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第2章
49話 これからは三人一緒
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「よし、ここまでくればアイツらにも見つからないだろう」
俺達は男をぶっ飛ばしてから、見つからない所まで移動した。
「チルちゃん! チルちゃん! 私達凄かったね!!」
ロピは安全な場所に着いた途端チルの手を取り興奮したように飛び跳ねる。
「姉さん、姉さん凄かったね」
「アイツ、私達がパンチしたら壁まで吹っ飛んだね!」
「あんなに人間が飛んでいくの初めて見た」
「チルちゃんなんてアイツの攻撃全然効いてなかったもんね!」
「あれは、この方のお陰」
姉妹達は一通り興奮した後に俺の方に向いた。
「いやいや、俺は少し二人の補助をしただけだから、実際倒したのはロピとチルのお陰だよ」
「なんて、出来たお方……。人間族にこんな人が居るなんて……」
チルは何故か俺の方を見て感動した表情をしている。
そしていきなり、俺の前に跪き祈る様なポーズを始めた。
な、なんだ!? しかも何か呟いているし!
「チ、チルちゃーん、な、何をしているのかな?」
いきなりのチルの奇行にロピが心配そうに声を掛けるが、チルは返事をしないで祈りを続けている。
「お、おーい。チルちゃーん、無視されると、お姉ちゃん寂しいなー」
それから、ロピがいくら話しかけてもチルは一切反応しなかった。
それから、数十分してようやく立ち上がった。
「チルちゃん! やっと正気に戻ったのね! お姉ちゃん心配したんだから!」
「あ、あの貴方のお名前をお聞かせ下さい」
「あ、あれー? チルちゃん私の事見えて無い?!」
引き続きロピの声は聞こえてないらしい。
哀れロピ……
「名前って俺の?」
「はい」
「アトスだけど……」
「アトス様……」
チルは俺の事を勇者様を見ているかの様に目をキラキラさせながらアトス様と何度も呟き俺を見ている。
「お兄さん、アトスって言うんだねー」
「ロピには一度名乗らなかったか?」
「そうだっけー?」
会話にやっと入れたのが嬉しかったのか、とても良い笑顔だ。
「アトス様」
「え、え? 俺の事はアトスって呼び捨てでいいよ?」
「アトス様」
「……」
「チルちゃんは頑固だからねー。こうと決めたら曲げないよー」
様付は流石に止めて欲しいな……
「アトス様、これからどうするんですか?」
「そうだ! さっき言うの忘れたけど、チルちゃん、これからお兄さんと三人で旅に出るよ!」
「旅?」
ロピからいきなり三人で旅に出ると言われて思考が追いつかないチル。
「そうだよ! 私とチルちゃんとお兄さんで人間族の住処を出て旅しよう! ってお兄さんに誘われたの!」
「なるほど。アトス様、姉さんが言っている事は本当ですか?」
「ロピとチルが良ければここから出て一緒に旅をしないか?」
チルは少し考えた後に、何かを決意した様に言う。
「私は、姉さんの事が大好きです」
「私も、チルちゃんの事大好きだよ!」
「姉さんは少し黙ってて」
「……はい」
妹に叱られて落ち込むロピ。
「姉さんの為なら、何でもしたいです。そんな姉さんは、少し前に私が熱を出したばかりに変な奴に利用されました」
変な奴とは先程ぶっ飛ばした男とその仲間達だろう。
「私は姉さんを助けたかったけど、力が無くて何も出来ませんでした……。そしていつも守って貰っていました」
チルは悔しそうな表情、声色で過去の事を思い返しているらしい。
「私は、これから強くなりたい。今回みたいな事があっても姉さんを守ってあげられるくらいに」
チルの言動を聞いて、俺はシクの事を思い出した。
俺もシクにはいつも守って貰った。そしてあの時も……。
「ここに居ても強くならない! なので、私はアトス様に付いていきたいです。そして強くなりたいです」
真剣な眼差しで俺の方を見て来る。俺も、シクに守って貰う度に強くなりたいと思っていた。
はは……俺と一緒だな……
そして、俺は自分の気持ちをチルに伝える。
「チル、俺も強くないから、これから一緒に強くなっていかないか?」
「はい! アトス様も守れるくらい強くなります」
「はいはい! 私も強くなる! チルちゃんとお兄さんを守れるくらい!」
話してもいいタイミングだと思ったのか、先程まで黙って居たロピが勢いよく手を挙げて会話に混じる。
「よし! なら三人で強くなろう!」
「「はい!」」
俺達は男をぶっ飛ばしてから、見つからない所まで移動した。
「チルちゃん! チルちゃん! 私達凄かったね!!」
ロピは安全な場所に着いた途端チルの手を取り興奮したように飛び跳ねる。
「姉さん、姉さん凄かったね」
「アイツ、私達がパンチしたら壁まで吹っ飛んだね!」
「あんなに人間が飛んでいくの初めて見た」
「チルちゃんなんてアイツの攻撃全然効いてなかったもんね!」
「あれは、この方のお陰」
姉妹達は一通り興奮した後に俺の方に向いた。
「いやいや、俺は少し二人の補助をしただけだから、実際倒したのはロピとチルのお陰だよ」
「なんて、出来たお方……。人間族にこんな人が居るなんて……」
チルは何故か俺の方を見て感動した表情をしている。
そしていきなり、俺の前に跪き祈る様なポーズを始めた。
な、なんだ!? しかも何か呟いているし!
