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◇式前30日の記録
35.強くて優しい?
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『.........僕はね、この間の事、謝らないよ。君が好きだから番になりたかった。小さかった頃からそう思ってたから。.........無理矢理しようとした事は反省してるけどね』
『もう!ワタシ怪我したのよ?謝ってよ。.........相変わらず強気だね、シトランは。.........ねぇ、シトラン聞いて良いかな?....貴方は愛した番が先に儚くなったらどうする?』
『.........どうかな.........悲しいだろうけど、其々寿命は違うだろ?同時に儚くなるなんて不可能だ。なら、今を一緒に生きたい。ちゃんと後悔しない様に。我々シラサギもいつかは消えて行く。残せるモノはないのかも知れないけど、魂に愛した想いを閉じ込めて置けばまたいつか逢えるかも知れないし。強く想えば想うほど僕は終わらないと思ってる』
『.........シトラン.........』
『君は違うの?』
『失う事が怖くて.........先の事なんて考えて無かった』
『僕は長い間君を想って来たから。あの人間よりもね.........色々考えた。他のシラサギと番った事もあるけどやっぱり君を忘れる事は出来なかったから。これが「恋」と言うものなんだってちゃんと知ってる』
『..................ワタシ.........テオルドが好きなの。ごめんねシトラン.........ごめんなさい。この想いはワタシの生きる意味よ。きっと身体が失くなっても変わらないわ』
『.........答え.........出てるじゃないか』
『あ.........』
『さあ、宮殿に着いたぞ。それと.........見逃すのは今回だけだ。次に君を見かける機会があれば.........何としてでも君を手に入れる。忘れるなよ?』
『.........うん.........。貴方に会えて良かった。小さかったワタシを大事にしてくれてありがとう。好きになってくれてありがとう。仕方が無いからあの時怪我した事は許してあげるわ。ふふ』
『次は気を付けるよ』
『次はもう無いわよ』
『.........諦めないよ。僕はしつこいからね』
白亜の輝く宮殿を見上げる。そこにはこの世界の全ての母である女神がリリアを待っている。
『さよなら.........強くて....優しいシトラン』
そう言ってリリアは翼を広げ走り出し地面を蹴って輝く宮殿の中へ翼をはためかしながら飛んで入って行った。
シトランは眩しそうに半分瞼を下ろしてそれを見送る。
リリアに仄かな愛を送り続けた大きなシラサギはその想いを再び胸にギュッと押し込めた。
だがそれは一時的に、だ。彼もまたこの天界で特異な存在であった。
『諦めないって、言ってるだろ?』
****
宮殿の中は建物の中とは大きく違い別の空間になっている。風がふわりと吹き、優しい光が羽を照らす。心地よい柔らかな果実の香りと流れる水の清涼な湿気。楽園とはこの様な所なのだろう。その先に居るのは美しい女神。この世界の祖。力の根源。色取り取りの蔦で造られた椅子に静かに腰を下ろしている。
リリアはその手前まで飛んで行き、ゆっくりと羽を数回はためかせ地に脚を着けた。
シン.........とした静寂の中、一歩一歩女神へ近づくリリア。顔は下を向いている。だが、止まる事無く迷い無く脚を動かした。
見上げれば顔の表情が判るくらいの所まで近づいてピタリと止まる。
「いらっしゃい。私の白い娘」
『......ご無沙汰しております....女神様』
「.........聞いた?」
『..................はい』
「そう。ビックリした?」
『.........本当、でしょうか?ワタシは.........』
「本当よ。貴女は私の血を分けた娘よ。貴女の父が魂を。私が身体を造ったわ」
『!! 父!ワタシにも父様が居るのですか!』
「勿論よ。なんてね、本当は私が全部造るって言ったんだけどね。あの人が2人で造りたいって言うから。仕方無く初めての共同作業よ」
『(仕方無く?)どの様な.........お方ですか?ワタシの.........父様は』
「そうねぇ.........昔から嫉妬深くて直ぐに怒るの。かと思えばベタベタして来るし。この世界を創る時も色々口出しして来たし正直ウザいわ」
『うえ!?』
「いつも私を監視してるのよ?まあ、本気で嫌な時は全力で拒否するけど。力だってあんまり変わらないのよ?なのにいつまでも子供扱いするから.........腹が立つわ」
