上 下
1 / 37

異世界ライフへようこそ

しおりを挟む
『...俺は情けない』
アニメでそう言う主人公の言葉が真の心に
妙に突き刺さった。
容姿は黒髪の一般的な男性だ。
チャームポイントといったらそのボサボサな
髪しかなかった。そんな真は
今までサラリーマンとして生きてきた。
といってもまだ十年も経っていないまだまだ
新米の身分だ。
家族とはとても仲が良く、いつも
ゴールデンウィーク頃になると、
周りには田畑しかないような実家に帰り、
実家の農業の手伝いをしてきた。
だが、真はそんなことをしていて人生を
終えていいのか?そうたまに考えた。
「...はぁ」
真はため息をつき、スーツに身を包み、
ネクタイを締めた。
いつも通り午前八時に
家を出て、いつも通り家から徒歩十分の
駅に向かい、八時十五分の電車に
乗ろうとした。だが、その時である。
後ろから何かに刃物で突き刺された感覚、
それとともに身体に走る痛み、
薄れゆく意識、ふと後ろを振り向くとそこ
には誰もいなかった。
先程まで後ろには電車を待つたくさんの人が
いたのに誰もいなかった。
それを不思議と感じた。真は倒れ行く視界を
最後に目を閉じた。

真が次に目を覚ましたのは、
先程自分が倒れた駅だった。
「...俺、死んだんじゃなかったか?」
刺された腹部を触ったが、そこには
傷がなかった。
「...哀れだ」
駅のアナウンスがそうなった。
真が誰だ!?と声を上げる前に一つの
電車が駅に止まった。
そこに入るのが気味悪かったから真は
入らずにただそこに立ち止まった。
それからしばらくした後の事だ。
「...そろそろ入って来てくれない?」
そう電車の中からおじいさんのような
声が聞こえてきた。
「なんでですか?」
真もそれに負けじとそう質問しかえした。
「だって...入って来てくれないと、物語は
進まないし...私神だし...」
神を名乗る人物は少しいじけていた。
「神だったらその姿見せてくださいよ」
真も意地になり、そう言った。
「...駄目だよ、ご老人はいたわらないと...」
神を名乗る人物はそう言っていた。
「神なんですか?老人なんですか?
はっきりしてください」
真がそう言うと神を名乗る人物は急に
泣き始めた。
それにはさすがに気が引けた真は
仕方なく電車の中に入っていった。
「...で、あなたが神ですか?」
先程の声の主は車両の奥で、
まだいじけていた。
だが、木製の髪より少し長い杖、
首が見えなくなる程長く生やした髭。
服は白い布を身体に巻き付けている
ようだった。どうやら本当に神だった
ようだ。真がそう考えた理由は
神でもなければ、そんな恥ずかしい格好を
して電車に乗っていることは
できないだろう。
「...だって仕方ないじゃん、天界だって
少子高齢化社会なんだから」
そうぼそぼそと呟いていた。
「...こっちが悪かったから、何ですか神様?」
真がそう言うと、神は急にとても喜んだような素振りを見せた。
「そうだよ!神だよ!」
そうはしゃいでいた。正直年上の人が
はしゃいでいるのを見るのは少し
辛かった。
「...ごほん、天海真くん、君には異世界に
行ってもらう。」
神はやっと我に帰ったようだ。
「...へぇ、異世界ねぇ」
真はそう言いながらおもむろに鞄から
水筒を取り出して、優雅にお茶を
飲み始めた。
「...何でそんなにら落ち着いてられるの?」
神にそう聞かれたから
「いやだって、転生するってことはもう
日本食食べられないって事でしょ?」
真はそう答えた。
「...そうだけどさ」
神がまたいじけそうになったため、
真はお茶を飲むのをやめた。
「...で、どんな世界に僕は飛ばされるん
ですか?魔王が支配する世界ですか?」
真は神にそう聞いた。
「...え?そんなわけないじゃん、
まさかまだファンタジーとか信じてるの?」
神にそう挑発されたため、真も少し
イラっときた。
「...はぁ、じゃあどんな世界なんですか?」  
真もそこは怒りをぐっと抑えてそう聞いた。
「魔法がある世界としかいえんな」
神はそう言いながら、魔方陣のようなもの
を真を囲むようにして
電車の床に書き始めた。
「何してるんですか?」
真がそう聞くと
「え?転生の準備だけど?あぁ、大丈夫
大丈夫向こうには私の使い魔もいるから」
神はそう答えながら、その杖を
振りかざした。
その瞬間、魔方陣は青く光だした。
真もその光を見て意識がとうのいた。
「やべ、ミスっちゃった」
真はそう最後に聞こえた声に幻聴である
とそう願った。
次に目を覚まし、真がいたのは
ある女性の腕の中だった。
「この子の名前は...そうねぇ、
マリアがいいわ」
どうやら彼女がこの世界での母親らしい。
金色の髪に、青い瞳、その瞳はとても
優しそうだった。
『なんで、俺、異世界なのに赤ちゃん
から始めてるの?』
そうマリアが言おうとしたが、
口が動かなかった、というよりかは発音が
出来なかった。
それに困っている真をじーっと見つめる一人の執事のような格好をした女性がいた。
マリアはそれにとても違和感を覚えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】混沌の闇は子育てに奮闘する!~普通の子どもはそんなに強くはならないと思う~

かのん
ファンタジー
 混沌の闇から世界を救うのは一人の勇者。しかし混沌の闇は呪いのように誓う。 「いずれ我は甦る!その時はこの世界を混沌の闇で呑み込んでやる!」  そう、粋がっていた時もありました。  これは混沌の闇が、人の子を拾い、世界を滅ぼしそうにたまになりながらも、愛を知り、子を育む物語。  第12回ファンタジー小説大賞にエントリーしようと思います!  応援よろしくお願いいたします!

