64 / 146
◇本編
64.
しおりを挟む
「...............本当、女神様め!めちゃくちゃ足元見やがって。俺の純粋な「恋心」を選択肢にしやがった」
テオルドはブツブツ悪態を付きながらリリアからコートをゆっくりと剥がした。見慣れているはずなのに指先が震える。彼女はこの10年であまりに美しく育ってしまった。ここ数年本当楽しみで仕方なかった。
そっと頬に触れてみる。柔らかな肌の感触。グッと目の辺りが熱くなる。小さなピンクの唇に指先を当てる。暖かくて柔らかい。
「.........しょうがない。これが俺が選んだ選択肢なんだ。だが後悔はしないさ。これ以外手に入らないんだから」
テオルドはリリアを優しく抱き起こしその人の質量だけで喜びに惚けながらも閨着を着せて行く。柔らかくて暖かくて壊れそうな人の形をした愛しい鳥。
賢く、愛情深く、危険を顧みず俺を守ろうと命を投げ出す行動力と慈悲深さ。10年を掛けて見守り育てた女だ。人生の中でなによりも尊い。
諦め掛けた12歳の時、もう離さないと決めてしまったから。
今もまた失い掛けたが、何処かで必ず帰って来ると信じていた。
だが羽根が消えて行くそれを見た時、胸の中に怒りと悲しみが吹き出しそうになった。全てを壊してやろうかと思うほどに。
リリア。奇跡の俺の鳥。
やっとお前と抱き合える
やっとお前に愛を囁ける
やっとお前を引き留められる
さあ、早く目を覚ませリリア
お前の声を聞かせてくれ
お前の緑の瞳に俺を映してくれ
お前の柔らかい唇で.....名前を呼んでくれ
2人でこの10年を祝おう。
そしてこれからの約束をするんだ。
もう、どこにも行かないでくれ。
俺の腕の中で一生お前は眠るんだ。
俺の半身として.........
************
「参りましょう、ビオルテルダ様。屋根を伝って林へ出ます。この国に私の知り合いが居りますので秘密裏に匿ってもらいましょう」
「.........。」
「どうかされましたか?」
「ねえ、シャリル。無駄よ。貴方には見えないだろうけど私には良く見えるの。あの林の中は兵が一杯居るわ。動かないから待機してるのよ」
「成る程。では警備が少ない場所は.........」
「.........無いわ。凄いわね、あの子。兵を固まらせず前後に配置させてる。突破するには数が多いわね。直ぐ囲まれるわ。ねえ、それよりさっきの見た?樫のあの大木の所で白い女が浮いてたの」
「ええ。あれは何だったのでしょう.........」
「.........あれ、切り札になると思わない?」
「.........人質、ですか?」
「それもあるけど.........あの子の悲しみに歪んだ顔、見れるかも知れないわね。ふふ。先程屋敷の中で騒がしくなっていた二階の左端の客室辺り。あそこに居るのよ。もう少し様子を見ましょうか」
「屋根の上から解りましたか?私は.........」
「沢山の足音と振動がしていたわ。耳を着けてご覧なさい?目で見えなくても見えて来るから」
「.........貴方は凄い」
「勿論よ。私は死なないわ。任務はまだ終わって無いもの。ちゃんとついて来なさいよ?」
「.................お供致します」
テオルドはブツブツ悪態を付きながらリリアからコートをゆっくりと剥がした。見慣れているはずなのに指先が震える。彼女はこの10年であまりに美しく育ってしまった。ここ数年本当楽しみで仕方なかった。
そっと頬に触れてみる。柔らかな肌の感触。グッと目の辺りが熱くなる。小さなピンクの唇に指先を当てる。暖かくて柔らかい。
「.........しょうがない。これが俺が選んだ選択肢なんだ。だが後悔はしないさ。これ以外手に入らないんだから」
テオルドはリリアを優しく抱き起こしその人の質量だけで喜びに惚けながらも閨着を着せて行く。柔らかくて暖かくて壊れそうな人の形をした愛しい鳥。
賢く、愛情深く、危険を顧みず俺を守ろうと命を投げ出す行動力と慈悲深さ。10年を掛けて見守り育てた女だ。人生の中でなによりも尊い。
諦め掛けた12歳の時、もう離さないと決めてしまったから。
今もまた失い掛けたが、何処かで必ず帰って来ると信じていた。
だが羽根が消えて行くそれを見た時、胸の中に怒りと悲しみが吹き出しそうになった。全てを壊してやろうかと思うほどに。
リリア。奇跡の俺の鳥。
やっとお前と抱き合える
やっとお前に愛を囁ける
やっとお前を引き留められる
さあ、早く目を覚ませリリア
お前の声を聞かせてくれ
お前の緑の瞳に俺を映してくれ
お前の柔らかい唇で.....名前を呼んでくれ
2人でこの10年を祝おう。
そしてこれからの約束をするんだ。
もう、どこにも行かないでくれ。
俺の腕の中で一生お前は眠るんだ。
俺の半身として.........
************
「参りましょう、ビオルテルダ様。屋根を伝って林へ出ます。この国に私の知り合いが居りますので秘密裏に匿ってもらいましょう」
「.........。」
「どうかされましたか?」
「ねえ、シャリル。無駄よ。貴方には見えないだろうけど私には良く見えるの。あの林の中は兵が一杯居るわ。動かないから待機してるのよ」
「成る程。では警備が少ない場所は.........」
「.........無いわ。凄いわね、あの子。兵を固まらせず前後に配置させてる。突破するには数が多いわね。直ぐ囲まれるわ。ねえ、それよりさっきの見た?樫のあの大木の所で白い女が浮いてたの」
「ええ。あれは何だったのでしょう.........」
「.........あれ、切り札になると思わない?」
「.........人質、ですか?」
「それもあるけど.........あの子の悲しみに歪んだ顔、見れるかも知れないわね。ふふ。先程屋敷の中で騒がしくなっていた二階の左端の客室辺り。あそこに居るのよ。もう少し様子を見ましょうか」
「屋根の上から解りましたか?私は.........」
「沢山の足音と振動がしていたわ。耳を着けてご覧なさい?目で見えなくても見えて来るから」
「.........貴方は凄い」
「勿論よ。私は死なないわ。任務はまだ終わって無いもの。ちゃんとついて来なさいよ?」
「.................お供致します」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?
あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」
結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。
それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。
不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました)
※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。
※小説家になろうにも掲載しております
私があなたを好きだったころ
豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」
※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる