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プロローグ
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彼女と初めて出会ったのは俺が5歳の頃。
俺の父は今は軍の第三騎士団の隊長になっているが、彼女の父親とは幼馴染で寄宿学校でも同級生だったそうだ。
昔から気が合い、いつも一緒に連んでいたらしい。だが、彼女の父は訓練中に足に大怪我を負い、騎士への道は諦め文官として務める道を選んだ。元々頭が良かったらしく、以後問題無く移行出来たらしい。そんな旧友に子供が生まれたと知らせてを受けて、わざわざ領地まで訪ねて行った。なぜか俺を携えて。そう遠くは無い。隣の領地なので馬車で3時間ほどの距離だった。
「女の子だそうだ。きっと可愛いんだろうな~」
それは俺への当て付けか?
確かに俺は顔が可愛いくはない。母に言わせると険し い顔らしいし。あんまり喋らないとかブツクサ言われるけど、話す事なんて無いし。まあ、周りよりは落ち着いた子供だとは自分でも思うけど。後、髪と目が赤いのもなんか怖がられる。それは俺の所為じゃない筈なんだけど…
と、言うような事を口に出せれば良いのかも知れないが俺は全部脳内に押しとどめるような奴だった。
領地に着いて父の旧友の屋敷へ向かう。なんだか花が多い。わざわざ植えてるのか?道の両端が青と黄色の花で縁取られていた。花なんかに興味は微塵も無かったが、何と言うか。その時は素直に凄いなって…綺麗だなって思った。
****
「うおーーー!やっぱり可愛いーー!」
父は屋敷に着くなり挨拶もそこそこに赤ん坊を見せろと鼻息荒く詰め掛けていた。何なんだ。
俺は父の旧友に深々と頭を下げ「初めまして。騒がしくしてすいません」と謝っておいた。俺は必要最小限の事しか口に出さないが今は必要だろう。
父の旧友の名はランザード・マハラン・ゴード。
爵位は伯爵だ。優しげなくすんだ金髪に茶色い瞳。なんだろ、優しさの固まりみたいな顔してる。因みにうちは侯爵。まあ、爵位なんて対して意味なんか無い。先祖の誰かが貰ったもんだ。
俺はいくら旧友の子だからってウキウキはしゃいでいる父を何だか残念な人に思いながらその横からベビーベッドを遠くから覗く。顔の周りに大きなぬいぐるみがあって見えない。でも、小さな小さな白い指が見えた。ふーん、赤ん坊はこんなに小さいのか、としばらく手だけじっと見ているとその小さな手が俺に向かって手を伸ばして来る。
「ん?」
にぎにぎワキワキとしている。
起きたのかな?俺はボンヤリそれを眺めていた。
すると次第にその小さな手はプルプルと震え、
次の瞬間
「あーーーーーーーーーーん!!」
と言う大声量の泣き声に変わった。
「うぉ!」
ビックリした!
俺はあまりの声の大きさに怯んだ。こんなに泣き声って大きいんだ。俺も泣いたのかな?
乳母らしき人が近寄ってきて赤ん坊をベッドから持ち上げ胸に抱いてあやす。俺が父を目で見やると父は「ほー」と感心したように目を爛々とさせていた。意味がわからん。
「ダリの時は全く泣かなかったから新鮮だよ。夜鳴き一つしなかったし。しばらくちゃんと生まれたのか疑うほど静かで逆に1人に出来なくて大変だった」
そう言う事か…それは…なんかごめん。やっぱり泣かなかったんだ俺。
しかし、さっきから乳母があやしてるのに泣き止まないな。えっと腹が減ってるとかオムツ替えるとかかな?じゃあ、出て行った方が良いよな。
俺は父のブラウスの袖をクイッと引っ張り子供部屋から出て行こうとドアに足を向けた。
すると益々赤ん坊が泣きじゃくりウゴウゴ手を動かしてる。
「…あのね。多分あの子はリダリオス君に抱っこしてもらいたいんだよ」
窓際に置かれた椅子に座り伯爵がふふふと笑いながらそう言い出した。傍には杖がある。足が悪いのは本当らしい。
「俺?」
なんで?そう言われて初めてその赤ん坊の顔に目をやる。
オレンジのふわふわしたまだ生え揃ってない薄い髪。瞳が赤?ピンク?に近いのかな?その瞳から涙が溢れている。そして、小さな小さな手をパタパタしながら俺に向かって延ばしていた。
「あ」
これは…なんだろう?
