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◇本編

11.

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 廊下に出て一緒に応接室に向かう。

 ワタシは10年近くこの屋敷に居るからもう知らない部屋は無い。テオルドの私室、執務室、公爵様のお部屋に奥様の私室。執事室とかサロンや洗濯小屋とか侍女さん達の談話室。厨房や裏庭の道具小屋。騎士様達の宿舎や庭園の東屋も。縄張りの見回りみたいにウロウロウロウロしているの。何故かって?皆んなの顔を見に行く為よ。だって、家族みたいなものでしょ?
 後、テオルドにも顔見せると皆んな安心するから、って言われてるし。お屋敷はとっても広くて、会いに行かないと会わない日があるから。寂しいでしょ?

 でも邪魔はダメだから忙しいそうなら暫く様子見てまた移動する。ワタシの朝のルーティンよ。まあ、挨拶よね。皆んなちゃんと挨拶を返してくれるよ。だからこのお屋敷で知らない人は居ないの。



 ああ。怖いな。
 でもテオルドが居るから大丈夫。彼の横をチャッチャッと爪を鳴らして歩く。階段からはふわっと羽を広げて下まで降りたった。

「リリア。ズルイ」
「ゴアーーー」階段降りるの苦手なんだもん。
「ふふ。そうだったな」


 応接室に着き、前に控えていたシューマさんが扉をノックした。
「テオルド様がいらっしゃいました。」

 すると中の侍従が何か使いの人に伝える声がして中から扉が開けられた。

 ガチャッと音がしていつもの侍従さんが恭しく礼をする。
 テオルドは歩く速度を落とさず部屋に入って行った。
 ワタシも後に付いて部屋の中を覗く。
 正直.........この人も怖い。何だか解らないけど。
 そこにいたテオルドに挨拶をしている、歳は30くらいの全身焦茶色の金髪の美形さんはにこやかなんだけど時折探る目をする。
 ワタシだけかな?その度にヒヤッとした空気が彼から発せられる気がするの。


「.........ゴア.........」後ろに居よう。

 取り敢えず扉から入ってすぐの所に立っている侍従さんの側に寄ろうとするとテオルドが手招きした。

「おいで、リリア。私の隣に」
「ゴ.........ゴァ.........」うぇぇ.........もう.........
「ああ、噂の御使い様ですか?初めて見ました。なんと美しい!全身真っ白だ!いや、光っていますね!」
「ええ。女神様から許可を頂いた私だけの御使い様なんですよ。素晴らしい羽根の艶でしょう?可愛いし、頭も良い。大人しく御行儀も良くて愛嬌もある。屋敷の皆が彼女を大事にしているのです」

 そう言いながらワタシの頭を撫でるテオルド。へえ?そんな風に思ってたのかな?

「ゴァーゴァッ」でもちょっと褒めすぎね。

「ふふ。嘘じゃないよ、リリア。いつもそう思ってるさ」
「ゴアーー?」本題は?
「ああ、そうだな。さて、では、私に何かご用ですか?シャリル卿?」
「まるでお話しているようですね。ふふ。それに卿だなんて。唯のシャリルですよテオルド様。早速なのですがこちらの招待状をお受け取り下さい」
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