人間三原則

こーぷ

文字の大きさ
上 下
31 / 67
第1章 ヒーロー見参

30話 希望の光

しおりを挟む
 ロメイとウーヴェが来た日の次の日、スクエは、どうすればこの状況を打破出来るか考える。

「六人のリプレス……」

 スクエを追っているのは現在、ロメイとウーヴェ、そしてウーヴェの部下の合わせて六人だ。

「グロックみたいに倒すのは無理……そうなると、また何かを考えないとな……」

 取り敢えず、スクラップ場に何か、良い物が無いか探す為に歩き回るスクエ。

「今日はかなり奥まで行ってみるか」

 一応、一通りはスクラップ場を回ったスクエであったが、じっくり見た訳では無い様で、改めて見て回っている。

「身体能力では絶対勝てない──だけど、結局は物理的に倒すしか方法が無いしな……」

 ここが以前居たスクエの世界であれば銃などと言う武器があるが──結局はスクエ個人で手に入られる様な物では無かっただろう。

「何も良い案が思いつかねぇ……」

 周りを見てもジャンク品の数々があるだけで、スクエの知識ではとてもじゃ無いが有効活用する事は出来ない。

「良さげな罠になりそうな山もねぇーな……」

 ジャンク品の山自体は数え切れない程あるが、グロックを倒した様なローラーみたいに重量感がある物が上に積み上げられている山は無い様だ。

 そして、流石に歩き疲れたスクエは日陰になっている場所に座り込む。

「どうにかして、打開策を見つけないと……」

 自前で作った水筒を取り出し、残り少ない水を飲み干す。

 果たして打開策なんてものが有るのか疑問に思ってしまう。

「ここに居てもしょうがないし、探すか……」

 再び、正解の無い探し物を見つける為立ち上がろうとすると、やはり昨日の疲れが残っていたのか、バランスを崩してしまうスクエ。

「──おっと……」

 咄嗟に近くの物にに手を添えて自身の身体を支える。

「やべぇ……」

 どうやら、身体を支えた様と手を添えた場所はジャンク品の山だったらしく、山が崩れる。

「──ッひぃ!」

 素早く移動して崩壊する山から離れたスクエ。

「あぶね……油断していると、俺までグロックみたいになるな……」

 大きな音を立てて崩れた山を見たスクエだったが、崩れて来た山の頂上から最後に何かが転がって来た。

 それを見たスクエは身体が固まる。

「──ッ?!」

 一体どうしたのだろうか。

 その転がって来たのは、このスクラップ場からしたら、ごく当たり前にある物であったがスクエ個人に取っては、タダのジャンク部品では無かった……

「……ノラ?」

 そう、ジャンクの山から転がって来たのはノラの頭であった。
 その頭はグロックとロメイのせいでボコボコにされ顔の半分がベコベコに凹んでいた。

「アイツらにやられたんだよな……」

 頭部だけになったノラをそっと拾い上げるスクエ。

「ノラを壊した犯人の一人は倒したぜ……」

 聞こえる筈が無いがスクエはノラに話しかける。

「あと一人、居るけど──はは、流石に倒せそうに無いな……」

 ロメイ一人なら、なんとかなったかも知れないが、六人相手は無理だと悟っているスクエ。

「なんの慰めにもならないけど……」

 スクエはノラの頭を安全な場所に置くと──先程崩れて来た山から何かを探し始める。

「せめて、墓でも作ってやらないとな──ここに来て、唯一優しくてしてくれたリプレスだし」

 付き合いとしては、とても短い間柄であった二人だが、スクエにとって、この過酷な異世界で優しくしてくれたのはノラだけであった。

 その恩返しをしたいのだろう、ノラの残りのパーツを探す為にあちこち探し回る。

「えーっと──お?! これノラの腕ぽいな」

 数あるジャンク品の中からノラの腕らしき物を見つける。

 近付いて見ると、身体部分はジャンク品に埋もれており、腕だけが飛び出している状態であった。

 スクエは周りの邪魔な部品を、退かしてノラの身体部分を掘り起こす。

「これは大仕事になりそうだ……」

 周りにある部品だけでも相当な数がある為、大分時間が掛かりそうであった。

 だがスクエは気合を入れて邪魔な部品を退かしていく。

 そして、やっとの思いでノラの身体を取り出した時は既に辺りは真っ暗になっていた。

「ふぅ……疲れた……後は、見晴らしの良さげな場所にでも埋めて上げるか」

 スクエは疲れ果てて地面に座り込んでいる。

 その側には先程拾い上げたノラの顔と身体が置かれていた。

 顔とは違って体の方は見た目上に何か損傷は見られず綺麗な物であった。

「取り敢えず、埋めるのは明日にして──家まで運ぶか」

 ノラの身体を背負い、頭を片手で持つとドラム缶の家まで、ゆっくりと運んだ。

「明日、見晴らしの良い所に埋めてやるからな」

 丁寧にノラの頭と身体を地面に下ろす。

 すると、一瞬だがノラの身体が光った様に見えた。

「ん?」

 一瞬であった為、スクエの勘違いか、もしくは夜空に浮かぶ星や月などに反射したのか、ノラの身体が発光した。

