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第5章 交わり始める思惑
第58話 たまには平穏に
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「ゼロラさんがまた読書してる……。明日の天気は雨かしら?」
「お前つくづく失礼な奴だな」
宿に戻った俺はガルペラから借りた本を読んでいた。
マカロンはそんな俺の姿を不思議そうに眺めていた。
「俺だって本ぐらい読む。荒事ばっかりじゃねえよ」
「……最近のゼロラさんって変わりましたよね。ついこの間までは眉間にしわを寄せて何かにイラついてばかりだったのに」
そんなに変わったか? いや、確かに変わったかもな。
かつては貴族達からやりたくもない汚れ仕事を請け負って、自らの意思で生き方を決めることなどなかった。だが今はガルペラ達に協力して、自らの意思でこの国の膿を晴らす道を選んでいる。前途多難だが、どこか心地よい。
「彼女もできましたもんね」
「ローゼスは彼女じゃないって言ってるだろ。仕事仲間だ」
「フフ。冗談ですよ」
マカロンは冗談を口にしながら、俺が持って帰ってきたパサラダ村のジャガイモを茹で上げて持ってきてくれた。
「できましたよ、茹でジャガイモ。茹でただけですけど」
「十分だ。お前に盛り付けをさせると悲惨なことになる。あの弁当みたいに」
「ひどい! 人が愛情込めて作ったお弁当を悲惨だなんて!」
マカロンはあからさまなウソ泣きをする。
こいつとの付き合いも長いものだ。今じゃすっかりお互いに遠慮することもなくなった。
「うん。うまいな」
「本当においしいですね、このジャガイモ」
マカロンはジャガイモを頬張りながら俺の膝に寝転んできた。
「……今日は妙に甘えるんだな」
「……心配なんですよ。ゼロラさん、聞いた話じゃ危ないことに首を突っ込んでるみたいじゃないですか」
普段からは想像もできない弱々しいマカロンの姿。
俺は読んでいた本を置いてマカロンの頭を撫でてやる。
「安心しろ。俺の強さは知ってるだろ? それに、これまでも十分危ない橋を渡って来たし」
「そういうことじゃなくて……。その……また大事な人がいなくなったりするんじゃないかと……」
マカロンはかつて魔王軍の奴隷として捕らえられていた。
その時に家族とも離れ離れになったのだと聞いていたが、マカロンにとって俺は"大事な人"か。
マカロンにとっての俺は父親のようなものなんだろう。俺もマカロンのことは娘のように思っている。
また"家族"を失うんじゃないかという恐怖がマカロンの身を震わせている。
「安心しろ。俺は何があってもここに帰ってくる。記憶のない俺にとって、帰るべき場所はここなんだ。それに、俺がこれから行うことはこんな俺達の暮らしを守るためだ」
「私達の暮らしを守るため……ですか。ゼロラさんって最初に会ったころから人のために頑張ってくれますよね」
マカロンの顔に少し笑顔が戻る。
「私には弟がいたんです。弟も私を守るために頑張ってくれる、とっても真面目で優しい、私には過ぎた弟でした。まだどこかで生きてると信じているのですが……」
「きっと生きてるさ。この国が良くなったら、探すのを手伝ってやるよ」
マカロンと約束する。俺が今まで記憶もないのに生きてこれたのはマカロンのおかげだ。そんな奴の願いの一つや二つ、叶えてやらないとただの恩知らずだ。
「期待はしないで待っておきますよ。ゼロラさんはどこか抜けてますから」
「お前は素直に感謝できないのか?」
二人笑いあいながら時間は過ぎていく。
気が付けば俺とマカロンはそのまま眠りに落ちていた。
■
「な~んで二人で仲良く寝てるのかね。お前らは……」
翌日、俺とマカロンは宿を訪れたイトーさんによって起こされた。
「こ、これは違うんです! 誤解なんです!」
「へいへい。昨夜はお楽しみでしたね、ってか」
からかうイトーさんにマカロンが顔を真っ赤にして反論する。
