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◇式前30日の記録
3.テオルド、夫への道⑴
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【結婚式まで 20日前】
「テオルド様。旦那様がお呼びでございます」
公爵付きの侍従がテオルドを執務室に伝言をしに来る。
「俺を?解った。今か?」
「お酒を召し上がりたいそうです」
「.................ふっ。なんだよ。まあ、良いや。風呂の後直ぐ行くと伝えてくれ」
「畏まりました」
テオルドは執務を切り上げ風呂上りの後、公爵の私室に向かった。
****
リリアが人間に姿を変えてから10日。
その間、この度の事件の件で王都を行ったり来たりバタバタしている。本日も帰宅したのは日付が変わる前だ。今は急ぎの書類に目を通していた。本来の仕事は溜まる一方だ。
だが唯の案件では無く国同士が関わるクーデターだ。今後の課題にも成り得ると散々軍やら王やらに呼び出された。軍事会議に毎日の様に参加させられている。
更にリリアを連れて来いと言われるがまだ状態が安定していないとか、体調を崩し易いとか何とか言い訳して拒否しまくっていた。
報告では、ヒールのある靴も真面に履いて歩けないし、常識も今学んでいるとこだ。挨拶は出来てもその他はまだ完璧じゃ無いらしい、と言うのは建前だ。
結婚式を終え、夫婦になるまでは屋敷からは出すつもりは一切無い。一切無い!!
何故結婚を急ぐのかと言う声もチラホラ有るが、そんな事決まっている。
リリアは有り得ない程美しい女だからだ。
女神の姿に似ていると女神本人が言っていたが、納得出来る程だ。シラサギだった頃は水に濡れると人の姿に見えるご褒美付きだった為、風呂に入る度にニヤけが止まらなかった。
10歳程の姿から少しずつ少しずつ成長していく彼女は妖精から精霊。精霊から女神へ。テオルドの心を鷲掴みにして離さなかった。いや、鼻面に人参だ。耐えに耐え抜いて来た。
お陰で他の子女が全く目に入らなかったのだ。彼女に勝てる要素を持った女は一人として居なかった。
適当な遊びが出来るほど余裕も無かった。飼っている訳ではない。鎖を付けていないのだ。常にいつ帰って来なくなるかも判らないリリアに神経が行っていた。
リリアは頭も良い。テオルドの問いに自分で考え、本から得た知識と組み合わせて回答してくる。たまに成る程と思わせられる事もしばしば有った。
更に身体を抱っこしていれば『悪気』を吸い取ってくれるのだ。異能《邪同化》による精神侵食を食い止め心の安定が約束されている。至れり尽くせり無二の存在。リリアの側に居るとテオルドは人間でいられるのだ。
漸く手に入った未来の伴侶を易々と危険に晒す訳が無かった。
リリアには分からない所で警備、護衛、更に罠が張り巡らせてある。そして部隊の1/4が警護の任務に就いていた。
決して大袈裟では無い。実際にどこから漏れたのか白い御使いが人になったと言う噂があると王都に行く度に聞かされる。
この2、3日屋敷に訪問の申し込みが引っ切り無しに来る。姿を見れば今後更に増えるだろう。忍び込もうとする者も、略奪しようと目論む者も現れ出すだろう。正直気が気じゃ無い。常にポケットに入れて持ち運びたいくらいだ。
結婚してしまえばリングライド公爵家の名の元強力な執行力が使えるようになる。貴族の頂点だ。相手が貴族なら何とでもなる。
それまでは考えられる限りの防衛を施したこの屋敷から出す訳には行かないのだ。
「テオルド様。旦那様がお呼びでございます」
公爵付きの侍従がテオルドを執務室に伝言をしに来る。
「俺を?解った。今か?」
「お酒を召し上がりたいそうです」
「.................ふっ。なんだよ。まあ、良いや。風呂の後直ぐ行くと伝えてくれ」
「畏まりました」
テオルドは執務を切り上げ風呂上りの後、公爵の私室に向かった。
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リリアが人間に姿を変えてから10日。
その間、この度の事件の件で王都を行ったり来たりバタバタしている。本日も帰宅したのは日付が変わる前だ。今は急ぎの書類に目を通していた。本来の仕事は溜まる一方だ。
だが唯の案件では無く国同士が関わるクーデターだ。今後の課題にも成り得ると散々軍やら王やらに呼び出された。軍事会議に毎日の様に参加させられている。
更にリリアを連れて来いと言われるがまだ状態が安定していないとか、体調を崩し易いとか何とか言い訳して拒否しまくっていた。
報告では、ヒールのある靴も真面に履いて歩けないし、常識も今学んでいるとこだ。挨拶は出来てもその他はまだ完璧じゃ無いらしい、と言うのは建前だ。
結婚式を終え、夫婦になるまでは屋敷からは出すつもりは一切無い。一切無い!!
何故結婚を急ぐのかと言う声もチラホラ有るが、そんな事決まっている。
リリアは有り得ない程美しい女だからだ。
女神の姿に似ていると女神本人が言っていたが、納得出来る程だ。シラサギだった頃は水に濡れると人の姿に見えるご褒美付きだった為、風呂に入る度にニヤけが止まらなかった。
10歳程の姿から少しずつ少しずつ成長していく彼女は妖精から精霊。精霊から女神へ。テオルドの心を鷲掴みにして離さなかった。いや、鼻面に人参だ。耐えに耐え抜いて来た。
お陰で他の子女が全く目に入らなかったのだ。彼女に勝てる要素を持った女は一人として居なかった。
適当な遊びが出来るほど余裕も無かった。飼っている訳ではない。鎖を付けていないのだ。常にいつ帰って来なくなるかも判らないリリアに神経が行っていた。
リリアは頭も良い。テオルドの問いに自分で考え、本から得た知識と組み合わせて回答してくる。たまに成る程と思わせられる事もしばしば有った。
更に身体を抱っこしていれば『悪気』を吸い取ってくれるのだ。異能《邪同化》による精神侵食を食い止め心の安定が約束されている。至れり尽くせり無二の存在。リリアの側に居るとテオルドは人間でいられるのだ。
漸く手に入った未来の伴侶を易々と危険に晒す訳が無かった。
リリアには分からない所で警備、護衛、更に罠が張り巡らせてある。そして部隊の1/4が警護の任務に就いていた。
決して大袈裟では無い。実際にどこから漏れたのか白い御使いが人になったと言う噂があると王都に行く度に聞かされる。
この2、3日屋敷に訪問の申し込みが引っ切り無しに来る。姿を見れば今後更に増えるだろう。忍び込もうとする者も、略奪しようと目論む者も現れ出すだろう。正直気が気じゃ無い。常にポケットに入れて持ち運びたいくらいだ。
結婚してしまえばリングライド公爵家の名の元強力な執行力が使えるようになる。貴族の頂点だ。相手が貴族なら何とでもなる。
それまでは考えられる限りの防衛を施したこの屋敷から出す訳には行かないのだ。
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