人間三原則

こーぷ

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第2章 ヒューマンバトル

64話 カミーユ

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 スクエとノラが家を出る。

「スクエ、本当にそいつは大丈夫なんだろうな?」
「強さとか分からないけど、取り敢えず今は何でも試すしかないだろ?」
「これは、しっかりと判断しないとな」

 ノラの言葉を聞き、まるで親が授業参観に来る様な感じがして、気恥ずかしくなる。

──べ、別に付いて来なくていんだけどな……

 それから、二人はスクエが昨日、カミーユに出会った場所に向かった。

「えらい、汚い場所だな……」
「スラム街だから、我慢してくれ」
「だがな……」

 汚い事が気になるのか、ノラはスラム街に入ってから仕切りに周りを見ている。

 すると、何やら周りが少しだけ騒ついている。

「ん? なんだか、見られている気がするな?」
「……そりゃ、人間しか居ない場所にリプレスが来たら、そうなるだろ……」

 二人が周りを見回すと、かなりの人間がノラに注目し、そして近づくと次々と膝を地面に付く。

「な、なんだ?」

 少し焦るノラ。

「スクエ、これはどう言う事だ?」
「この世界に来たばかりの俺に聞くなよ……」

──俺が居た時と全く同じだな。

「恐らく、ノラに目を付けられたく無いからだな」
「どう言う事だ?」

 スクエは以前、ロメイとグロックから逃げて来た時の事を伝える。

「わ、私はそんな事するわけ無いだろう!」

 スクエに聞いた事に大声で反論するノラだが、その声に近くの人間はビクついた。

「も、申し訳ない……」

 自身が周りを脅かせてしまった事に気づき、一度謝りノラはその場を早足で移動した。

「スクエ、早く、そのカミなんたらの所に連れて行け」
「カミーユだよ……」

 そして二人は集合場所に到着すると、既にカミーユが到着していた。

「カミーユ、待たせて悪いな」
「いや、構わない──そちらの方は?」

 スクエの少し後ろにいるノラに視線を向ける。

「俺の主人のノラだ」
「そうだったのか」

 スクエの説明を聞き、カミーユはノラの前に移動して挨拶をする。

「この度は、ノラ様の奴隷であるスクエに救えって頂きました。誠にありがとうございます」

 これが人間三原則の力なのか、恭しくノラに挨拶をする。

「ふむ。私のスクエが君の命を助けたのならば、私も主人として誇らしい──それで君はスクエに剣を教えると?」
「はい」
「どれくらいの腕か見せて貰っても?」

 ノラの言葉にカミーユは一度頷き、二人から距離を取った。

 そして、腰に指していた木刀を取り出し素振りと言うのか、型の様なものを始めた。

「おー……すげぇ……」

 スクエはカミーユの型を見て素直に感心する。

「……」

 そして、ノラはジックリとその様子を見る。

 しばらくすると、一通りの型が終わったのか木刀をしまって、目の前に戻って来る。

「ふむ。随分と綺麗な素振りだが、君は戦った事があるのか?」
「はい──このスラム街で何度か戦いました」
「結果は?」
「負けた事はありません」

 カミーユの言葉に一度頷く。

「ハッキリ言おう。確かに君にスクエが教われば強くなるだろう──しかし、ヒューマンバトルは試合と言うよりかは、勝つか死ぬかの様な意味合いが大きい」

 ノラの言葉にスクエは唾を飲み込む。

「そんな、試合で君の様な綺麗な型は役に立つのか?」

 スクエの事を思っての質問にカミーユは少し考え込み口を開く。

「分かりません……ですが、今以上強くなるなら、やって損は無いと思うのですが?」

 カミーユは少し戸惑う様にリプレスであるノラに応える。

「スクエはどうしたい? 今、言ったがカミーユの型は余りにも綺麗過ぎる。もしアレだったら他の手を考えるが?」
「いや、俺はカミーユに剣を教えて貰うよ──すげぇ、カッコ良かったし!」

 目を輝かせて答えるスクエに、ノラは表情を緩める。

「ふふ、分かった」

 その後にカミーユに話し掛ける。

「問い詰める様な話し方をして済まなかったな──型を見ただけで、実力については知らないのに勝手な判断をしてしまった」
「いえ、スクエの事を大事にしている事が分かりましたので、気にしないで下さい」
「そうか」

 その後三人は、場所を移動して日が暮れるまで剣の稽古を行った。

「ふぅ……疲れたぜ……でも、いいもんだな」
「スクエは、なかなか剣の才能がありそうだな」
「本当か!?」
「あぁ、覚えが早い」
「へへ、やったぜ!」

 カミーユの言葉に嬉しかったのか、スクエは笑顔で喜ぶ。

「ふふ、スクエよ、今日はそろそろ帰るか」
「おう!」

 二人はカミーユにお礼を言って別れた。

 そんな二人の後ろ姿を見てカミーユは口元を緩めた。

「あんな、リプレスとの関係を持つ人間がいるんだな……」

 この世界に住む、殆どの人間はリプレスに良い思いを持っていないだろう。

「ふぅ……ご飯の調達でも行くか」

 普段より、多く動いた為、カミーユはご飯を調達する為、スラム街から出て、リプレス達が住む場所に移動する。

「何か良いのが合ってくれ……」

 何か食べ物が無いかゴミ箱を漁っていると、後ろから怒鳴り声が聞こえた。

「テメェ、人間! 俺の家のゴミ箱漁っているんじゃねぇーよ!」

 怒りの形相を浮かべたリプレスは素早い動きでカミーユの首を片手で掴み、持ち上げた。

「ヴッ……」

 物凄い力で首を絞められている為、手を振り払う事が出来ない上に相手がリプレスの為、攻撃する事も出来ない……

「お前はここで死ぬんだよ! 盗みを働いたんだから、文句は言えねぇーよな?」

 腹の底から声を絞り上げる様に、ドスの効いた声に身体が強張るのを感じるカミーユ。

 段々と視界がぼやけていくが、横を向くと他のリプレスが見え、助けを求めるべく、手を伸ばす……

「だ、だすげでくだざい……」

 そんな人間を見てリプレスは哀れに思ったのか、カミーユを抑えているリプレスに声を掛けた。

「そ、その人間を離してやってくれないか?」

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