『(愚痴しか言ってない........)』
「.........あ、何よ!来ないでよもう!ふんっ.........来たわよあの人。勝手なんだから!」
『え"?』
『もう!ワタシ怪我したのよ?謝ってよ。.........相変わらず強気だね、シトランは。.........ねぇ、シトラン聞いて良いかな?....貴方は愛した番が先に儚くなったらどうする?』
『.........どうかな.........悲しいだろうけど、其々寿命は違うだろ?同時に儚くなるなんて不可能だ。なら、今を一緒に生きたい。ちゃんと後悔しない様に。我々シラサギもいつかは消えて行く。残せるモノはないのかも知れないけど、魂に愛した想いを閉じ込めて置けばまたいつか逢えるかも知れないし。強く想えば想うほど僕は終わらないと思ってる』
『.........シトラン.........』
『君は違うの?』
『失う事が怖くて.........先の事なんて考えて無かった』
『僕は長い間君を想って来たから。あの人間よりもね.........色々考えた。他のシラサギと番った事もあるけどやっぱり君を忘れる事は出来なかったから。これが「恋」と言うものなんだってちゃんと知ってる』
『..................ワタシ.........テオルドが好きなの。ごめんねシトラン.........ごめんなさい。この想いはワタシの生きる意味よ。きっと身体が失くなっても変わらないわ』
『.........答え.........出てるじゃないか』
『あ.........』
『さあ、宮殿に着いたぞ。それと.........見逃すのは今回だけだ。次に君を見かける機会があれば.........何としてでも君を手に入れる。忘れるなよ?』
『.........うん.........。貴方に会えて良かった。小さかったワタシを大事にしてくれてありがとう。好きになってくれてありがとう。仕方が無いからあの時怪我した事は許してあげるわ。ふふ』
『次は気を付けるよ』
『次はもう無いわよ』
『.........諦めないよ。僕はしつこいからね』
白亜の輝く宮殿を見上げる。そこにはこの世界の全ての母である女神がリリアを待っている。
『さよなら.........強くて....優しいシトラン』
そう言ってリリアは翼を広げ走り出し地面を蹴って輝く宮殿の中へ翼をはためかしながら飛んで入って行った。
シトランは眩しそうに半分瞼を下ろしてそれを見送る。
リリアに仄かな愛を送り続けた大きなシラサギはその想いを再び胸にギュッと押し込めた。
だがそれは一時的に、だ。彼もまたこの天界で特異な存在であった。
『諦めないって、言ってるだろ?』
****
宮殿の中は建物の中とは大きく違い別の空間になっている。風がふわりと吹き、優しい光が羽を照らす。心地よい柔らかな果実の香りと流れる水の清涼な湿気。楽園とはこの様な所なのだろう。その先に居るのは美しい女神。この世界の祖。力の根源。色取り取りの蔦で造られた椅子に静かに腰を下ろしている。
リリアはその手前まで飛んで行き、ゆっくりと羽を数回はためかせ地に脚を着けた。
シン.........とした静寂の中、一歩一歩女神へ近づくリリア。顔は下を向いている。だが、止まる事無く迷い無く脚を動かした。
見上げれば顔の表情が判るくらいの所まで近づいてピタリと止まる。
「いらっしゃい。私の白い娘」
『......ご無沙汰しております....女神様』
「.........聞いた?」
『..................はい』
「そう。ビックリした?」
『.........本当、でしょうか?ワタシは.........』
「本当よ。貴女は私の血を分けた娘よ。貴女の父が魂を。私が身体を造ったわ」
『!! 父!ワタシにも父様が居るのですか!』
「勿論よ。なんてね、本当は私が全部造るって言ったんだけどね。あの人が2人で造りたいって言うから。仕方無く初めての共同作業よ」
『(仕方無く?)どの様な.........お方ですか?ワタシの.........父様は』
「そうねぇ.........昔から嫉妬深くて直ぐに怒るの。かと思えばベタベタして来るし。この世界を創る時も色々口出しして来たし正直ウザいわ」
『うえ!?』
「いつも私を監視してるのよ?まあ、本気で嫌な時は全力で拒否するけど。力だってあんまり変わらないのよ?なのにいつまでも子供扱いするから.........腹が立つわ」
『(愚痴しか言ってない........)』
「.........あ、何よ!来ないでよもう!ふんっ.........来たわよあの人。勝手なんだから!」
『え"?』
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