中々に勘が鋭いのう」
シシバの目的はゼロラがどれだけの実力者かより詳しく知ること。そのためにジフウの関係者であるチャン老師に会いに来たのだった。
「知っとるんやな? 兄貴と互角の実力やと聞いたが、ホンマか?」
「そうじゃろうな。お互いにまだ力の底は見せ合っていないが、互角なのは事実じゃろう」
シシバの顔が不気味に笑い始める。
「ほんなら、俺とゼロラはん。戦ったらどっちが勝つと思う?」
「……ゼロラ殿じゃろうな」
シシバの笑みがますます不気味になる。
「ほんなら……俺の左目が健在やったら、どっちが勝つ?」
「……そうなると、分からぬな」
シシバが最高に不気味な笑顔になる。
「じ、じいちゃん。この人怖いじゃん……」
「安心せい。元々こういう男じゃ」
「余計怖いじゃん……」
チャン老師とジャンの会話はもうシシバの耳には届いていないようで、一人ぶつぶつと考え始める。
「せやったらバールとトンファーぐらいは用意しといてええやろな……」
シシバの頭の中にはゼロラと戦うための計画が練り始められていた。
「おおきにな、チャン老師!」
そう言ってシシバはすぐに飛び出していった。
「あ、会っただけでも分かるじゃん。あの人、普通じゃないじゃん……」
「うむ。あの者を見ていると、若き日のことを思い出す」
チャン老師が物思いに語る。
「わしが強大なモンスターと戦っていた時、その様子を気付かれてもいないのに傍で震えて見ていたウサギの姿を……!」
「要するに俺はあの人の眼中になかったってことじゃん?」
■
「え? センビレッジの酒場のケツモチをおれじゃなくてコゴーダの兄貴が担当するんすか?」
「おや? 頭領が私を向かわせるとは珍しいですね」
ギャングレオ盗賊団のアジトに戻ったシシバは特攻隊長サイバラと参謀長コゴーダに指示を出した。
「せや。ちーっと客をこのアジトに案内しとうてな。交渉事ならコゴーダのほうが適任やろ」
「客? 誰を案内するつもりすか?」
「【零の修羅】、ゼロラはんや」
ゼロラの名前を聞いてサイバラは驚愕する。
「ゼ、ゼロラ!? なんであいつをここに案内するんすか!?」
「現在、ゼロラ殿はガルペラ侯爵と協力して改革活動を行っています。それを踏まえたうえでここへ案内すると?」
シシバはニヤつきながら言葉を返す。
「俺はゼロラはんがどういう人間か、まずはこの目で確かめたいんや。"ギャングレオ流"で出迎えてな~……!」
「そ、それだったらその前線指揮はおれに任せてくだせえ! あいつには借りがあるんす!」
"ギャングレオ流"で出迎えると聞いて、以前ゼロラに負けたサイバラは鼻息を荒くして名乗り出る。
「ええやろ。お前らに負ける程度ならそれまでや。もっとも、お前らが勝てるとも思えへんがな」
「な、何言ってるんすか!? あれから時間も経ってますし、おれだって強くなってるんすよ!」
「時間が経って強くなってるのは向こうも同じでしょうけどね……」
サイバラはやる気を出しているが、シシバは"ゼロラの実力が話に聞く通りなら、必ず自分までたどり着く"と考えていた。
「あ~、楽しみや~……! ないはずの左目が疼いて疼いて仕方ないわ……! キシャシャシャシャ!!」
「完全にスイッチ入ってるっすね、シシバのカシラ……」
「アジトの整備と人員配置も考えませんとね……」
「本物の【隻眼の凶鬼】じゃん!? なんでここにいるじゃん!?」
兄のジフウからゼロラの話を聞いたシシバがまず向かったのは、王都"壁周り"に住むチャン老師の元であった。
「兄貴の行動パターンから考えるに、チャン老師ならゼロラはんのことも知っとると思うてな」
「お主は中々に勘が鋭いのう」
シシバの目的はゼロラがどれだけの実力者かより詳しく知ること。そのためにジフウの関係者であるチャン老師に会いに来たのだった。
「知っとるんやな? 兄貴と互角の実力やと聞いたが、ホンマか?」
「そうじゃろうな。お互いにまだ力の底は見せ合っていないが、互角なのは事実じゃろう」
シシバの顔が不気味に笑い始める。
「ほんなら、俺とゼロラはん。戦ったらどっちが勝つと思う?」
「……ゼロラ殿じゃろうな」
シシバの笑みがますます不気味になる。
「ほんなら……俺の左目が健在やったら、どっちが勝つ?」
「……そうなると、分からぬな」
シシバが最高に不気味な笑顔になる。
「じ、じいちゃん。この人怖いじゃん……」
「安心せい。元々こういう男じゃ」
「余計怖いじゃん……」
チャン老師とジャンの会話はもうシシバの耳には届いていないようで、一人ぶつぶつと考え始める。
「せやったらバールとトンファーぐらいは用意しといてええやろな……」
シシバの頭の中にはゼロラと戦うための計画が練り始められていた。
「おおきにな、チャン老師!」
そう言ってシシバはすぐに飛び出していった。
「あ、会っただけでも分かるじゃん。あの人、普通じゃないじゃん……」
「うむ。あの者を見ていると、若き日のことを思い出す」
チャン老師が物思いに語る。
「わしが強大なモンスターと戦っていた時、その様子を気付かれてもいないのに傍で震えて見ていたウサギの姿を……!」
「要するに俺はあの人の眼中になかったってことじゃん?」
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「え? センビレッジの酒場のケツモチをおれじゃなくてコゴーダの兄貴が担当するんすか?」
「おや? 頭領が私を向かわせるとは珍しいですね」
ギャングレオ盗賊団のアジトに戻ったシシバは特攻隊長サイバラと参謀長コゴーダに指示を出した。
「せや。ちーっと客をこのアジトに案内しとうてな。交渉事ならコゴーダのほうが適任やろ」
「客? 誰を案内するつもりすか?」
「【零の修羅】、ゼロラはんや」
ゼロラの名前を聞いてサイバラは驚愕する。
「ゼ、ゼロラ!? なんであいつをここに案内するんすか!?」
「現在、ゼロラ殿はガルペラ侯爵と協力して改革活動を行っています。それを踏まえたうえでここへ案内すると?」
シシバはニヤつきながら言葉を返す。
「俺はゼロラはんがどういう人間か、まずはこの目で確かめたいんや。"ギャングレオ流"で出迎えてな~……!」
「そ、それだったらその前線指揮はおれに任せてくだせえ! あいつには借りがあるんす!」
"ギャングレオ流"で出迎えると聞いて、以前ゼロラに負けたサイバラは鼻息を荒くして名乗り出る。
「ええやろ。お前らに負ける程度ならそれまでや。もっとも、お前らが勝てるとも思えへんがな」
「な、何言ってるんすか!? あれから時間も経ってますし、おれだって強くなってるんすよ!」
「時間が経って強くなってるのは向こうも同じでしょうけどね……」
サイバラはやる気を出しているが、シシバは"ゼロラの実力が話に聞く通りなら、必ず自分までたどり着く"と考えていた。
「あ~、楽しみや~……! ないはずの左目が疼いて疼いて仕方ないわ……! キシャシャシャシャ!!」
「完全にスイッチ入ってるっすね、シシバのカシラ……」
「アジトの整備と人員配置も考えませんとね……」
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