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◇本編

49.

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 テオルドは咄嗟にグリップを持つ手に力を入れ上へ向かって押し上げた。長剣のガード部分にレイピアの刃先が絡まり弾かれる。
 ギャイン.........と響く音がしてビオルテルダは後ろに飛び退き間合いを取った。

「姑息な真似すんな。いや、お前にはお似合いか」
「ふふ。良い反応ね。咄嗟に押し上げるなんて。これで大体隙が出来て皆んなそのまま斬られるのよ?貴方やっぱり素敵ね?」
「俺はセンスあるんだよ。なんでも熟せる。しかも更に強くなる為に努力を惜しまなかった。負けねーよ」
「自信家ね。戦闘においていつでも不運は付き物よ?そんな事言ってる人は大体皆んな死んだわ」
「努力したって言ってんだろ。そいつらは単純に弱かっただけだ。一緒にすんな」

 その時、ゴーンゴーンと響く鐘の音が響く。8の刻だ

「...........................さあ、覚悟決めて貰おうか。ビオルテルダ第4公女。カンザリーの祖国でお前が何て呼ばれてるか聞いた時は本当、笑っちまったよ。まあ、10も歳が上なのに俺に婚姻話持って来る段階で大笑いなんだがな」
「あら?女はこれくらいの年齢が一番美味しいのよ?酸いも甘いも知り尽くしてるわ。気持ち良い事も沢山ね?」
「ふん。行為しながら首切り落とすんだろ?イカレてるよ。お前は狂人だ」
「死ぬと判った瞬間の男の顔が堪らないのよ。ふふ」

 テオルドはスウ....っと長剣を目の前に構えながら言った。

「《首切りバーサーカー》は今日で人生を引退する。快楽で殺人を繰り返して来たお前は俺が退治しとくわ。カンザリーには帰らせてやるよ。首だけな。176番目はお前の首を並べてもらえ」
「出来るかしら?」
「ああ」

 そう言うが早いかテオルドは長剣を振り上げた。切先を見送るビオルテルダ。空を切った剣はグルリと回り再びビオルテルダの脚を襲う。
 テオルドは身体を回転させ長剣を持つ右手を下に向かって振り下ろした。

 バスッと言う音と共にビオルテルダの左太腿に衝撃が走る。

「ーーっ!」

 予期せぬ軌道からの攻撃に切先が切り裂く。白い太腿から血が吹き出した。

「女は鎖帷子なんか着込めないからな。ドレスが仇になる」
「関係無いわ。首を切れば良いだけよ」
「切れればな」

 休む事なく長剣を操りながらテオルドはビオルテルダを追い詰めて行く。
 テオルドの剣技は振った瞬間に相手を切るかまいたちのようだ。無駄が無く大振りはしない。ビオルテルダの白亜のレイピア程では無いが、テオルドの剣は細身だった。スピードを重視しているのだろう。ビオルテルダと同じスタイルだ。

 バシュッと風が鳴る。今度は右の腰辺りがカッと熱くなる。

「グゥ.........ッ!」ビオルテルダは一瞬右側によろめいた。



「まだまだ」
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