R-指定ロリっ娘彼女

いまち サク

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何よりも嬉しい日

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これは奈美と大翔が家に帰った後の
美琴と凌央の話。

「付き合ってないよ」
美琴のその言葉が凌央の気持ちを動かした。
「よかった...」
凌央はそう小さく呟いた。
「そういう凌央くんだって付き合ったり
してて」
美琴はそう凌央をおちょくるようにして
言った。その顔はどこか切なく感じた。
「...いや、俺周りからは不良扱いだし、
モテるわけがないよ」
そう凌央は呟いて頭をかいた。
「だったらさ、嫌われ者同士で 
付き合ってみない?そうしたらお互いに共感できて気が楽になるかもだし」
美琴の言葉を冗談だと思った凌央は
「冗談でも男に告白したらダメだぞ」
と凌央は美琴に言った。
「...嘘じゃないよ、付き合おう」
美琴は笑顔で言った。だが美琴の目には
確かに涙があった。その涙が一粒
美琴の頬を流れる頃凌央は気づいた。
これは自分の母から感じた『愛』と酷似して
いることに、
「...ほんとに俺でいいのか?」
凌央は美琴にそう聞いた。
「凌央じゃないとダ...」
美琴がそう言って凌央の手を掴もうとした時
凌央は美琴の手を振り払い、
「...ごめん、1日だけ待って」
そう言い残して教室を去った。

美琴は凌央が去った教室で一人泣いていた
美琴は凌央に振られたと思った。
そう確信した。自分が好きだった相手に
1日待ってと言われたんだ。
これはもう美琴の青春が終わってしまった
と感じてもおかしくない。
美琴は誰もいなくなった教室で
泣き崩れた。
もう全部が嫌になるほどに美琴はショック
だったらしい。明日が来るのが怖い
そう考えてた中、奈美からの一通の
連絡が来た。
「速報速報、凌央の好きな人が分かった!」
奈美からのその連絡は余計に美琴の心を
傷つけた。だが美琴も興味本意で
「誰なの?」
と聞くと
「なんとなんと、美琴あなたよ、
いやぁもうこれで恋愛で悩むことないね」
と奈美から送られてきた。
美琴にはその後の長い文が見えない程に
美琴自身を愛してくれる人が
美琴自身が愛している人だということに
とても喜んだ。明日が来るのが怖いなんて
気持ちはもうなくなり、明日が楽しみだと
いう感情が美琴の心を満たしていた。
美琴は帰路についてもにやけ顔が
とまらなかった。

あの時、どうして待ってと言ったか
その理由があまりわからずにいた凌央、
多分理由としては突然の事に驚き、
気持ちを整理しようとしただけかも
しれない。だが凌央の中にはもうひとつ
凌央が待ってと言った理由があった。
それが分からなかった。
そう考えこみながら帰っていた凌央に
一通の連絡がきた。
「美琴ちゃんの好きな人分かったよ、
その相手は凌央だって、よかったね」
と大翔からの連絡があった。
そのメールを見て凌央は本当の自分の気持ちに気づいた。それは、美琴が本当に自分の事が好きなのか、確証が持てなかったからだ。
愛に形なんてない、そう言う人もいるが
凌央にはその気持ちが分からなかった。
形なきものにどう感情移入しろと?
そう考えて十五年間生きてきたが、
確証のないものに恋をする、それが
愛なのだと、そうと分かった凌央は大翔に
「教えてくれてありがとう」
と返信した。それが分かった時の凌央の
目には涙があった。
携帯の画面にこぼれ落ちるほどのたくさんの
涙があった。

翌朝、凌央は美琴に昨日の返事をしようと
覚悟を決め、学校に行った。
道中大翔たちとばったり美琴に会ったのは
少し驚いたが、大翔たちが家に忘れ物を
取りに行ってくれたことが好都合となった。
「昨日の答えなんだけどさ...」
凌央は美琴にそう言った。
「...うん」 
そう言った美琴の顔は凌央には恥ずかしくて
見ることができなかった。だが凌央は会話を続けようと努力した。
「いいよ、付き合おう」
話を長くしようとしたが気がついたら
凌央の口からはその言葉が溢れていた。
とその時、駅の近くにある公園から
聞き覚えのある二人の驚いた声が聞こえた。
そう、大翔と奈美である。
「なんでここにいるの?」
凌央がそんなことを少し冷めた目で聞くと
「そんなことはどうでもいい!
付き合うって本当!?」
大翔のその言葉にいつもの独特な
口調の面影はなかった。
「...うん」
凌央はそう答え、美琴は一度縦に首をコクリと振った。
「おめでとう、絶対彼女を泣かせるなよ」
と大翔は凌央の手を大翔の手で包み込む
ように握った。
「よかったね、美琴ぉ、あい凌央絶対に
美琴に変なこと教えるなよ!」
と奈美もまた美琴に抱きついた後、
凌央を睨んでそう言った。だが、凌央が
「当たり前だろ...」
と言ったら
「あぁ、でもエッチはギリギリセーフな」
と奈美の口から気の抜けるような言葉が
でて、その場の空気は皆が突っ込みたいと
いう気持ちでいっぱいになった。
だがそれ以上に凌央と美琴は初めてお祝いされたのが
自分達が信用して止まない親友だったことが
何よりも嬉しかった。
凌央と美琴はお互いの顔を見た
二人は笑顔だった。
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