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22.レジンの消された記憶

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「ん.................あ.........?ああ.........そうか。爆破が起こって............頭揺らされたか」

 ボンヤリと飛行艇の天井を見る。やっぱり無事だった。生きてる。いや、死ぬつもりは更々無かったが。

 そして.........答えが出た。
 これは完全な【芝居の中】なのだ。

 はあぁ~~と息を吐く。

(ダヤン~会議ばっかで身体鈍ってる俺に何させてくれてんだよ。マジで死ぬわ。.........いやいや、死んでる場合じゃ無い!シーラ!どうなった!)

 ガバッと上半身を起こす。どこも痛くは無い。身体半分瓦礫に埋まっていたが無事だ。だが、魔剣が無い!辺りを探すがやはり無い。『飛行の術』を担っていた魔石を破壊した。つまりこの船は落ちるだけ。外に出なければ行けないが、飛行艇の中ではまだ戦闘が行われていた。複数の魔術師とバドワージウの精鋭達が戦っている。
 長年手にしていた魔剣だ。既に繋がりが出来ている。

(.........近くには.........無い。持って行かれた?)

 ガラガラと身体に乗る壊れた魔石を退かす。硬い。石以上だ。本来であれば割れたりするような物では無いのだ。唯の剣では切れたり壊せたり出来はしない。

 .........胸が疼いた。


(この世界は摩訶不思議だ。だが、そこに俺は生きてる。仕方ない。いや。........良かった)

「この.................でな」

 レジンは先が尖った鋭利な魔石をその中から何本か選び腰のベルトに挟み込む。

「ふふ.........みたいだな。さあ、行くか」


 レジンはフッと気配を消す。抜き足で歩いて最後部のデッキを目指す。
 飛行艇はゴゴゴゴ.........と音を立てながら浮き上がった空から崖下へゆっくりと落ちて行く。

「芝居の最後はどうするつもりだ?ダヤン。お前の目的は蟻の巣を叩く切っ掛け作りか?馬鹿野郎。シーラまで巻き込みやがって。何かあったら許さんぞ全く.................ふふ。なんてな。こんなセリフはどうだ?」

 レジンはデッキまで辿り着き、梯子に手を掛ける。

(あ、そうだ)

「おーい。お前ら、そろそろ落ちるぞー。船から撤収ー」

 レジンは動力室の中に一言掛けた。

「レジン王ー!」

 アシュケや護衛が走り寄って来る。

「すまん、ちょっと気を失ってた。シーラは?」
「カーミランとモーリシャスが追っています。恐らく船からは降りているでしょう。我々は貴方を探していたのです」
「あーーごめん。じゃあ、兎に角ダヤンが居ないから他の魔術師に運んでもらってくれ。人数多いけど崖上のとこまでなら行けるだろ。飛行の術が掛かった魔石一杯あるしな。あれ使わせろ」
「は。では、撤退致します。もうすぐ制圧出来ますので。レジン王も.........」
「ああ、いや、俺はちょっと上行く。直ぐに戻るよ。今言った事優先してくれ。頼むなアシュケ。」

「レジン王.........」

「大丈夫」



 レジンは再び梯子を登って行く。上り切りスタスタ屋根を歩いてど真ん中にピタリと立ち止まった。





「.................おい。お前だったんだな?俺をに呼んだの」

 コツッと靴の音が一つした。レジンの後ろに現れたそれは漆黒のローブを着た長身の男。

「.........なんだよ。お前.........いつの間に神になったの?.........最初から?全て嘘か?全部.....芝居だったのか?今までの事全部.........全部嘘.........そうなのかっ!」
「芝居か.................。言い得て妙だな。ふふ。爆発の衝撃で戻ったのか?お前はいつも考え過ぎてて....小さな事から答えを見つける。.....扱い難いな。流石に変わった魂だよ」

 レジンは後ろを向く事無く、ただ飛行艇が落ちて行く先を見つめる。

「な、んで.........こんな。理由は?」
「無いよ。たまたま見つけたのさ。「番」の魂を転生させる際、変わった魂が流れの中に居たんだ。それがお前。違う次元から紛れ込んだんだろう事は分かっていた。ふふ。お前は.........綺麗な光を放っていたよ。優しくて。でも少し疲れていたな」
「.........」

「レジン。必要ない。お前はこの世界で生きる一つの命になったのだ。その記憶は必要無いんだ。さあ........シーラが待ってるぞ?」

 背後から大きな手がゆっくりと伸びてレジンの両眼を覆い、トンッと後頭部に男の肩が当てられる。

「泣くなよ、レジン。大丈夫だよ。お前が気に入ったから側に置いた。それだけだから。まあ、出来た良い男が他に居なかったからお前を導いたが、他にはもう俺からの役割は無いよ。........少し無理させ過ぎたかな?ふふ。折角消したのに前の記憶が戻るとはな。お前は頭が良過ぎる。だからか感情が置いてけぼりになって後から爆発する。困った奴だ」

「...ぅ......ダ...........っ...... 」

 男に覆われた指の隙間から涙が流れ落ちる。



「さあ、芝居の続きに戻ろうか。必要無い事は忘れろ。.................全部が嘘じゃ無いさレジン。例え創られた世界でも.....この生はお前のモノだ。俺達が過ごして来た年月も。そしてお前は俺の友だよ。大事な.........な」




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