「今、確かに光ったよな?」

 スクエはノラの身体を調べる為うつ伏せにしようと動かすと、どこからともなく、ノラの体から丸く丸められた紙と、黒いチップの様な物が落ちて来た。

「なんだこれ?」

 まず、チップの様な物を拾い上げて見るが、それが何かは見当も付かない様だ。

 続いて、丸められた紙を開けて見る。

「これは……設計図?」

 スクエが広げた紙には、何かの設計図が描かれていた。

「これ、もしかしてノラ自身の設計図か……?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お姉さまは酷いずるいと言い続け、王子様に引き取られた自称・妹なんて知らない

あとさん♪
ファンタジー
わたくしが卒業する年に妹(自称)が学園に編入して来ました。 久しぶりの再会、と思いきや、行き成りわたくしに暴言をぶつけ、泣きながら走り去るという暴挙。 いつの間にかわたくしの名誉は地に落ちていたわ。 ずるいずるい、謝罪を要求する、姉妹格差がどーたらこーたら。 わたくし一人が我慢すればいいかと、思っていたら、今度は自称・婚約者が現れて婚約破棄宣言? もううんざり! 早く本当の立ち位置を理解させないと、あの子に騙される被害者は増える一方! そんな時、王子殿下が彼女を引き取りたいと言いだして──── ※この話は小説家になろうにも同時掲載しています。 ※設定は相変わらずゆるんゆるん。 ※シャティエル王国シリーズ4作目! ※過去の拙作 『相互理解は難しい(略)』の29年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の27年後、 『王女殿下のモラトリアム』の17年後の話になります。 上記と主人公が違います。未読でも話は分かるとは思いますが、知っているとなお面白いかと。 ※『俺の心を掴んだ姫は笑わない~見ていいのは俺だけだから!~』シリーズ5作目、オリヴァーくんが主役です! こちらもよろしくお願いします<(_ _)> ※ちょくちょく修正します。誤字撲滅! ※全9話

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。

ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」  そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。  長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。  アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。  しかしアリーチェが18歳の時。  アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。  それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。  父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。  そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。  そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。  ──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──  アリーチェは行動を起こした。  もうあなたたちに情はない。   ───── ◇これは『ざまぁ』の話です。 ◇テンプレ [妹贔屓母] ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

下げ渡された婚約者

相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。 しかしある日、第一王子である兄が言った。 「ルイーザとの婚約を破棄する」 愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。 「あのルイーザが受け入れたのか?」 「代わりの婿を用意するならという条件付きで」 「代わり?」 「お前だ、アルフレッド!」 おさがりの婚約者なんて聞いてない! しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。 アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。 「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」 「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

処理中です...