「チ、チルちゃーん、な、何をしているのかな?」
いきなりのチルの奇行にロピが心配そうに声を掛けるが、チルは返事をしないで祈りを続けている。
「お、おーい。チルちゃーん、無視されると、お姉ちゃん寂しいなー」
それから、ロピがいくら話しかけてもチルは一切反応しなかった。
それから、数十分してようやく立ち上がった。
「チルちゃん! やっと正気に戻ったのね! お姉ちゃん心配したんだから!」
「あ、あの貴方のお名前をお聞かせ下さい」
「あ、あれー? チルちゃん私の事見えて無い?!」
引き続きロピの声は聞こえてないらしい。
哀れロピ……
「名前って俺の?」
「はい」
「アトスだけど……」
「アトス様……」
チルは俺の事を勇者様を見ているかの様に目をキラキラさせながらアトス様と何度も呟き俺を見ている。
「お兄さん、アトスって言うんだねー」
「ロピには一度名乗らなかったか?」
「そうだっけー?」
会話にやっと入れたのが嬉しかったのか、とても良い笑顔だ。
「アトス様」
「え、え? 俺の事はアトスって呼び捨てでいいよ?」
「アトス様」
「……」
「チルちゃんは頑固だからねー。こうと決めたら曲げないよー」
様付は流石に止めて欲しいな……
「アトス様、これからどうするんですか?」
「そうだ! さっき言うの忘れたけど、チルちゃん、これからお兄さんと三人で旅に出るよ!」
「旅?」
ロピからいきなり三人で旅に出ると言われて思考が追いつかないチル。
「そうだよ! 私とチルちゃんとお兄さんで人間族の住処を出て旅しよう! ってお兄さんに誘われたの!」
「なるほど。アトス様、姉さんが言っている事は本当ですか?」
「ロピとチルが良ければここから出て一緒に旅をしないか?」
チルは少し考えた後に、何かを決意した様に言う。
「私は、姉さんの事が大好きです」
「私も、チルちゃんの事大好きだよ!」
「姉さんは少し黙ってて」
「……はい」
妹に叱られて落ち込むロピ。
「姉さんの為なら、何でもしたいです。そんな姉さんは、少し前に私が熱を出したばかりに変な奴に利用されました」
変な奴とは先程ぶっ飛ばした男とその仲間達だろう。
「私は姉さんを助けたかったけど、力が無くて何も出来ませんでした……。そしていつも守って貰っていました」
チルは悔しそうな表情、声色で過去の事を思い返しているらしい。
「私は、これから強くなりたい。今回みたいな事があっても姉さんを守ってあげられるくらいに」
チルの言動を聞いて、俺はシクの事を思い出した。
俺もシクにはいつも守って貰った。そしてあの時も……。
「ここに居ても強くならない! なので、私はアトス様に付いていきたいです。そして強くなりたいです」
真剣な眼差しで俺の方を見て来る。俺も、シクに守って貰う度に強くなりたいと思っていた。
はは……俺と一緒だな……
そして、俺は自分の気持ちをチルに伝える。
「チル、俺も強くないから、これから一緒に強くなっていかないか?」
「はい! アトス様も守れるくらい強くなります」
「はいはい! 私も強くなる! チルちゃんとお兄さんを守れるくらい!」
話してもいいタイミングだと思ったのか、先程まで黙って居たロピが勢いよく手を挙げて会話に混じる。
「よし! なら三人で強くなろう!」
「「はい!」」
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