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◇本編

19.

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 返事はその時で良いと言われたので、また3日後帰ると伝えて帰路につこうとした。

 あ、そう言えばシトランにコロニーに寄れと言われてたんだ。ボンヤリとする頭で神樹の方に飛ぶ。
 ワタシが産まれた神樹はとっても大きい。白い幹に輝く大きな葉っぱ。深い影と光りが美しい。下界で見るどんな光景より壮大な風景がそこにあった。

『久しぶりに見た。神樹はやっぱり綺麗だな~』

 スイッと一つの枝に脚を掛ける。バタバタと体勢を整えて羽を閉じた。
 ここには沢山のシラサギ達が巣を作っている。でも餌は必要ない。雛達は神樹の朝露だけで身体を大きくしていくのだ。
 親鳥達は御使いの役目が有る。だから空いているコロニーの中の誰かが面倒を見るのだ。

 あ!来たは良いけどワタシ、シトランの巣知らないや。上かな?呼んでみようか。でも番じゃ無いのにこんな皆んな居る処で.........恥ずかしいな.........。
 暫くキョロキョロしてから枝から枝に飛び移りながら探す。わかんない.........もう、良いか。


「ゴアーーーーーーー!」シトランー!来たよー!


 すると一斉にワタシの方を皆んなが見る。わーーー!やめときゃ良かったぁ!

 そしてやはり上の方からバサリと羽ばたく音がしてヒュッとワタシの前を横切って行く。良かった、居たわ。旋回して再び此方に向かって来た。ワタシの停まる枝にフワリと舞い立つ。


 シトランはワタシと同じくらいに生まれたの。ワタシには兄弟姉妹が沢山いる。でもワタシだけ身体が小さくていつも置いてけ堀で、あの日も飛ぶ練習を皆んなでしていたのに気がついたら周りに誰も居なかった。やっぱり置いて行かれたの。
 それで行っては行けない下界への道にワタシだけ誤って飛び出てしまったのだ。


 シトランは昔から同じコロニーの中で一番身体が大きくて強い。お兄さん的な存在だった。ワタシの姉妹は皆んなシトランと番になりたがってた。



『ちゃんと忘れずに来たな』
『.........うん。シトラン.........用事何?』
『..................僕はそんなに魅力が無いのか?』ふふと笑う。
『え?なんで?シトランは一番身体が大きいし強いでしょ?それに意地悪しないし。皆んなシトランが好きよ?』
『そう言う意味じゃ無い』
『あっ!........あのでも.........今季も.........ワタシは.........』
『取り敢えず僕の巣に来い』

 そう言ってシトランはヒョイヒョイと樹の枝を飛び移って行った。シトランの巣は一番上に作られていた。
 ワタシは黙って後に続く。
 何か.........怒ってない、よね?

 巣に辿り着いた彼はゆっくり顔を上げワタシに言った。


『僕は既に何度も繁殖した。だがダンスは一度だって誰かの為に踊った事は無い。僕は.........今から君の為に踊りたい。.........ずっと君と番になりたかったんだよ。小さなリリア』
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