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第3章 汚れ仕事からの脱却
第27話 交錯する思惑
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俺とイトーさんはラルフルを置いて街の入り組んだ路地裏へと辿り着いた。
「しっかし、俺も聖女ミリア様には初めて会ったが、思ったより庶民的だったな」
「ああ。だが、ラルフルのことは本気で心配してたみたいだぜ」
イトーさんが聖女様の感想を述べたので、俺も聖女様の人となりについて、思ったことを述べる。
それに聖女様がラルフルにのみ見せたあの表情。仮面の笑顔などではなく、年相応の少女が見せる豊かな表情は相手がラルフルだったからこそ見せたというのもあるだろう。
「随分長い間会ってなかったみてえだが、あの様子なら大丈夫だろう」
「世間的な聖女様のイメージが崩れちまわねえかは心配だがな」
イトーさんが何とも言えない表情で不安を口にした。確かに聖女様のイメージは台無しになっちまうかもしれねえが……。
そんな心配をしていると少し離れた道を通た若者二人が――
「さっきのミリア様、なんかグッときたよな!」
「ああ! 真心からくる真剣な優しさって感じがしてさ!」
――そんな会話をしながら通り過ぎて行った。
「心配ねえみたいだな……」
「聖女様の日頃の人徳の賜物だろうよ」
日々の行いって大事だよな。
「リョウ神官ももうちょっと日頃から真面目にやってたら聖女様の護衛の任に就けたかもしれねえのによ」
「心外だね。ボクは自分を騙して生きるよりも自分に正直に生きていった方が断然いいと思うんだけどね」
「物事には限度があるって話だよ。お前さんはいつも私欲で行動を起こし過ぎだ」
うむ、イトーさんの言う通りだ。まったくお前には何度も言い聞かせてきたんだが――
「……って!? なんでいるんだよ、お前!?」
「聖女ミリア様の護衛の任に就けなかったぐらいで、ボクの思いは止められないのさ!」
「そういうところだぞ、リョウ!」
いつの間にかさりげなく俺達の会話に紛れ込んでいたリョウ神官。なんでこうも毎回おかしなところでこいつの実力を実感する羽目になるんだ……。
「いや~。ミリア様とラルフル君があんな仲だったとはね~。これは妄想が滾るというものだよ。クフフフフ……!」
「もうやだ、この腐女神官」と俺もイトーさんも思った。
「ところで二人とも。大体の事情はボクも理解できたよ。ドーマン男爵とガルペラ侯爵。二つの勢力の見張りをかいくぐってガルペラ侯爵邸に忍び込んで交渉を申し込みたいみたいだね?」
「お前、結構最初の方から話聞いてただろ?」
俺の問い詰めにリョウ神官はシラを切って話を続けた。
「君達がこの路地裏に来たのは正解だったね。そこにマンホールがあるよね? あそこを降りて下水道を上流の方に向かって突き当りで上に上がればガルペラ侯爵邸の庭に出れるよ」
「つまり見張りも撒けるってわけか」
なんだかんだでリョウ神官は俺達に協力してくれるらしい。丁度今は監視の目も追いついてないから早速向かうとするか。
「ありがとよリョウ神官、それにイトーさんも。ここからは俺一人で向かうぜ」
「大丈夫か? 下手したらガルペラ侯爵の部下たちと一戦交えることになるぞ?」
「元々は俺の問題だ。ここまで手伝ってくれただけでも十分だ。それじゃあ、行ってくるぜ」
ガコン!
俺はマンホールを開けて下水道へと降りて行った。
「……イトー殿。マンホールというものは人が素手で簡単に開けられるものだったかな?」
「……いや。ゼロラだからできる芸当だろうよ」
◇◇◇
これでゼロラ殿はガルペラ侯爵邸へと辿り着けるだろう。仮に捕まったとしてもガルペラ侯爵ならそこまで酷いことはしないだろうしね。ゼロラ殿が捕まる姿も想像出来ないけど。
「なあ、リョウ。お前さん、俺達が見張られていたことにも気付いてたんだよな?」
「君達みたいに直感じゃなくて、探知魔法の類を使ってだけどね。精度には自信があるよ」
「だろうな。だったら、俺達が聖女様に会ってた時、"ドーマン男爵と聖女様を見張るまた別の勢力がいた"ことにも気付いてたんだろ?」
おや? イトー殿は思った以上に勘が鋭いようだね。この人も昔何かあったらしいし、人に歴史ありってところだね。
「それだったら心配ないよ。見張られてたのはドーマン男爵の方。ミリア様じゃないよ」
流石にミリア様が狙われてたらボクも動かざるを得ないしね。
「そうか。なら、そいつらが何者かはわかってるのか?」
うんうん。ここまで聞いちゃったらミリア様が無事だとわかっても気になっちゃうよね。
「見張ってたのは、"ギャングレオ盗賊団"さ。おそらくこの後ドーマン男爵を襲撃するつもりだろうね」
「ちょ、ちょっと待て!? 聖女様はこの後ドーマン男爵と一緒の馬車で街を出る予定じゃなかったか!? そうなったら聖女様の身に危険が……!?」
