上 下
216 / 492
第6章

215話 皆んなと再会 2

しおりを挟む
「全力で突っ込みますよ!!」

 マーズには珍しく強めの口調で走り出す。それに遅れず俺達も駆け出す。

 モンスター達は変異体の方に向いている為、俺達が走り出した事に対して、気付くのが遅い。

「ほっほっほ。これはスリル満点ですな」
「胸が高鳴る……」
「い、いや。それは多分恐怖感から来る高鳴りだとお姉ちゃんは思うな……」
「お前ら、結構余裕あるな」

 リガスとチルは若干の笑みを浮かべながらモンスター達の間を駆け抜けている。
 先頭にはマーズと斥候が二手に分かれながら、変異体と中型が対立している場所に向かってモンスター達の間を走っている。そして二人の後を三班のメンバーが追っている。

「よく、スイスイと迷わず走れるよな……」
「本当だぜ……俺なんか、この密集地帯で何処走れば良いか分からねぇーよ」

 先頭の二人は一切スピードを緩めず走り続けている。

「確かに二人とも凄いけど、お兄さんの方が絶対上手く走れるよねー」
「姉さんの言う通りです。アトス様の方が皆を安全なルートで変異体の所まで行けると思います」
「ほっほっほ。アトス殿の先読みは、もはやスキルの様なものですからな」

 三人が、俺の事を褒めてくれるので悪い気はしないな。

「ん? だから三人共俺の後ろを走っているのか?」
「そだよ?」
「はい」
「ほっほっほ」

 三人は一列になり俺の後ろを走っていたので、何故かと思っていたがそう言う事か。

 そして、とうとう変異体と中型達が視界に見えてきた。時間にしたら凄い短かいが気持ち的には、長い時間を走っていたのでは無いかと感じる程だった……

「皆さん! 見えましたよ! このまま中心地まで駆け抜けます。中心地に着いたらモンスター達が襲って来るかもしれませんので気をつけてください!」

 マーズが三班に叫ぶと再び前を向き、変異体と中型達の間に出来ている小さい空間に向かって走る。

「ロピ、チル、リガス! 俺の姿を見失わず追って来いよ!」
「「「はい!」」」

 そして、俺は足に力を込めて走るスピードを上げた。




「皆さん、一旦止まります!」

 マーズは中心地に着くと一旦止まる様に三班に指示をする。
 そして、変異体と中型達が向き合っている中心地に堂々と俺達は姿を晒す。

「お、おい……こんな場所で立ち止まって大丈夫なのかよ……?」
「人間と言う餌をモンスター達に見せ付け無いとお互い争って来れませんからね」
「それは、そうかもしれないけど」

 流石のフィールも変異体と中型達が対立している中心地に身を置く事に恐怖を感じている様だ。

 そして、俺達を視認したモンスター達は何やら話し合う様に鳴き声を上げ始める。

「きっと、オイラ達をどう食うか相談しているんだ……」

 トインは足を震わせながら、キョロキョロと変異体と中型を交互に見ていた。

 暫くすると変異体と中型の話し合いが終わったのか、辺りは静かさに包まれる。

「皆さん、そろそろ走る準備を……」

 マーズの声に三班全員が、いつでも走れる様に腰を少し落とした状態を保つ。

 そして、どこかで見た光景が俺達の目の前に再び繰り広げられた。

「と、とんでもねぇな……」

 誰が呟いたのかは分からないが、確かに目の前の光景はとんでも無かった。

 交渉決裂したのか、中型二体が尻尾を使い変異体に攻撃を始めたのだ。

「よし! ──ッ皆さん全力で走りますよ」

 望んでいた行動をモンスター達がした為小さくガッツポーズをしたマーズはこの密集地帯を抜け出すべく走り出す。

「は、走るって言ってもどこにだよ!?」

 周囲を見回しても俺達は完全に包囲されている。

「今、私達が走るべき道が出来上がる筈です……」

 中型二体の攻撃は、やはり変異体には効果が無いようだ。
 中型二体が体制を立て直す為に後ろに下がった瞬間にマーズが合図を送る。

「──ッ皆さん今です!」

 俺達は、中型が下がった事により少しだけ空いたスペースに向かって全力で走り出す。

 変異体は中型達と俺達に対してトゲを飛ばして来た。

「カネル!!」

 いきなりトゲが飛んで来たが、見事リガスがガードしてくれた様だ。

「流石魔族さん!」
「ほっほっほ」

 リガスが一度防御してくれた為、俺達に少しの気持ち的な余裕が生まれた為か、次から次へと飛んでくる攻撃を全員が避けながら移動している。

「へへ、オイラ達だってやれば出来るな!」

 こうして、なんとか密集地帯を抜け出す事が出来た俺達だったが、そう甘い事ばかりでは無かった……

「な、なんで中型達だけ俺達の方に!?」

 なんと、中型二体は変異体を無視して俺達の方を追いかけ始めたのだ。
 変異体も俺達と言うよりかは、中型を追い掛けようとしたが、小型達が邪魔をしていた。

「お兄さん、変異体に勝つ為に私達を追い掛けているんだよ!」
「ここに来て、確信しましたが、ロピ殿の言う通り私達を捕食して強くなる為だと思いますな」

 ロピが以前言った通り中型はこのままだと変異体に勝てないと思い、人間を捕食する為に俺達を追い掛けている様だ……

「ッチ、追い掛けて来るのが中型二体だけになったのは嬉しいが、振り切れねぇな」
「オイラ達、夜からずっと逃げ回っているし、そろそろ体力の限界だ……」

 ここまで、なんだかんだあったがマーズの中で予測通り事が進んでいたのだろう。しかし、最後の最後で失敗した……まさか、あの状況下で中型二体が追い掛けて来るとは、流石にマーズでも予測出来なかった様だ。

「私が、もっとロピさんの意見を真剣に考えていれば……」

 マーズの言葉に、全員が、もうこれ以上の作戦が無いのだと察して、これから中型達に捕食される想像を掻き立てられてしまう。

 しかし、そうはなら無かった。

「オラッ!!」

 中型に対して、誰かが攻撃を仕掛けた様だ。

「お主ら、良く生き残っていたな……」

 そこには、自分の背丈以上のハンマーを背負ったドワーフ達が驚いた顔をして立っていた……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

処理中です...