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◇本編

29.

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 暫くしてディープグリーンのジュストコールを来た紺色の髪の青年が樫の木まで走って来た。

「リリア!」
「ゴアー!」テオルドー!
「すまん。大丈夫か?」
「ゴア~ゴァーー」お酒ちょっと掛かっちゃった
「ああ。新興男爵家の次男坊だ。後であの家ごと絞めとく。降りて来れるか?拭いてやるよ」
「ゴァーー?」いや、絞めないで。テオルドは大丈夫なの?
「もう良い。近くに居た美形の軽そうな金髪男に押し付けて来た」
「ゴアーー。ゴァ」あー確かに何かあそこに留まってるね。黒いのが。
「今の内に離れよう。来いよリリア」
「ゴア~!」は~い!

 ふわりと枝から脚を離し、翼に風を含ませてゆっくりと降りて行く。パタパタと調整しながらクルリと2度旋回して彼の前に降り立つ。微笑む彼。

 テオルドはワタシを抱え上げそのまま会場から離れて歩いて行く。庭は公爵家の庭園ほど広くは無いが隣に鬱蒼とした林が広がっていた。どこまでが敷地なのかは分からない。先の方に少しくたびれた小さめのベンチがあったのでそこに座る事にした。護衛の騎士さん達が走って来る。

「ゴァーーゴアー?」抜け出て来て大丈夫なの?
「ん?ああ。赤い女か?ありゃマジで何か仕込もうとしてるな。給仕はしきりに何か飲ませようと必死だし、話が有るって早速部屋に連れ込まれそうになった。やんわり断ったけど」
ハンカチで羽根を拭くテオルド。

「ゴ?ゴア?ゴアー?」え?もう?早く無い?
「.........もしかしたら俺を拘束するのが目的なのかも知れんな」
「ゴア?ゴァーーゴァ」なんで?あ、うーん、でも何か違和感は感じるね
「.........ふふ。リリアは偉いな。ヒントを出すとちゃんと考えて答えを考えようとする。大事だよ」
「ゴァーーゴアーーゴァ?」どれだけ本読んで来てると思ってるの?心理学の研究書は割と面白かったよ?
「へぇ?例えば?」
「ゴァ.........ゴアーーゴァゴァーーゴアー?」例えば.........赤を好んで身につける人の心理。「攻撃的」「情熱的」「外交的」「行動的」後「目立ちたがり」?

「ふふ。ピッタリだよ。追加で「自信過剰」もおまけしとくよ。似合ってると思い込んでる」
「ゴア。ゴァゴァ。ゴアーーゴァ」でもね。あの目は違うね。まあ、黒いモヤモヤのもあるんだけど。だから隠してるんだと思うよ
「..................リリア」
「ゴア.........ゴァーゴアーー。ゴァ。」お腹の中を.........知られないように上手く着飾ってる。でも狂気の中にでも意志の有る目だよ。ワタシ目は良いの。きっと何か他に目的が有るんだね



「......ふ.............っ.......ダメだってリリア。明日まで待ってくれ」
「ゴア?」何を? 
キョトンとして首を傾げる。

 ニヤニヤする口元に反して彼の目はいつの間にか優しげだ。いや、少し色香が滲んでいる。



 .................なんでそんな顔してるの?


「俺は頭が良い思慮深い女好きなんだよ。ふふふっ」

 そう言って彼はワタシの頭をワシワシ撫でた。
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