上 下
154 / 492
第5章

153話 山神様の正体……?

しおりを挟む
 私とレギュは小型に追いかけられていた。近くに人の気配があったので逃げる進路を変えて人間達に小型を擦りつけて逃げようと思い、気配の方に向かった。するといきなり弓矢が飛んで来て小型に命中する。

 そして、気付いたら盾を持った者達が小型を押し留め、大柄の男を先頭に攻撃を仕掛けていた。そしてあっという間に二体の小型を倒してしまったのだ……。

「す、凄い……」

 レギュは目を大きく見開き今の戦闘に驚いたらしい。
 少しすると大柄の男と少女がこちらに来て自己紹介をして来た。

「俺はデグって言うんだ。村の村長をしている」
「ベムって言う。副村長……」

 大柄の男がデグで少女がベムと言うのか。

 デグの村が近くにあるとの事なので今日はそこに泊めてもらう事になり現在は移動中である。

「山神様はどこから来たんですか……?」

 ベムが聞いてきた為答える。

「穴からだ」
「穴ですか……?」

 ベムは首を傾げる。恐らく訳が分からないのだろう。私もベムの立場からしたら相手が何を言っているか理解に苦しむ。だが、記憶が消えて私が覚えているのは、あの大穴からであるから嘘は言ってないだろう。

 それからベムは何故か私の周りから離れずに移動していた。それを見たレギュが口を膨らませて何やら呟いていたが聞こえなかった為気にしない事にしよう。

「むぅ……。山神様の独り占めは許せないです!」

 少し移動すると、柵が見え更に進むと建物が見えてきた。

「山神様、ココが私達の村です……」
「ここがそうなのか。規模はどれくらいいるんだ?」
「今は五十人以上居ます」
「ほぅ……。それは凄い」

 五十人規模とは凄いな……。それくらいの人数だとモンスターを寄せ付けてしまいそうだが、先程の戦闘を見る限りだと問題は無いのか。

「山神さん、まずは俺の家に来てくれ。お茶でも飲みながら話そう」
「あぁ。わかった」
「私もついていきます!」

 デグの案内で村長宅にお邪魔して、お茶を飲みながら話をする。

「改めて俺はこの村の村長をしているデグだよろしく頼む」
「私はこの村の副村長をしているベムです。よろしくお願いします……」

 二人は深々と頭を下げている。今思うとジャングルで最初に会った時も二人はとても低姿勢だったな……何故だ?
 それを見ていたレギュは小さな声で呟く。

「やっぱり山神様は神様なんだ……」

 レギュよ、私も何故かは知らんが神では無いぞ?
 そして私達も改めて自己紹介をする。

「山神だ。よろしく頼む」

 相手からしたら確実に変な奴だと思われるているだろう。自分の事を神と名乗っている時点で危ない奴だ。だが自身の名前も覚えてないので山神と名乗るしか無いな。

「レギュと言います。よろしくお願いします!」 
「二人はどんな関係なんだ?」

 デグが疑問をぶつけてくる。

「はい! 私達は神と生贄の関係です!」
「「……え?」」

 二人は言葉を失ってしまったらしい。私の自己紹介もアレだがレギュも結構残念だな。
 デグとベムは困った様にこちらを向くので私が補足するしか無さそうだ。

「まだ、生贄には手を出していない」
「「……は?」」

 二人はまたもや言葉を失っている。アレ? 私変な事言ったか?

「山神さん、すまねぇ。状況がよく分からないんだがレギュとはどこから来たんだ?」
「穴からだ」
「穴とは?」
「大穴だ」

 どうやら私は説明が下手らしい。だが私の記憶は穴から今現在までの記憶しか無い為他に答えようが無いな……。

「山神様、それではデクさんもベムさんも分かりませんよ!」

 そこからはレギュが詳しく説明してくれた。まずレギュが居た村の大体の位置、そしてレギュが大穴に生贄として入れられた経緯、私と出会ってからここまでの出来事を細かく話した。

「なるほど……。山神さんは記憶が無いのか……」
「それも私達を助けてくれた時期と重なっている……」
「と言う事はやっぱりシクさんか?」
「可能性は高いと思う……」

 二人は何やら小声で話している。そして私の事を見てデグが質問をしてくる。

「山神さんは、何も覚えてないけど少年の顔だけは覚えているんだよな?」
「あぁ。それが誰でどんな間柄かは覚えてないがな」
「「……」」

 二人は再び黙り込んで考えたり、小声で話したりしている。

 一応、少年以外にも、私と同じ獣人の女性が頭にチラつくが、その事については特に伝えてない。

「少年ってやっぱりアトスかな……?」
「あぁ。そう思うが本人が居なきゃ確認しようがねぇーな」
「特徴を言ってもダメかな……?」
「うーん、難しいと思うがやってみるか?」

 二人は話し終わり、再び私を見てその少年の特徴を聞いてきた。私は出来る限り少年の特徴を伝えると、どうやら二人が知っている少年と私の頭に思い浮かぶ少年は似ているらしく、色々と一致している事が分かった。

「ほぇー、なら山神様の頭に出てくる少年とデグさん達が知っている少年は同じなんですか?」
「恐らくそうだと思う。一つ山神さんに聞いて欲しい話があるんだ」
「なんだ?」
「私達は恐らく山神様の正体を知っています……」

 なんだと? 私の正体を……?



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

処理中です...