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◇本編

58.

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『えっと.........でも.........身体が.........』
「うーん。どうしようかな~。そうだ!此処で選択肢決めちゃいなさいよ?御使い鳥か人間か。どちらかの身体をあげるわ」
『え?い、今ですか?あ.........えっと.........でも』
「.................貴方が御使い鳥として彼の側に居られるのは今日までよ」
『!!! .........っ。.........そうなんですね。そうなんだ.........』
「10年ね、私の白い娘。長かった?」
『.........とても短かったです。でも凄く幸せでした。ただ.........一つだけしたかった事が有ります。それだけは出来なかったから.........』
「じゃあ、決まりね?さあ、言ってごらん、私の白い娘。貴方は何を望むの?」



『.........テオルドに.........キスがしたい。頬にキスがしたいのです。彼を傷付けずに少しだけ。最後に青空の瞳を.........もう一度見れたら.........きっとそれだけで満たされます』

「.........」

『女神様...ワタシの選択は............... 」



 ****


「第4公女はまだ見つからないのか?」


 シューマは屋敷のダンスホールの会場で椅子に座りながら報告を聞いていた。既にザエフト侯爵は身柄を拘束されている。夫人と息子は王都に潜伏しているが時間の問題だろう。恐らく内密に処理される。
「は。しかしほぼ敷地内捜索は終わり、出入り口は封鎖しておりますので、残すは建物内部になります」
「内部ね.........。隠し通路には使った形跡が無かったし、部屋も隈なく探している。あれだけ目立つ服装だ。見間違えるはずも無い。いや、プライドを捨てて着替えてるかな?そんなタイプには見えないが」
「一人で行動しているとは限らん。必ず3人体制で捜索を続行しなさい」
「はっ」

 シューマはチラリと自身の右手奥に座る主を見る。
 あれから3時間。

 今、テオルドは黙ってリリアの片翼を膝に置き目を閉じている。
 泣くでも無く憤るでも無く。唯、トーザから受け取ったそれをテオルドはずっと見つめていたが、不意に第4公女の捕縛を命じ、ホールに入って行った。

 リリアはテオルドの楔だ。

 彼女の存在が主であるテオルドの足枷。

 だが、それを失い自由になった今

 テオルドは何を思うのだろう.................

 後、半刻で日が変わる。

 その時

 何かが変わるのだろうか.........

 シューマはグッと手を握り込んだ。
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