過酷な場所で生き抜く為に──食物連鎖の頂点が巨大モンスターの世界で死ぬ気で生き抜きます

4話 命名

　「……あぎゃ？」

　どうやら気を失っていたらしい。

　俺を抱えて獣人少女は物凄いスピードで動いている。

　しかも、また木の上を移動しているのかよ……

　獣人の身体能力が凄いのか、この少女が凄いのか分からないが、揺れなどはあまり感じ無い。

　「ん？　アトス気が付いたか？」

　獣人少女がこちらを向いて話しかけてきた。

　ん？　アトスって俺の名前か？

　「先程はあんな状況だったが、私の名前はシクだ。　今日からアトスの母親になる。　よろしくな」

　母親……？　もしやこのシクという少女。俺の事を育ててくれるのか？

　俺としては有難いが、いきなり赤ん坊を拾ってきて、親に断られるだろう。

　だが、俺としては今頼れるのはこの獣人少女シクだけだ。
　ここは、なんとしても俺の事を育ててもらいたい。

　「私の家はもう少し先だ、少し揺れるが我慢してくれ」

　そう言いながら少女はぐんぐんスピードを上げて木から木に飛び移っている。

　いきなり赤ん坊になって、大きいイモムシに食われそうになったりと短い時間で色々経験した俺は単的に言って不運だったと言ってもいいだろう。

　しかし、ここに来て少し好転したかな？

　だが、急にこの様な状況になって、まだ自分自身が何かしらの夢を見ているみたいで悲壮感などは無い。

　楽観は出来ないが少女に拾われ、なんとか生き伸びる事が出来そうだ。

　「そういえば、アトス。なんであんな場所に居たんだ？」
　「あぎゃ……？」
　「流石に答えられないか」

　表情を一切変えないので、冗談で聞いているのか、真面目に聞いているのか判断がつかない。

　美人なんだけどな……笑ったら凄い素敵なのに、もったいない。

　そんな事を考えている内にどうやら家に到着したらしい。

　「ここが今の住処だ。私以外誰も住んで居ないが、これからは私とアトスの二人暮らしになるな」

　先程同様表情は一切変わらないが、声色は嬉しそうだ。

　てかこの少女、今まで一人で暮らしていたのか？！
　あんな大きいイモムシ達が居る所に？！

　「あぎゃ！？」
　「ん？　アトスも嬉しいか？　私も楽しみだよ」

　驚き過ぎてつい声が出てしまったが、シクは違う意味で受け取ったらしい。

　「これから、私がアトスを一人前に育ててこの世界でも生き残れる様にしてやるからな。そして絶対に捨てたりしない。一緒お前を大切にする……」

　シクが何故こんな危ない世界で一人暮らしなのか分からないが今の言葉で、俺は大体の想像が付いてしまった。

　……これからよろしくお願いします。俺は心の中でシクに対してつぶやいた。