あ~。ギャングレオ盗賊団に詳しくない人だとそういう反応しちゃうよね。
「大丈夫だよ。ギャングレオ盗賊団は"ドーマン男爵しか襲わない"。【隻眼の凶鬼】はそういう人間なんだよ」
「しっかし、俺も聖女ミリア様には初めて会ったが、思ったより庶民的だったな」
「ああ。だが、ラルフルのことは本気で心配してたみたいだぜ」
イトーさんが聖女様の感想を述べたので、俺も聖女様の人となりについて、思ったことを述べる。
それに聖女様がラルフルにのみ見せたあの表情。仮面の笑顔などではなく、年相応の少女が見せる豊かな表情は相手がラルフルだったからこそ見せたというのもあるだろう。
「随分長い間会ってなかったみてえだが、あの様子なら大丈夫だろう」
「世間的な聖女様のイメージが崩れちまわねえかは心配だがな」
イトーさんが何とも言えない表情で不安を口にした。確かに聖女様のイメージは台無しになっちまうかもしれねえが……。
そんな心配をしていると少し離れた道を通た若者二人が――
「さっきのミリア様、なんかグッときたよな!」
「ああ! 真心からくる真剣な優しさって感じがしてさ!」
――そんな会話をしながら通り過ぎて行った。
「心配ねえみたいだな……」
「聖女様の日頃の人徳の賜物だろうよ」
日々の行いって大事だよな。
「リョウ神官ももうちょっと日頃から真面目にやってたら聖女様の護衛の任に就けたかもしれねえのによ」
「心外だね。ボクは自分を騙して生きるよりも自分に正直に生きていった方が断然いいと思うんだけどね」
「物事には限度があるって話だよ。お前さんはいつも私欲で行動を起こし過ぎだ」
うむ、イトーさんの言う通りだ。まったくお前には何度も言い聞かせてきたんだが――
「……って!? なんでいるんだよ、お前!?」
「聖女ミリア様の護衛の任に就けなかったぐらいで、ボクの思いは止められないのさ!」
「そういうところだぞ、リョウ!」
いつの間にかさりげなく俺達の会話に紛れ込んでいたリョウ神官。なんでこうも毎回おかしなところでこいつの実力を実感する羽目になるんだ……。
「いや~。ミリア様とラルフル君があんな仲だったとはね~。これは妄想が滾るというものだよ。クフフフフ……!」
「もうやだ、この腐女神官」と俺もイトーさんも思った。
「ところで二人とも。大体の事情はボクも理解できたよ。ドーマン男爵とガルペラ侯爵。二つの勢力の見張りをかいくぐってガルペラ侯爵邸に忍び込んで交渉を申し込みたいみたいだね?」
「お前、結構最初の方から話聞いてただろ?」
俺の問い詰めにリョウ神官はシラを切って話を続けた。
「君達がこの路地裏に来たのは正解だったね。そこにマンホールがあるよね? あそこを降りて下水道を上流の方に向かって突き当りで上に上がればガルペラ侯爵邸の庭に出れるよ」
「つまり見張りも撒けるってわけか」
なんだかんだでリョウ神官は俺達に協力してくれるらしい。丁度今は監視の目も追いついてないから早速向かうとするか。
「ありがとよリョウ神官、それにイトーさんも。ここからは俺一人で向かうぜ」
「大丈夫か? 下手したらガルペラ侯爵の部下たちと一戦交えることになるぞ?」
「元々は俺の問題だ。ここまで手伝ってくれただけでも十分だ。それじゃあ、行ってくるぜ」
ガコン!
俺はマンホールを開けて下水道へと降りて行った。
「……イトー殿。マンホールというものは人が素手で簡単に開けられるものだったかな?」
「……いや。ゼロラだからできる芸当だろうよ」
◇◇◇
これでゼロラ殿はガルペラ侯爵邸へと辿り着けるだろう。仮に捕まったとしてもガルペラ侯爵ならそこまで酷いことはしないだろうしね。ゼロラ殿が捕まる姿も想像出来ないけど。
「なあ、リョウ。お前さん、俺達が見張られていたことにも気付いてたんだよな?」
「君達みたいに直感じゃなくて、探知魔法の類を使ってだけどね。精度には自信があるよ」
「だろうな。だったら、俺達が聖女様に会ってた時、"ドーマン男爵と聖女様を見張るまた別の勢力がいた"ことにも気付いてたんだろ?」
おや? イトー殿は思った以上に勘が鋭いようだね。この人も昔何かあったらしいし、人に歴史ありってところだね。
「それだったら心配ないよ。見張られてたのはドーマン男爵の方。ミリア様じゃないよ」
流石にミリア様が狙われてたらボクも動かざるを得ないしね。
「そうか。なら、そいつらが何者かはわかってるのか?」
うんうん。ここまで聞いちゃったらミリア様が無事だとわかっても気になっちゃうよね。
「見張ってたのは、"ギャングレオ盗賊団"さ。おそらくこの後ドーマン男爵を襲撃するつもりだろうね」
「ちょ、ちょっと待て!? 聖女様はこの後ドーマン男爵と一緒の馬車で街を出る予定じゃなかったか!? そうなったら聖女様の身に危険が……!?」
あ~。ギャングレオ盗賊団に詳しくない人だとそういう反応しちゃうよね。
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