上 下
110 / 492
第4章

109話 アトスの実力

しおりを挟む
「流石お兄さん!」

 俺はチルの攻撃に合わせてスキルを発動させる。そして防御に対しても発動させる。

 チル自身の戦闘経験が少ない為リザードマンの戦士に良いようにあしらわれている。だが、俺のスキルで相手の攻撃は効かないのでチルはガンガン攻撃を仕掛けていた。

「お兄さんが居ればチルちゃんがやられる事は無いね!」
「気楽に言ってくれるぜ……」

 だが実際にダメージが無い為チルは攻撃に集中が出来る様で少しずつだが相手を捉えて来ているようにも見える。

「お兄さん、そろそろ攻撃当たりそうじゃない?」
「確かに……」
「チルちゃんの攻撃が当たったら、流石に倒せるよね?」

 俺のスキル効果もあるが、小型モンスターを一人で倒せる威力をもっているチルの攻撃を受けたら、流石にただじゃ済まないだろう。そんな事を考えていたらチルの攻撃が相手に当たった。

「え? お、お兄さん、人ってあんなに飛ぶの?」
「あ、あぁ。中にはいるんじゃないか……?」

 俺とロピが見ている前でチルはリザードマンを十メートル程ふっ飛ばした……。

「これから、チルちゃんを怒らすのは止めたほうがいいかな?」
「ほどほどにな……」
「うん、気をつけるよ……」

 俺たちだけでは無く他のリザードマン達も見ていたのか、直ぐにチルに複数付くようになった。だが相当警戒しているのかある一定の距離を保ちチルの攻撃を避けている。そしてグインの方にも複数のリザードマン達が付く。

「チルちゃんに複数付いたー! お兄さん大丈夫?」

 なんとか、先読みをしてチルに攻撃が当たる前に防御を強化する。だが、相手もチルに攻撃が効かない事におかしいと思い始めたのか、騒ぎはじめている。そしてチルには更に多い人数が追加される。

「あわあわ、お兄さん! なんかチルちゃんに十人くらい付いたよ!?」
「段々とチルが見えなくてなってきた」
「それって不味いの?」
「不味い……」

 チルが見えないとラインが敷き損ねるかもしれないな……。そこからはグインにも人数が追加される。

「なんかどんどん増えてない?」

 辺りを見回すと仲間のリザードマン達が次々とやられているのが目に付く。最初は二十くらい居た筈だが今は十人くらいまで減ってしまっている。そして、その相手をして居たリザードマン達がチルやグインの所に行っている。

 ヤバイな……。このままだと俺達の所まで来る。そしたらリガスが倒れている今逃げ切れないだろう。しばらくすると相手側からトッポが声を荒らげて周りに指示を飛ばす。

「お前ら! こいつらはもうボロボロだぜ!!」
「「「「「「おう!」」」」」」
「ギャハハ! どんどん、畳み掛けろ!!」

 トッポは高笑いをしながら左腕にはグインの奥さん、右腕には娘を抱えている。トッポに抱かれている二人はとても嫌そうな顔をしながらもグインの事が心配で目線は常に戦いを追っている。それが気に食わないのかトッポは口を歪める。

「おい! 早くグインをやっちまえよ!」

 グインには既に相当な数を相手にしているが人数が更に増える。それにより少しずつ捌けなくなって来たのか切り傷などが増えてきた。

「お! いいぞ! ヤっちまえ!」
「や、やめて!」
「パパー!!」

 クソ! どうする?! 現状は最悪だ。こちらは後十人しか居ない。そして向こうは、その十倍は居る。この戦力差を埋めるのは相当難しい。チルの攻撃さえ当たれば全員一発で倒せるだろうけど、そもそもチルの攻撃が当たらない……。そしてグインは流石に相手の人数が多過ぎるのか対応出来てないし、他の仲間も同じ様な状況だ。

「おい、コイツらどれくらいもつと思う?」
「俺は十分!」
「俺五分!」
「いやいや、なんだかんだグインが居るし三十分!」
「あの、獣人がスゲーぞ!」
「マジだ、なんで攻撃を一切食らわないんだよ!?」

 あまりにも人数差がある為今では俺達を囲む様に座り込み、戦いを見て好き放題話している。

「……?」
「どうした、トッポ」
「……いやなんでもねぇ」

 少し不思議そうに戦闘を見ているトッポ。

「こいつらヤっちまったら、女共はどうするんだ?」
「誰かの嫁にすればいいだろ」
「なら俺はアイツの嫁貰うわ」
「おい、ソイツは俺のだ!」
「あ? なら順番だな」
「お前奥さんいるだろうが!」
「「「ギャハハ!」」」

 こいつら最悪だな……。だが今は生き残るのが先決だな。せめてロピとチルだけでも逃がしたいが言う事聞かないだろうな。

「お兄さん、どうする?!」
「このままは流石に不味いよな」
「人数も相当減っちゃったよ……」
「倒したら俺達の所までくるな」
「そしたら相手に出来ないよ……」

 絶対絶命。だがこのまま諦める訳にもいかないな。ロピもチルもリガスも全員無事に家に帰らないとな。


「試すか……」
「え? なにを?」
「ふぅ……」

 俺は一度目を瞑り集中する。出来るか分からないが試してみて成功すれば御の字だ。

 集中……集中……。

 これが成功してもらわないと、全滅の可能性がある。リザードマンは生かされるかもしれないが俺やロピやチル、リガスなどの他種族は生かして貰えないだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

女王直属女体拷問吏

那羽都レン
ファンタジー
女王直属女体拷問吏……それは女王直々の命を受けて、敵国のスパイや国内の不穏分子の女性に対して性的な拷問を行う役職だ。 異世界に転生し「相手の弱点が分かる」力を手に入れた青年セオドールは、その能力を活かして今日も囚われの身となった美少女達の女体の弱点をピンポイントに責め立てる。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

異世界召喚された俺は余分な子でした

KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。 サブタイトル 〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...