チート能力を持って、異世界転生しました!

泥水すする
ファンタジー
 俺の名前はスバル!今年17歳になる高校生だ!  ある日、幼馴染のタケヒコとヒナコと一緒に下校していると、銀行強盗の乗った車に轢かれ、死んじまった!!  そして、何故か俺の前に女神は現れた!  どうやらこれが異世界転生ってやつらしい!  よし、頑張るぞ俺!!

緑の魔女ルチルの開拓記~理想の村、作っちゃいます! 王都に戻る気はありません~

うみ
ファンタジー
 緑の魔女と謳われた伯爵令嬢ルチルは順風満帆な暮らしを送っていた。  ところが、ある日突然魔力が消失してしまい国外退去の命を受けることに。  彼女が魔力を失った原因は公子と婚約したい妹による陰謀であったが、彼女が知る由もなかった。  令嬢としての地位を失い、公子との婚約も破棄となってしまったが、彼女は落ち込むどころから生き生きとして僻地へと旅立った。  僻地に住む村人は生気を失った虚ろな目をしており、畑も荒れ放題になっていた。  そこで彼女はもふもふした大賢者と出会い、魔力を取り戻す。  緑の魔女としての力を振るえるようになった彼女はメイドのエミリーや一部の村人と協力し、村を次々に開拓していく。  一方、彼女に国外退去を命じた王国では、第二王子がルチルの魔力消失の原因調査を進めていた。  彼はルチルの妹が犯人だと半ば確信を持つものの、証拠がつかめずにいる。  彼女の妹はかつてルチルと婚約していた公子との婚約を進めていた。    順調に発展していくかに思えた僻地の村であったが――。 ※内容的には男性向け、女性向け半々くらいです。

推しの死亡フラグを折りたい!

綾里 ハスミ
ファンタジー
美桜は気づくと、大好きなゲーム『ケムプフェンエーレ』の世界に転生していた。こうなったら、大好きな推しであるシメオン第二王王子の死亡フラグを折るしかない!! 【学習技能】と言うチートスキルを所持して、果たして美桜は無事に、シメオン王子の死亡フラグを折れるのか!? ■こちらの作品は、恋愛要素2割:戦闘要素8割の作品です。戦争と恋愛が同時進行して行くお話が好きな方にオススメします(・∀・)

TS少女の猫耳ライフ ~チート装備を得て最強になったのはいいけどよ……なんで女の体になってんだ!? しかもその装備も何か変だしよお!~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
 俺の名前はカエデ。  そんなこんなで、異世界に行くことになった。  それ自体はギリギリ受け入れられなくもないのだが―― 『申し訳ありません。こちらの手違いで、転移時に少女の体に変質してしまったようです。テヘッ』 「おいこらっ!!」  つい、突っ込んでしまった。  女神のミスで、俺の性別が男から女に変わってしまっていた。  いわゆる、TSというやつだ。 『せめてものお詫びとして、最強のチート装備を送ります』 「おおっ! こういうのを求めていたんだよ!」  過ぎてしまったことは仕方ない。  さっそく、最強のチート装備とやらを確認しよう。 「……って、何だこれ?」  猫の着ぐるみじみた装備だ。  猫耳付きのフードに、モコモコしたボディ。  さらに、肉球付きの手袋と足袋まである。 『では、ご健闘をお祈りしていますね』  女神からの連絡はそこで途絶えた。  くそ~! 「こうなりゃヤケだ! 少女の体に猫耳装備をまとい、この世界で無双しまくってやるぜ!!!」  せいぜい楽しませてもらうことにしよう。

腹ペコ召喚獣VSドラゴン肉「あれ~召喚士くん、キミのペットさあ、オレの焼いた肉をガツガツ食ってますよ~」「ざこ胃袋❤」

椎名 富比路
ファンタジー
一二歳以下のちびっ子たちを対象にした「S級召喚士認定試験」も、最終試練。 その題目は「待て!」 目の前の肉を、三分間ガマンするだけ! 審査員で、一流料理人の主人公は、相棒であるドラゴンニュート少女のシッポ肉で迎え撃つ! その味は特A級すら超える特S等級! 果たして、召喚獣は誘惑に耐えられるか? 召喚士は相棒を押さえ込めるのか? ……ダメでした。 アルファポリス 次世代ファンタジーカップ 「進化系ざまぁ」 投稿予定作品。

そうです私がモフリストです

ポンとパンとプン
ファンタジー
よくある異世界ものです クマに殺された男が剣と魔法の世界に生まれ変わり頑張って生きていきます 主人公(マイケル)は普通の強さで異世界お約束の鑑定や空間収納などのチート能力はありません ハーレム要素無し マイケルは見た目がもふもふしたモンスターだけをを仲間に出来るテイマー系のクラスで テイムした仲間たちと世界中を冒険します

呪われた悪役令嬢は1000年幽閉された後、過去へ戻され最強を目指す!!~世界を救うなんてついでですわ~

無月公主
ファンタジー
王や聖女嵌められて悪役令嬢となってしまったエルメリーチェ。 不老不死の呪いをかけられ白い塔に1000年幽閉され、外へ出て見ると世界は崩壊していた。 世界最強と謳われた曾祖父の力により過去へ戻され、隠された真実を次々と知る事になる。 世界はどう変動して行くのか!?とんでもない相手を好きになってしまったが実るのか!?世界最強の曾祖父を超えられるのか!?エルメリーチェの人生は始まったばかりだ。

処理中です...