愛した人は青空の瞳〜御使いシラサギと3つの選択〜

◇本編

50.

「ゴァ.........ゴァ.........？」

　トーザさん。テオルドは何？何をしているの？なにが起こってるの？主って.........公爵様じゃないの？
　.........騎士団じゃないの？何の為に？誰と戦うの？
　ああ.........ワタシはなんで人間の言葉を話せないの？心配しか出来ないの？悔しいよ。悔しい.........。人間だったなら.........人間.........っ。人間？
　選択肢の3つ目.........



　あ。待って？
　そうか.........
　今までワタシ自分の事ばっかり考えてた。
　女神様の選択肢はテオルドとのお別れの時のものだとばっかり.........

　でも.........違うかも知れない。

　思い出して。女神様は何て言っていた？


《ヤダー！許せない！.........ああ、でも仕方ないか。これもまた選択肢の内ね。.................と、言う訳で貴方次第よ？私の白い娘。良いわね？》


　断片的にしか思い出せないけど.........ワタシ次第って言ってた。


《これから色々起こるからね、その選択肢よ？うーん、そうねー......... 》


　これから色々起こる.........その選択肢。
　あの3つの選択肢は.........そう言い事？

　一つ目は、［このまま下界から天界に戻り唯の御使い鳥として生を全うする］

　二つ目は、［全ての記憶を消して唯の鳥として人間に飼われ続ける］

　三つ目は、［人間に一度だけ姿を変えて彼に想いを伝え、役目を全うし今の生を終える］


　.................ああ
　3つ目だけが違うんだ。そうか。そうだ。

　女神様はワタシを試しているのだ。
　この選択肢はワタシの想いの強さを試してるの？
　.................そうか。なら。ワタシはワタシの意思で動かなければ。




「.........ゲッゲッゲッ」



「御使い様？どうされました？」
　トーザさんが不思議そうな顔をした。

　ふふ。ごめんなさい、トーザさん。

　ワタシ.........




　貴方から逃げます。




　ワタシはグンッと曲げていた脚を延ばし片脚でトーザさんの肩をガシッと掴む。

「え？」

　そのまま重心をその脚に掛けてよじ登りお包みから身体を出し彼の両肩に脚を乗せた。

「御使い様！危険です！もう直ぐ門から出ますからお戻りください！」
　慌てるトーザさん。でも、ごめんなさい。

　ワタシは羽をバサリと広げて彼の肩を脚で蹴った。
　トーザさんの手がワタシの羽の先を掴もうとする。スカッと目的を失った手が空を切る。寸でで捕まえられなかった。

　そのままワタシは羽ばたき上昇して護衛騎士さん達から離れ、あの昼間にとまった樫の木を目指す。

　トーザさん達の叫び声が聞こえた。
　でも.........戻らない。



　《貴方が生きる意味、よく考えて、そして答えを出しなさい。私の可愛い白い娘。貴方の愛し方.........私に教えて？》