都市伝説から逃げ切るには……

あの、都市伝説が再び……

69話

「ただいま！」

　オカは家に帰り直ぐに自分の部屋に向かう。

「あー、怖かった……。偶にこういう事起きるよな……」

　どうやら、都市伝説マサオさんの事件以来、オカは言葉に出来ない変な感覚を覚える様になった。
　それは、誰かに見られている感覚だったり、突然オカにしか聞こえない女の子の声だったりなど、マサオさん事件の前には無かった事が起こり始める。

「なんで、急にこんな事が起こり始めたんだ？」

　いくら考えても答えは出ないが、やはり気になる様だ。
　それからオカは飯や風呂なども終わり、後は寝るだけの状態になる。

「ちょっとだけ、エブダン動画で探してみるかな」

　どうやら、家に居ても動画に映り込む例の男を探す様だ。

（と言っても、今日あれだけ探したのに見つからなかったからなー）

　オカはどんどん動画を見ていくが、一向に見付からず結局何の成果も上げられないまま、寝る事にした様だ。

「はぁ……、寝るか」

　布団に潜り込んだオカは疲れていたのか直ぐに眠りについた。



（ん……？　どこだここ？）

　そこは緑が生い茂っており、辺りを見回すと木と草しか見当たらなかった。

（なんで俺、こんな所にいるんだっけ？）

　オカは自身がここに来た記憶が無く戸惑っている。
　
　どうやらこれはオカの夢の中の様だ。

（ここまでハッキリと夢だと意識出来ると言う事は明晰夢ってやつか？）

　オカは夢だと分かった途端、なんだか楽しい気分になって来た様だ。

（なんか、分からないけど楽しそうだし探検でもするか！）

　オカはウキウキした気分で歩き出し森を進んでいく。

（昔は結構夢見てたけど最近になってから全然見なくなったよなー）

　周りの風景を見ながらどんどん進んでいくと、いきなり開けた場所に出る。
　そこには、茅葺屋根などの古い家が立ち並んでいおり、ちょっとした村の様だ。

（なんか、見た事ある様な気がするけど気のせいか？）

　オカは、一度村を見て回るが、誰もいないみたいだ。

（はは、俺の夢だし誰も居ないよな）

「私がいるよー！」
「！？」

　誰も居ないと思っていたオカだったが、急に声を掛けられてオカは心臓が飛び出るんじゃないかと思う程驚いた様だ。

「誰だ！？」

　オカは全力で顔を動かして声の正体を探すが、どんなに見回しても誰もいない。

「あはは、ここだよー？」
「！？」

　また、声が聞こえ驚くオカ。

「あはは、オカ面白ーい！」

（な、なんで俺の名前を知っているんだよ……）

　最近、超常現象が身の回りで起きていたオカだったが、とうとう夢の中でも不思議現象が起きた様だ。

「だ、誰だ！　で、出て来い！！」

　足と声を震わせてオカは屁っ放り腰ながらも、拳を握りしめる。

「あはは、何それー。もしかして怖いのー？」
「い、いいから出て来い！」

　オカが叫ぶと、声の主は静かになり辺りも静けさに包まれる……

（な、なんなんだよ）　

　いきなり静かになりオカはキョロキョロと周囲を見回すがやはり誰もいなかった……


「わっ！！」
「！？」
「あはは、またビクッってなったー！」

　どうやら声の主に完全に遊ばれている様だ。

「い、いい加減にしろ！　もういい目覚めてやる！」
　
　そう言うと、オカは自身のホッペを抓ったり、叩いたりして力尽くで起き出そうと試みる。
　すると、声の主が慌てて止めようとした。

「ま、まって！　オカ、ごめんねからかい過ぎた……」

　反省した声に聞こえたのか、オカは一旦ホッペから手を離した。

「姿が見えないけど、お前は誰なんだ？」
「うふふ、誰か当ててみて？」
「……」
「あ、待って待って！　ホッペ抓らないで！」

　声の主にイラッとしたのか無言で自分のホッペに手を持っていくオカを見て慌てて止めに入る。

「それで……？」
「うん……私はハルカだよ？」

　恐る恐るオカに呟く。

「ハルカ？」
「うん」

（どっかで聞いた名前だな……）

　夢の影響もあるのか、オカは直ぐに思い出す事が出来ない様だ。

「悪い、思い出せない」
「エッーー！？　そんな……名前を言えば分かると思ったのに……」

　姿が見えない為表情が分からないが、声からして、落ち込んでいるのが分かる。

「い、いや……ほら、夢だから直ぐに出て来ないんだよ……多分？」
「怪しい……。単純に思い出せないだけじゃ無いの？」
「あはは、まぁそれは置いといて教えてくれよ」
「はぁ……しょうがないな……」

　呆れた感じで声の主であるハルカが教えてくれる。

「マサオの娘であるハルカだよ……ここまで言えば流石に分かるよね！？」

（マサオの娘のハルカ……ん……あぁ！？）

「ハルカってあのハルカか！？」
「どの、ハルカか分からないけど、きっとそのハルカだよ」

　どうやら、声の主は都市伝説マサオさんの娘の様だ。

「おいおい、どう言う事だよ？！」
「どうもこうも、前からオカに話しかけてたじゃん！」
「は？」

　最初、何を言っているのか理解出来ないオカだった。

「ほら、今日の昼間も教えてあげたでしょ？」
「何を？」
「殺人現場をいくら探しても無駄だって」
「……お前！？　もしかしてお前最近俺にしか聞こえない声の正体か！？」
「ピンポーン！！」

　どうやら、最近オカの周りで起きている、謎の声の正体は都市伝説マサオさんの娘であるハルカだったようだ……