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急な最終回

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マリア達が宿屋でくつろいだいた頃。
都の中心の方から大きな爆発音のような
音がした。明らかに花火の音等とは
違う物だった。マリア達が駆けつけた時、
マリアが眼光の先に焼き付けたのは
都中がすでに火の海だった。その姿を
見たマリアは思わずかつてのデュアル王国と
姿を照らし合わせてしまった。

「...マリア!」
そうリアスに呼び掛けられてマリアの意識は
戻った。
『...都の中心に皆は集まっていた。
生存者はゼロと考えた方が利口か?...』
リアスがそう考えている内に気がつけば
横にいたはずのマリアがいなかった。
先程まで一緒にいたはずのアリスがいない
のだ。
「...アリス?」
マリアはそう呟きながら瓦礫を
のけていった。そんな場所にいるはずもなく
あるのはただただ無惨な遺体だけ、
それも都の住人だ。マリアの心は悼むで
あろう。そう思っていたその時だ。
「...一国の王女であるものが...はぁ、
無惨だねぇ!」
そう聞こえた方向を見てみるとそこに
いたのはアリスを脇腹に抱えた金色の髪を
した男性。声には聞き覚えがある。
前のまがまがしい城で聞いたことの
ある声だ。
「...アリス!」
マリアはそう叫んでその場まで走って
駆け寄った。一心不乱にそれしか見えなく
なるほどに走った。だが一向にアリスからの
返事はない。
「...もう、なんとなくわかってたよ...」
そう呟いた頃からか、マリアの走る速さが
遅くなっていた。そしていつしかマリアは
その場に立ち止まり、下をうつむいていた。
マリアの中ではアリスはもう半分死んだ
状態にある。そんな亡き人を追いかけたって
意味がない。そう思っていたその時だ。
「お姉ちゃん!」
そう呼び掛ける方向を見てみればそこに
あったのは彼の脇腹でわずかだが、
自分なりに抗っているアリスだった。
「アリス!」
そう言って手を伸ばしたってアリスには
到底届かない。分かっていた事だ。
だから走った。手があと少しで
届こうとしていたその時、
「あぁ、アリスってこいつか、
ならいりないや」
そう言ってアリスを地面に投げ捨てた。
それをすぐさま助けに行ったマリア。
マリアはアリスを抱えて彼の方を
睨み付けた。よくよく見ると彼の服装は
ただのワイシャツに黒いズボン。
その格好で自分達に勝てるわけがない。
そう思ったマリアは彼に襲いかかろうと
した。だが、シャルもその姿にため息を
ついた。
「俺の狙いはお前なんだよ!」
そう言った瞬間ポケットの中からナイフを
取り出してきた。
『...もうだめだ』
そんな言葉がマリアの脳裏をよぎった。

三十七話
『...もうだめだ』
マリアの脳裏にその言葉が浮かんだ時、
それと同時にこんな感情もうまれた。
『よかった。アリス達は無事ですむんだな』
そう思った時、マリアの緊迫した表情が
少し緩んだ。ナイフで刺された時の音が
マリアの脳内でこだました。
だが一向に痛みが来ない。それを不思議に
思い、目を開けてみるとそこにあった光景は
マリアではなくリアスの右腕にナイフが
刺さっている様子だ。
「...え?...」
マリアがそれを訳も分からず見ていた。
「はやく!」
リアスがそう叫んだ瞬間、その言葉の意味を
理解するより早くアリスを抱いてその場を
すぐに離れた。遠目に見てもわかる。
リアスが痛みに苦しんでいる。おそらく
致命傷だったのだろう。それを見るシャルも訳が分からず少し固まっていた。
「...あなた、シャルですね?」
リアスがそう聞いた。その呼び掛けで
意識が戻ったシャルはそれに答えた。
「...なんで知っている?」
「調べましたから」
リアスがそう意味の分からない言葉を
述べた。シャルはそう思い込んだ。
「そんな訳ないだろ!第一調べる術も
ないだろが!」
そう叫んだシャルは周囲が見えなくなるほどにナイフをがむしゃらに振り回した。
それを全て避けていくリアスを見たシャルはその戦いに勝ち目は無いと思った。
「そんなわけ...そんなわけ...」
シャルはそう弱々しく呟いていた。
そう呟いている時、一瞬動きが鈍っていた。
それを見計らったリアスはシャルのナイフを
奪い、驚いて体重が後ろに偏ったシャルの
肩を持ってそのまま押した。
地面に打ち付けられたシャルの頭部、
リアスはそんな彼の額にナイフの先端を
突きつけた。
「チェックメイトです」
リアスがそう呟いた瞬間、シャルは
嗤い始めた。
「なにがおかしい?」
「武器一つ奪えば勝てると思っている
お前の頭だよ!」
シャルがそう言った瞬間、リアス達の
周辺が青い炎で囲まれた。
「...!火炎属性か!」
「そうだよ!大正解!最も俺には使い魔が
いないから俺の身体事燃え尽きるがな!」
リアスはその状況をどう打破するべきか
考えた。その結果出た答え、それは彼の
心臓をナイフで貫く事だった。
ファイナルスターを使えばここらいったいが
間違いなく平らになる。
彼をナイフで刺した瞬間、
炎は消えていた。
リアスがマリア達の元に戻ってきた時、
「また町を探さなきゃですね?」
「...そうだね」
「まだ家族でいますか?」
リアスが不意にそう聞いてきた瞬間、
マリアの中では正直無理だった。
嘘をついているようで無理だった。
「いや、やめよう」
マリアがそう答えるとリアスは一度頷いて
空を見た。夕焼けが沈もうとする頃、
マリア達は都を出た。
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