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第10章

401話

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「アトス様……朝でございます……起きてください」
「ん……」

 誰かが俺の身体を揺らしているのが分かる。
 しかし、あまりにも優しく、そして労った揺らし方の為、逆に眠気を誘われて、俺は再度寝る事に……

「アトス様……再度寝てはなりません……お願いです起きてください……」

 うーん、この優しい起こし方はチルだな。
 ロピであれば問答無用に俺の事を叩き起こすか、一緒に寝るかだし──チルの場合はこのままだと、ずっと同じ様な強さで起こし続けるだけだろう……仕方ない起きるか……

 俺は、ゆっくりと目を開けて、チルの顔を見る。

「アトス様、お目覚めになられた様ですね。おはようございます」

 チルが礼儀正しく頭を下げて挨拶をしてくれる。

「う……ん、おはよう……」

 まだ、頭が起きてない為、生返事になりつつも挨拶を返す。

「昨日はお疲れ様でした」
「チルもお疲れ様。今日ぐらいゆっくり休んでもいいんだぞ?」
「いえ、私はあまり活躍出来なかったので……」
「いやいや、そんな事無いだろ。シッカリとオーガ族を抑え込んでいたじゃ無いか」
「……」

 どうやら、チルの中では納得してない様子である。

「私は……どっちかといえば遊ばれていました……」

 俺は、そんなチルを見て、つい微笑んでしまった。

「?」
「あぁ、すまない。チルは真面目だな」
「いえ、そんな事は……」
「はは、これから一緒に強くなって行こうな」
「……はい」

 そんな時間が果たしてあるのか分からないが、取り敢えず今は、そう言うしか無い。

「さてと、起きるか……」

 俺は手早く着替えを済ませて、居間に向かおうとすると、チルが、姉のロピを起こそうとしていた。

「姉さん、朝だよ。起きて」
「うーん、今日はまだ寝たい……」
「ダメ。皆んなちゃんと起きているから」
「いやッ。チルちゃんも一緒に寝よー」

 ロピは目を瞑りながら、チルを自身の寝床に引っ張り込もうとする。

「だから、ダメだって。いい加減起きないと、怒るよ?」
「うふふ。妹はお姉ちゃんに怒れ無いんだよ? バカだな……」
「…………」

 目を瞑り、半分寝ぼけているロピにチルはイラッとしたのだろう。
 姉であるロピをお姫様抱っこで持ち上げる。

「私、お空を飛んでいるよ……」

 余程楽しい夢を見ているのか、ロピの表情は幸せそうだ。

 そして、チルはそのままロピをお姫様抱っこしながら、少しだけ移動すると、硬い地面に向かって姉を落とした……

「──ッ痛いッ!? え? なになに?!」

 急激な浮遊感からの衝撃にロピは戸惑っている──そして、お尻が痛いのか手でさすりながら、周りの状況を伺う。

「姉さん、おはよう……朝だよ?」
「ふぇ? 朝……?」
「うん。朝ごはんだから、用意が出来たら居間に来てね?」
「う、うん……だけどチルちゃん」
「ん?」
「なんで、私こんな所で寝てたの? それに身体が痛いの……」

 チルは少し考えてから笑顔で答えた。

「姉さん、寝相悪いし寝ぼけていたんだと思う」
「そ、そうなのかな……? でも、私が寝ていた所から3メートルくらい離れているよ……?」

 夜に寝ていた位置を見ながらロピが首を傾げていた。

「そんな事より、ご飯冷めちゃうから、早く来てね?」
「う、うん……」

 未だ納得していないロピであったが、ご飯という単語を聞いて、ロピの中での優先順位がご飯に切り替わった様だ。

 そして、チルは何事も無かった様に居間に戻っていく。

「俺の起こし方とは全く違うな……」

 チルの優しさに感謝しながら俺も居間に向かった……

「おはようー」
「ほっほっほ、アトス殿おはようございます」
「改めて、おはようございます」

 居間では、リガスが朝ご飯を作っており、チルがテーブルに乗せていた。

 すると、後から声が掛けられた。

「お兄さんおはようー」

 先程まで寝ぼけていたロピだったが、今では完全に目が覚めたのか、元気に挨拶をして来る。

「あれー? 大鎌さんは?」
「ほっほっほ。シャレ殿は昨日の怪我が結構深かった事もあり、今は別の所で治療を受けています」
「そっかー。早く治ればいいね!」

 昨日の戦いで負傷したのはシャレだけでは無い。
 シャレと一緒に戦っていた、トラクやニネットも深い傷を負って現在治療中だ。

 また、ドワーフのキルも同様に傷が深いと言うことも有り、シャレ達同様に絶対安静の必要がある様だ。

「命に別状は無いんだよな?」
「はい。今朝、シャレ達の様子を見に行きましたが、問題無いとの事です」
「良かったよねー!」
「ふむ。では我々もご飯を食べ終わったらお見舞いに行ってみますかな?」
「「「賛成ー!」」」

 そこからは、リガスの美味しい朝ごはんを堪能して、昨日の戦いについて、色々話した。

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