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第10章

434話

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「お兄さーん、次はどこに向かうのー?」

 オークの村を出て、数日が経過した。

「んー? 内緒だな」
「えー? なんでよー!」
「アトス様、私も気になります」
「はは」

 二人は次の目的地が気になる様だ。
 すると、隣を歩いていたリガスが笑い始める。

「ほっほっほ。次もお二人に取って懐かしい場所ですぞ?」
「「──ッ!?」」

 リガスの言葉に二人が目を開き反応する……あれ? この展開どこかで見たぞ?

「なんで、魔族さんが次の所知っているの?!」
「私達は知らないのに……」
「ほっほっほ。どうやら又もアトス殿に取って一番信頼されているの私の様ですな」

 前と同じじゃねぇーかよ……

「そんな事無いもん! 絶対魔族さんより私の方がお兄さんの役に立てるもん!」
「姉さん、それは違う。アトス様に取って一番必要なのは、姉さんでも無くリガスでも無く、この私!」

 二人がそれぞれ自身の有能さを語り始める。

「ほっほっほ。私はアトス様に向かって来る火の粉を全て防ぐ事が可能ですな」
「あはは、魔族さんったらオカシイー! 私はお兄さんが邪魔だと思った相手を排除する事が出来るよ!」

 リガスに対して、ロピは如何に自分の方が俺に役に立つかを自身満々にして答える。

「姉さんもリガスもその程度? 私はアトス様の為なら、何でも出来るし、アトス様の為ならモンスターに食べられたって構わない」

 いやいやッ! そこはかまえよ!
 チルの発言に俺だけでは無く他の二人も焦る。

「ほ、ほっほっほ。チ、チル様……流石にそれはやめて頂きたいですな」
「なんで? これはアトス様に取って如何に役に立つかを決める話し合いでしょ?」

 チルは嘘を付かない為、恐らく本気で思っている事だろう……だからこそ、やめて欲しいものだが。

「チルちゃん……? 仮にお兄さんが危なくなってもモンスターに食べられちゃダメだよ……?」
「分かっている。最後の最後まで全力で抵抗するから、安心して?」
「う、うん。分かっているならいいよ?」

 チルの表情へ本当に分かっているのか怪しいが、とりあえず信じる事にしたらしいロピとリガス。

「それで、アトス様、これからは何処に向かっているのですか?」
「ふふ。着いてからのお楽しみだな」
「気になります……」
「そうだ、そうだ! 大人しく教えた方がいいと思うよ!」

 ロピとチルはよっぽど次の目的地が気になる様で、さっきから俺を挟むかの様にジャングル内を移動する。

 歩みを進める度にロピからは何処行くのかと聞かれ、チルからは無言の圧力を感じる。

「はぁ……分かった。ヒントならあげよう」 

 俺の言葉に二人はムムッと口を閉じて一言も聞き逃さない様に集中し始める。

「まぁ、ヒントと言うよりかは、目的かな?」
「目的って、人間族を倒す為に一緒に戦ってと頼みに行くんでしょ?」
「あぁ、そうだな。しかし俺にはもう一つ目的がある」
「もう一つの目的ですか?」

 二人は、何の事か首を傾げながらも、考え始める。

「ほっほっほ。お二人共、頑張って考えて下さい」
「もう! 魔族さんは黙ってて!」
「リガスは喋ってはダメ」
「ほっほっほ。これは手厳しいですな」
「お兄さん、もっとヒントちょーだい!」

 ロピが更なるヒントを求める。

「そうだな……その目的はチルに関係あるな」
「私ですか?」
「あぁ。そうだ」

 俺は意味ありげに微笑む。

「えー、なんだろ? チルちゃん分かる?」
「……うん、分かった気がする」
「え?! どこー?」

 どうやら、チルはこれから行く所の検討がついた様だ。

「アトス様、あの願い事覚えて頂いていたんですか?」
「はは、もちろんだ。ただ、俺ではどうにも出来ないからな、頼みに行く」
「ほっほっほ。これでチル様も一歩前進出来そうですな」
「うん」

 俺、リガス、チルは次の目的地が分かるが、ロピだけは、まだ分からない様子で、少し焦っている。

「え、え!? 私分かんないよ、教えてよ!」
「はは、教えて欲しいか?」
「うん、教えてー!」
「しょうがない、チルは分かった様だしな。次、俺達が向かう場所は──」
「──アトス様、お待ち下さい」

 俺がロピに次の目的地を伝えようとすると、チルが止めに掛かる。

「ん?」
「アトス様、姉さんには教えないで下さい」
「なんでだ?」

 俺が首を傾げていると、チルは姉に近付き、ロピの両肩に手を置く。

「姉さん」
「……チルちゃんが教えてくれるの?」

 ロピは妹の顔を見て首を傾げる。だが、チルはロピの問いに首をゆっくり振ると、衝撃の言葉をロピに向かって発した。

「姉さん、どうやらアトス様の考えを読める私の僕がアトス様の役に立てるみたいだね?」
「──ッ!?」

 チルには珍しく、姉の顔を見てドヤ顔をする。
 その表情はさすがの姉妹という事もあり、ロピがドヤ顔した際とそっくりであった。
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