【完結】国王陛下の加護

Ringo

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国王 ※アルベルト視点

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「今後はシルビアの元に戻る」

「……畏まりました」


微妙な間をあけた返事に胡乱な目を向ければ、人払いをさせてから態とらしい溜め息を吐かれた。


「…言いたいことがあれば言えよ」

「それなら言わせてもらうけど」


いつもの臣下然とした口調を消した様子に、余程溜めているのだと察して唇を引き結ぶ。


「俺は言ったよな?シルビア様に何を言われようと愛妾との務めのあとは戻るべきだと。それをお前はちょっとばかし小言を言われたからと言い訳をして、むしろこれ幸いと言わんばかりに朝まで愛妾の元で過ごし…朝っぱらから盛ってやがる」

「……少しどころじゃない」

「気持ち悪い、近付かないで、触らないで…しまいには大嫌いの嘘つき野郎だっけ?」

「……野郎なんてシルビアは言わない」


それ以外は遠からず…だが。


「そりゃそうだろ。何があっても君だけを愛して守るからって誓った上で結婚したのに、たかが三年で嬉々として他の女を抱いてるんだから」

「それは…仕方ないだろ?」

「多少の余地はある。だけど余計な時間まで愛妾に割くから…要らぬ誤解を生むんだ」

「……王妃は愛されていないってやつか」


元は小国の集まりが故、召し上げられる令嬢も元は王女やそれに連なる立場であった者が多く、対応も慎重にならざるを得なかった。

だからこそ伽の時間と滞在を長く取ったことで、シルビアに飽きたのではと噂が広がり…その事は申し訳なく思っている。


「次の候補は元ハインツ王国の王女だ」

「……はぁぁぁ…もう国王やめたい…」

「それは無理だな」


特殊な加護を持つが故に望まれた国王の立場。その血を求められているのも分かるし、そうすることで広く安定した治世を敷けることも理解している……が!!


「ハインツの王女って……」

「フィオーナ嬢だ」

「……シルビアとケネス連れて逃げようかな」




* * * * * *




気をやって眠りについた女を寝台に残して身支度をするが、久し振りの事に動悸がする。


『他の人を抱いた手で触らないで!!』


初めて愛妾との伽を終えた日、涙を流しながらそう拒絶した姿が忘れられない。

戻る前は湯浴みもしているし、夜着も変えたにも関わらず…女の気配を感じるからと言って、ケネスの部屋へと逃げられた。

強すぎる加護のせいで肉欲は収まらないし、かと言って無理を強いることもしたくない。

それならば、昼夜問わず喜んで受け入れる愛妾の元にいた方が…と思ったのがいけなかった。


「…でも、辛いんだよなぁ……」


チラ…と下を向けば、散々出したと言うのに未だ衰えずに元気いっぱい主張している愚息に溜め息が出てしまう。

このまま朝まで残れば、気をやっていてもお構いなしに何度だって吐き出せるし、目覚めてすぐに再開も出来る。


「…なんだよ、子孫繁栄の加護って。豊穣の加護だけじゃダメなのかよ」


先祖返りで得た強力な豊穣の加護は、俺の子種によって生まれた子供達にも多少の差はあれど受け継がれていき、長く続いた戦争で色々と荒れた土地を甦らせるにはもってこいだ。

だけど同時にもうひとつ…子孫繁栄の加護のせいで、とにかく性欲が収まることを知らない。


「はぁぁ…帰ろ」

「お戻りになりますの?」


夜着のボタンを締め終わったところで後ろから伸びてきた手が腰に巻き付いてきて、不覚にもそれに反応してしまう。


「まだお元気ですのに」


いつの間に起きていたんだと問いたいが、余計な会話をするつもりはない。


「陛下?」


帰りたい……でも滾りまくったままで帰るのもどうなんだろう…そんな事をぐるぐると考えていたら、女の指が夜着のボタンを後ろから器用に外し始めてしまった。


「ほら…こんなに元気」


愛妾になってからそれなりの付き合いのあるこの女は、幾度となく繰り返してきた伽で俺の弱い部分を心得ていて、ただでさえ元気だった愚息はさらにやる気を出し、早く早くと本体を急かす。


「……お前はいつまでたっても孕まぬな」

「きっと、陛下にもっと愛して貰いたいと願う思いが強すぎるのがいけませんのね」

「俺はお前を愛してなどいない」

「分かっております」


的確に攻める手付きに下腹部が疼く。


「……どうせ孕まぬのならあとひと月だ」

「えぇ…あとひと月、愛してくださいませ」


絡み付く腕を払って寝台へと乱暴に組み敷き、つい先程まで繋がっていたせいで解す必要などない隘路に思い切り突き刺した。


「あぁぁぁっ!」

「強く絞めろっ……!」


子を成す目的以外にも伽を行う事は多分にあり、この女はその巧みさ故に何度も指名してきた。

中の具合と相性といったところではシルビアに敵う者はいないが、尽きない性欲を解消する為に都合のいい女は何人かいる。

そして、その何人かのうちのひとりであるこの女は……召し上げられてから既に二年。

それこそ病的に欲が沸き上がってしまう時は数日に渡って籠る時もあり、その時は急ぎの執務に対応しているとシルビアに報告させている。

それもきっと見抜かれているのだろうな。

だけど言えない。

ひとりの女を誓約を無視して囲っていることも、その女を抱きながら…体を繋げながら、本当にある急ぎの書類にサインをしていることも、他の女とはしない入浴を共にしていることも…愛しているからシルビアだけには言えない。

女に愛情など抱いてはいないが、暴力的に襲ってくる肉欲を解消する為には欠かせないだけの存在となっている。

だから知らないでいてほしい。

気付かないでいてほしい。

愛してるのはシルビアだけだから。


「あぁぁっ!もっと!…っ、もっと突いて!」


何度肌を合わせても挿入れた瞬間に締め付ける狭さがあるシルビアとは違うが、本人曰く鍛練の賜物と言う自在な動きと締め付けに愚息は素直に悦びを見せる。


「……っ、く…っ…」

「いいっ、あっ!…っ…激し……っ…あっ、」


熱いものが下腹部を迸る感覚に目眩を起こしそうになりながら、力任せに奥へと突き立ててれば勢いよく精が放たれていく。


「……っ、口を開けろ…っ…」


枕元に忍ばせてある小瓶を取り出して含み、無駄にいやらしく開けられた女の口を塞いで、自分の口内にある液体を流し込んだ。


「んっ……」

「見せろ」


一滴も残さずしっかりと飲み込んだのを確認し、再び律動を開始する。


「あぁ…っ、陛…下……っ…」


都合のいい女。

だからこそ手放せない。

だから……避妊薬を飲ませ続ける。


「……っ、く…っ…、あぁぁ……っ!!」


その後も幾度となく女の中へ吐精し、感覚がなくなるほどに腰を振り続け、やっぱり呪われているんじゃないかと思うほどの欲を吐き出し尽くした頃……シルビアの元に帰ると約束した朝をとうに過ぎていた。





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