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Act 02

追憶の中~悪魔との背徳

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「い……いやぁ……エリオット……やめて……聖女の私は、かどわかされ……魔王の城で生贄いけにえとなって果てたの……世界のみんなから、これ以上、希望を奪わないで……あっ!
 あうっ!
 あ、あ、あ、あ、あああ!」

「……ふふ。
 告げられる事なく、僕の舌が、君の陰部をめる――そろそろ、慣れてほしいな。
 さらなる快感を求めて、もっと喘ぎ声をあげていいんだ。
 生贄いけにえとなり果てたなんだろ?
 負い目を感じるなどと考える必要はないじゃないか。
 魔王の花嫁となる為、常世とこよに美しい今を保つんだ。アリスの身体は、すでに魔の者に近い。
 そうだ、人間としての君は、もうどこにもいないんだ。
 しなやかでうるわしい体躯たいくに、魂だけを留めている。
 その見目好みめようつわとしての身体の中に、たしかに聖女であったアリスはいるのかもしれないが、ふふ、今や魔王にもてあそばれる玩具がんぐにすぎない。
 さて、望み通りにしてやろう――」

「ひぃぃあああ……な、な、何を!
 エリオット……ああん!
 何を、し……て……あああん!」

「裂け目を、僕の指を使って開いてやっただけじゃないか。
 供物くもつでしかない君を、どう扱ってやっても、僕の勝手だろ。
 断りなどなく、大切な部分すらも、魔王の手空てあきを埋める為に使われるんだ。
 『魔の力』を送り込んでやる。
 わずかな動きも許すつもりはない。
 五体ごたいのすべてが縛りあげられたかのように、抵抗できないまま、僕に内をさらす事となる。
 足を大きく開き、ひざをしっかりと立てさせられてから、自由を失うんだ。
 魔王の寝所ねどこに身体を転がされたアリスは、僕をなだめるだけの存在。
 聖女さま。
 大切な役割じゃないか。
 僕が少しでも不満を感じたら、人里ひとざと一つが消えるんだ。
 心配はいらない。
 初めて二人が身体を重ねた時のように、安らいだ気分で、僕に何もかもをゆだねてくれ」

「あははん……ひ、ひらいて……ひ……ああ……あああ!」

「うんうん。
 生贄いけにえとして、あるべき姿を見せてくれる。
 それでいいんだ、アリス。
 魔王の手に堕ち、無事な訳がないではないか。
 受ける仕打ちがむごい方が、君も、人間どもに申し開きできるだろ?
 祭壇に、鎖で縛られ、僕にがいされる者が、慶福けいふくの時を迎えていると、誰が思うというのだろう。
 さあ、好きなだけ怯えた表情をしてくれ。
 ――心の底では、悦ばしいと感じていても、誰も、君を責めたりしないさ」

「ち、ちが……ちが……あはははんっ!
 違う……わたしは、魔王からよろこびなんて……あは!
 ひんっ!
 ああああああっ!
 し、舌……いれないで……あ、あ、あ……め……なめ……ない……で……あ、あ、あ、ああああっ!」

「……もらっていいの?
 君の初めてなんだろ……僕なんかが、世界の希望、聖女であるアリスの純潔を奪ってもいいんだろうか。
 気弱な事を言って、ごめん。
 上手に伝えられるかな……。
 素肌の温かさを、互いに感じられた事、とても嬉しかった。
 でも、これ以上にことを進めたら、きっと、僕は止まれない。
 最後まで――君のすべてを手に入れるまで、前へ前へと行ってしまうと思う。
 いとおしいよ、アリス。
 あのね。
 僕も、初めてなんだ。
 君よりも、少し長く生きていると思うけど、運命の女性にいつか出逢える日まで待ちたかったんだよ。
 不思議な気分だ。
 ついに巡り会えたのに、いざとなると怖気おじけづくなんて。
 君のもとに、辿たどり着けたのに、触れ続けたら失ってしまいそうで……怖いんだ。
 この幸せが、はかな仮初かりそめの恋で終わるのなら、ここで、引き返したい」

「……エリオット……?
 あれ……わたし、どうして、ここに……あ……そっか。
 二人で、大聖堂で夜を迎えて――毛布しか敷いていないはずなのに、ベッドの上にいるようなやわらかい心地。
 エリオットと一緒にいるからなのかな。
 みんなに内緒というのを教えてくれたのは、エリオットだった。
 図書館の本棚の前、開いた本に目を落とす私の横で、何気ない仕草しぐさのまま、書籍をさがしていてくれた。
 静かな空間で、おごそかな雰囲気が漂う中、誰も気づかないの。
 愛し合う私とエリオットが、そばに寄って過ごしているのに。
 うん、そうね。
 ここには誰も来ない。
 神様が見ているかもしれないけど――私とエリオットが結ばれる事、きっと許してくれるはず。
 物心つく前から聖女として、かしずいてきたんだもん。
 今夜ぐらい、何も見なかった事にしてくれるはずよ」

「ありがとう、アリス。
 僕を受け入れてくれて。
 君の身体の中に、僕がある事になるが、怖がらないでくれ。
 女性にとって初めては、ほんの少しつらい事があるらしいが、不安を感じたら、僕を求めてほしい。
 手を伸ばしてくれてもいいし、きついてきてくれてもいいし、言葉で表現してくれてもいい。
 君の些細なメッセージに、必ず、気づくと約束しよう。
 さあ、手を身体から少し離してごらん。
 裸で横たわる君の姿、美しいよ。
 わずかにひねって首を何度も動かしているのに、視線の先は、つねに僕な事、とても嬉しく思う。
 ほら、足を大きく開いたまま、ひざを立てて。
 大切な部分に僕が入る事で、自由を奪われたように感じるかもしれないが、そうではない。
 二人の心が近づくだけだ。
 書物に囲まれる中、互いの手の温もりを得る事さえ許されなかった僕とアリスは、今から一つになる。
 おいで、僕だけの聖女さま」

「……はい。
 エリオット、入ってきて。
 私の中に。
 一つになりたい。あなたを受け入れて……私に何も与えてくれなかった神様に、見せつけてやるの。
 聖女である前に、私は、私なんだって――」

「さあ、解放してあげよう。君を縛っているものなど、何もないよ。
 腕を伸ばして、僕の身体にきついてきてくれ。
 ――じゃあ、入るよ」

「う……うはぁ……あ……あ、あ、あ、あ……エリオットが、はいって……わたしのなかに……はぁん」

「……アリス……聖女さま……僕は、必ず君を……花嫁に……こ、こんなにいとおしいと感じる姿を見せつけられて……手に入れないなんて……できない……僕は、もう……最後まで前へ前へと進むしかない……『魔の力』を注がれ……君が、魔の者になれるように……僕の手の中に、永遠にいられるように……ああああ」

「え……ああああ……あ……あ……エ、エリオット?
 エリオットっ!
 あ……あ、わ、私! 私っ!
 い、いやぁああああ……ま、魔王に……あああああっ!」

「ああ。
 魅惑の魔法が解けてしまったか。
 ふふ。
 まあ、いい。
 しっかり僕との行為を楽しめたという事だな。
 そう、君は、魔王エリオット・ジールゲンの手の中から、永遠にのがれる事はできない。
 つのある悪魔の僕は、どうかな?
 そうか、人間に化けていた時の僕を、そんなにも深く愛してくれていたんだ。
 では、また、夢見心地の夜を与えてやると約束しておこう」
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