イトーさんも人が悪い。俺とマカロンの歳の差じゃ、一緒に寝てたって親子の微笑ましい光景にしかみえないだろうに。
「お前つくづく失礼な奴だな」
宿に戻った俺はガルペラから借りた本を読んでいた。
マカロンはそんな俺の姿を不思議そうに眺めていた。
「俺だって本ぐらい読む。荒事ばっかりじゃねえよ」
「……最近のゼロラさんって変わりましたよね。ついこの間までは眉間にしわを寄せて何かにイラついてばかりだったのに」
そんなに変わったか? いや、確かに変わったかもな。
かつては貴族達からやりたくもない汚れ仕事を請け負って、自らの意思で生き方を決めることなどなかった。だが今はガルペラ達に協力して、自らの意思でこの国の膿を晴らす道を選んでいる。前途多難だが、どこか心地よい。
「彼女もできましたもんね」
「ローゼスは彼女じゃないって言ってるだろ。仕事仲間だ」
「フフ。冗談ですよ」
マカロンは冗談を口にしながら、俺が持って帰ってきたパサラダ村のジャガイモを茹で上げて持ってきてくれた。
「できましたよ、茹でジャガイモ。茹でただけですけど」
「十分だ。お前に盛り付けをさせると悲惨なことになる。あの弁当みたいに」
「ひどい! 人が愛情込めて作ったお弁当を悲惨だなんて!」
マカロンはあからさまなウソ泣きをする。
こいつとの付き合いも長いものだ。今じゃすっかりお互いに遠慮することもなくなった。
「うん。うまいな」
「本当においしいですね、このジャガイモ」
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「……今日は妙に甘えるんだな」
「……心配なんですよ。ゼロラさん、聞いた話じゃ危ないことに首を突っ込んでるみたいじゃないですか」
普段からは想像もできない弱々しいマカロンの姿。
俺は読んでいた本を置いてマカロンの頭を撫でてやる。
「安心しろ。俺の強さは知ってるだろ? それに、これまでも十分危ない橋を渡って来たし」
「そういうことじゃなくて……。その……また大事な人がいなくなったりするんじゃないかと……」
マカロンはかつて魔王軍の奴隷として捕らえられていた。
その時に家族とも離れ離れになったのだと聞いていたが、マカロンにとって俺は"大事な人"か。
マカロンにとっての俺は父親のようなものなんだろう。俺もマカロンのことは娘のように思っている。
また"家族"を失うんじゃないかという恐怖がマカロンの身を震わせている。
「安心しろ。俺は何があってもここに帰ってくる。記憶のない俺にとって、帰るべき場所はここなんだ。それに、俺がこれから行うことはこんな俺達の暮らしを守るためだ」
「私達の暮らしを守るため……ですか。ゼロラさんって最初に会ったころから人のために頑張ってくれますよね」
マカロンの顔に少し笑顔が戻る。
「私には弟がいたんです。弟も私を守るために頑張ってくれる、とっても真面目で優しい、私には過ぎた弟でした。まだどこかで生きてると信じているのですが……」
「きっと生きてるさ。この国が良くなったら、探すのを手伝ってやるよ」
マカロンと約束する。俺が今まで記憶もないのに生きてこれたのはマカロンのおかげだ。そんな奴の願いの一つや二つ、叶えてやらないとただの恩知らずだ。
「期待はしないで待っておきますよ。ゼロラさんはどこか抜けてますから」
「お前は素直に感謝できないのか?」
二人笑いあいながら時間は過ぎていく。
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■
「な~んで二人で仲良く寝てるのかね。お前らは……」
翌日、俺とマカロンは宿を訪れたイトーさんによって起こされた。
「こ、これは違うんです! 誤解なんです!」
「へいへい。昨夜はお楽しみでしたね、ってか」
からかうイトーさんにマカロンが顔を真っ赤にして反論する。
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