言葉に出せない何か。
判らないけど。多分、これから先俺はこの子と関わっていくだろうと、そんな予感がしたんだ。
俺の父は今は軍の第三騎士団の隊長になっているが、彼女の父親とは幼馴染で寄宿学校でも同級生だったそうだ。
昔から気が合い、いつも一緒に連んでいたらしい。だが、彼女の父は訓練中に足に大怪我を負い、騎士への道は諦め文官として務める道を選んだ。元々頭が良かったらしく、以後問題無く移行出来たらしい。そんな旧友に子供が生まれたと知らせてを受けて、わざわざ領地まで訪ねて行った。なぜか俺を携えて。そう遠くは無い。隣の領地なので馬車で3時間ほどの距離だった。
「女の子だそうだ。きっと可愛いんだろうな~」
それは俺への当て付けか?
確かに俺は顔が可愛いくはない。母に言わせると険し い顔らしいし。あんまり喋らないとかブツクサ言われるけど、話す事なんて無いし。まあ、周りよりは落ち着いた子供だとは自分でも思うけど。後、髪と目が赤いのもなんか怖がられる。それは俺の所為じゃない筈なんだけど…
と、言うような事を口に出せれば良いのかも知れないが俺は全部脳内に押しとどめるような奴だった。
領地に着いて父の旧友の屋敷へ向かう。なんだか花が多い。わざわざ植えてるのか?道の両端が青と黄色の花で縁取られていた。花なんかに興味は微塵も無かったが、何と言うか。その時は素直に凄いなって…綺麗だなって思った。
****
「うおーーー!やっぱり可愛いーー!」
父は屋敷に着くなり挨拶もそこそこに赤ん坊を見せろと鼻息荒く詰め掛けていた。何なんだ。
俺は父の旧友に深々と頭を下げ「初めまして。騒がしくしてすいません」と謝っておいた。俺は必要最小限の事しか口に出さないが今は必要だろう。
父の旧友の名はランザード・マハラン・ゴード。
爵位は伯爵だ。優しげなくすんだ金髪に茶色い瞳。なんだろ、優しさの固まりみたいな顔してる。因みにうちは侯爵。まあ、爵位なんて対して意味なんか無い。先祖の誰かが貰ったもんだ。
俺はいくら旧友の子だからってウキウキはしゃいでいる父を何だか残念な人に思いながらその横からベビーベッドを遠くから覗く。顔の周りに大きなぬいぐるみがあって見えない。でも、小さな小さな白い指が見えた。ふーん、赤ん坊はこんなに小さいのか、としばらく手だけじっと見ているとその小さな手が俺に向かって手を伸ばして来る。
「ん?」
にぎにぎワキワキとしている。
起きたのかな?俺はボンヤリそれを眺めていた。
すると次第にその小さな手はプルプルと震え、
次の瞬間
「あーーーーーーーーーーん!!」
と言う大声量の泣き声に変わった。
「うぉ!」
ビックリした!
俺はあまりの声の大きさに怯んだ。こんなに泣き声って大きいんだ。俺も泣いたのかな?
乳母らしき人が近寄ってきて赤ん坊をベッドから持ち上げ胸に抱いてあやす。俺が父を目で見やると父は「ほー」と感心したように目を爛々とさせていた。意味がわからん。
「ダリの時は全く泣かなかったから新鮮だよ。夜鳴き一つしなかったし。しばらくちゃんと生まれたのか疑うほど静かで逆に1人に出来なくて大変だった」
そう言う事か…それは…なんかごめん。やっぱり泣かなかったんだ俺。
しかし、さっきから乳母があやしてるのに泣き止まないな。えっと腹が減ってるとかオムツ替えるとかかな?じゃあ、出て行った方が良いよな。
俺は父のブラウスの袖をクイッと引っ張り子供部屋から出て行こうとドアに足を向けた。
すると益々赤ん坊が泣きじゃくりウゴウゴ手を動かしてる。
「…あのね。多分あの子はリダリオス君に抱っこしてもらいたいんだよ」
窓際に置かれた椅子に座り伯爵がふふふと笑いながらそう言い出した。傍には杖がある。足が悪いのは本当らしい。
「俺?」
なんで?そう言われて初めてその赤ん坊の顔に目をやる。
オレンジのふわふわしたまだ生え揃ってない薄い髪。瞳が赤?ピンク?に近いのかな?その瞳から涙が溢れている。そして、小さな小さな手をパタパタしながら俺に向かって延ばしていた。
「あ」
これは…なんだろう?
言葉に出せない何か。
判らないけど。多分、これから先俺はこの子と関わっていくだろうと、そんな予感がしたんだ。
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