【完結】初恋は淡雪に溶ける

Ringo

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♡afterstory♡脱ぎ去った鎧

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アンジェリカの涙に衝撃と後悔が襲ったエメットは、すぐさま太腿に這わせていた手を引き抜き、乱れる部屋着を整えた。


「ごめん……泣くほど追い詰めるつもりはなかったんだ…本当にごめん…」


過ぎた快楽から生理的に涙する女性もいると聞くが、今の涙はそうでないと分かる。

壊れ物を扱うように抱き締め、子供をあやすように背中を優しく叩いて落ち着くのを待った。


「……違うの……」


アンジェリカの涙声を聞くのは辛い。

だがそうした責任は自分にあると自戒し、黙って続きを促す。


「嫌な、わけではないの…そうではなくて、」


詰まりながらも必死に伝えようとするアンジェリカの“嫌では無い”という言葉に安堵し、抱擁を緩めて眦に口付け涙を拭った。

こんな時だというのに、瞳を潤ませる姿が美しいと思ってしまう自分の浅慮さに辟易する。


「……エメット……」


首に腕を巻き付け抱き着いたアンジェリカは、震えた声で「嫌わないで」と呟いた。

アンジェリカを嫌うなど天地がひっくり返ろうと有り得ないし、むしろ嫌われたかもしれないと焦りを抱いたのは自分のはず。

エメットは理解が追いつかずに黙り、その真意に気付かないアンジェリカは“呆れられた!?”のかと思い慌てて言葉を続ける。


「違うの!!エメットとの口付けは好きよ。こうして抱き合うのも好き。熱い息遣いも…その…何故かわたくしの体まで火照らせてしまうけれど、決して嫌なわけではないの。本当よ?」


信じて…と縋りついてさえきて、エメットは少々ポカンとしながらも…冷水を浴びて治まったはずの熱がふつふつと再燃していく。


「でもっ…でも……触られて、そのよう、になる女性は…き…気持ち、いいと思ってしまう女性、は……ふしだらだら、だと……はしたないと、そう思う…でしょう…?」


段々と尻すぼみになりながら言い切り、再度「嫌わないで」と締めくくった。

エメットの煩悩は爆発寸前である。

アンジェリカが泣いたのは、エメットに触られて気持ちいいと思ってしまったからで…それを恥じて嫌われると懸念したから。

そんな婚約者を可愛いと…愛おしいと思うことはあれど、嫌うなど有り得ないというのに。


「………エメット……?」


長い沈黙に耐えきれなくなり顔をあげると、視界に映ったのは滾りを取り戻したエメットの瞳。

またもやらかした!?と怯むも、トサッ…と押し倒されてそれどころではなくなった。


「………アンジェを嫌うなんて有り得ない」


分からないなら分からせるまで。

紙一枚分だけ開いていたはずの扉がパタン…と閉められたのを合図に部屋着の裾から手を入れ、あがりそうになったアンジェリカの声を口を塞ぐことで飲み込んだ。






*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜






「んっ、や、ダメ…っ、」


貪るような口付けの合間に抵抗の言葉を述べるものの、好きに体を弄る手を止めようとはしない。

自由に動くはずの手は、覆い被さるエメットの肩に添えられるだけ。

滲む涙はその瞬間に唇で拭われてしまい、アンジェリカに出来るのはただただ羞恥に身を悶えさせて啼くこと。


「………凄い濡れてる……」


そんな台詞を痺れるバリトンで耳元に囁かれて、公爵令嬢として培ってきたものが音を立てて崩れるような気すらした。

だけど嫌じゃない。

崩れ落ちた鎧の中から温かい光が生まれる。


「ねぇアンジェ……気持ちいい…?」

「わかっ、分から、なっ…」


耳朶を食みながら……蜜壷に埋められた指を動かされた感想を問われても答えられない。

本来なら足首まであるはずのワンピースは腰まで捲られ、下着の中で動く指がクチュクチュと淫靡な音色を奏でている。

それが自分の体から生み出されていると思えば、更なる羞恥に襲われ蜜の量が増えてしまう。


「あっ、いや、ダメっ……あっ…!!」


本日何度目かの絶頂に達し、くたりと弛緩するアンジェリカを体を起こして見下ろすエメット。

テラテラと蜜を纏う指を味わうように舐め、驚愕するアンジェリカに微笑んだ。


「エメット…!!」


なんてことを!!と諌めるが煩悩に塗れたエメットが聞き入れるはずもなく、ゆっくりと舌を絡めてアンジェリカの咥内を堪能する。

まるで蜜の味わいを分け与えるように。


「んっ……」


捲られた裾と同様、胸元の布地もずり下げられており、外気に晒されている頂きは固い。

柔らかい膨らみとの違いを楽しむように揉まれ、そちらに気を取られているともう片方の手が再び下へと伸びていく。

そしてまた淫らな音色がエメットの指によって奏でられ、弛緩していたはずの体が震え出した。






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