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第3日目
第18話 到着3日目・昼その1
しおりを挟む※『或雪山山荘』2階・見取り図
私、ジョシュアとコンジ先生がこの『或雪山山荘』に到着して3日目の朝を迎えました。
この日の朝、私は誰かの叫び声で目が覚めたのです。
また何か起きたのか……? 叫び声で起こされるだなんて!
同じ階か、でも少し遠い……。館の反対側かもしれない。
「ジョシュア! 起きてるのか? オレだ! コンジだ!」
コンジ先生の声がドアの外から聞こえる。
先生もやはりあの叫び声で起きたらしい。
「はーい! コンジ先生。またなにかあったのでしょうか?」
「ああ。ジョシュア! いや!? 僕もまだ確かめてはいないが、『左翼の塔』側でなにかあったらしいな……。」
「あ、すぐ、行きます。ちょっとまってください!」
私は自分の腕時計を見て、朝まだ6時前だと確認する。朝食の時間には早いなと一瞬思ったけど、今はそれどころじゃあなかったわ。
取り急ぎ、服を上からサッと着て、部屋の扉を開ける。
ちょうど、コンジ先生の隣の部屋の扉も開いて、ジェニー警視も顔を出した。
「あれはイーロウさんの声だな。また事件が起きたらしいな。キノノウくん。」
「ああ。ジェニー警視。そのようだな。」
「あ、おまたせしました。先生……! あ、ジェニー警視。おはようございます!」
「ああ。おはよう。ジョシュアくん……。また事件らしい。」
「ええ。そうみたいですね。」
「よし! 行くぞ。『左翼の塔』側の2階だ。廊下をまっすぐ行くぞ。」
「エラリーンが……。殺された……。」
私たちが『左翼の塔』側の2階を『左翼の塔』に向かって廊下を曲がったところで、廊下に呆然と立ち尽くすイーロウさんの姿が見えたのだ。
イーロウさんは茫然自失になっていて、彼の前の扉は開きっぱなしになっていた。
エラリーンさんの部屋の前だ……。
彼女の部屋は大部屋で2部屋分で1部屋になっている。
『コの字』2画目の部分『 _ 』の部分先端に「左翼の塔」があり、そこから右の曲がり角部分に向かって真ん中に廊下が通っていて、上側が塔に近い順に、
「サッカー選手ジニアスさんの部屋」、「俳優イーロウさんの部屋」、「エレベータールーム」となっていて、
下側が塔に近い順に、「公爵夫人エラリーンさんの部屋」が2部屋分続き、「宗教家アレクサンダー神父の部屋」となっている。
「いったい何が……!?」
ジェニー警視とコンジ先生が先にエラリーンさんの部屋をのぞいた。
私もその後に続き、部屋の中を見た。
その部屋の中は、真っ赤に染まっていた。
血の赤、赤、赤ー。
壁や床に飛び散る血しぶき。
そして、ベッドの上に横たわる無残な姿の女性……らしき人物。
「エラリーンさん……。」
間違いなく彼女だった。
その喉は食い破られ、はらわたが引きちぎられ、手足はズタズタにされていた。
惨劇の部屋に主役然としてその中央にあるベッドの上に横たわっていた。
そして、周囲には書類が散乱していた。
「イーロウさん! 何があったのですか!?」
ジェニー警視がいまだ廊下で立ち尽くしていたイーロウさんに問いかけた。
「あ……。ああ、エラリーンに朝の挨拶をしようと部屋に寄ったんだ……。そうしたら……。こんな……。」
イーロウさんはガタガタ震えながら声を絞り出した。
「ジェニー警視! それより、パパデスさんに知らせてください!」
「あ……。ああ、そうだな。キノノウくん。この場は任せたよ。誰にも手を触れさせないでくれ!」
「わかっていますよ。現場保存の鉄則ですね。」
「その通りだ。」
ジェニー警視がパパデスさんを呼びに行く。
私は部屋に入らず、イーロウさんのそばで、彼に気をかけていました。
おそらく恋人同士であっただろうイーロウさんにとって、彼女の死はどれだけショックでしょうか……。その悲しみは計り知れないと思う。
「ああ……。エラリーン。これから俺はどうしたらいいんだ……。」
「イーロウさん……。」
コンジ先生は部屋に散らかっていた書類の一枚を拾い上げ、じっと見ていた。
何の書類なんでしょうか……。
「キノノウ様! また犠牲者が出てしまいましたか!?」
駆けつけてきたのはシープさんでした。
ジェニー警視と一緒に慌てて来られた様子でした。
「ああ……。これはひどい……。エラリーン様……でございましょうな。」
「パパデスさんには知らせておいた。ショックを受けていたので、今はシュジイさんに付き添ってもらっている。」
「ああ、それで、シープさんと一緒に来られたのですね?」
「その通りだ。」
「死因はやはり、喉への一撃であろうなぁ。」
「断言はできませんが、そのようでしょうね。血の飛び散り方から計算すると、先に喉へ一撃、その後、内臓へ食らいついたと見える。手足の傷は抵抗した際に負ったものだろう。」
「うむ。私もキノノウくんと同じ見解だ。」
「コンジ先生……。やはり、人狼のしわざでしょうか?」
「だろうな。」
私たちの会話を聞いていたイーロウさんが声を荒げた。
「ちょっと待てよ! 人狼ってなんだ? 何を言ってるんだ!? おまえたち……。何か隠していないか!?」
「イーロウさん。あなた方には黙っていましたが、人狼という化け物がどうやらこの館内に潜んでいるらしいのです。」
「し……しかし! 昨日、館内を捜索してそんな獣はいなかったって言ってたじゃあないか!?」
「はい。まあ、それは、その通りなんですが……。」
「説明しろよ!」
「まあ、イーロウさんも落ち着いてください。後ほど、みなさんに説明しますので。とりあえず、ダイニングルームでまた集まりましょう。シープさん! みんなを起こしてくれるかな?」
「もちろんでございます。」
「ジェニー警視は、悪いが、シュジイさんを呼んできてほしい。念のため検死してもらおう。」
「それはそうですね。じゃあ、ついでにカンさんとメッシュさんも呼んでこよう。検死が終わったら……、地下室へ遺体をまた運んでおいてもらおう。」
「そうですね。」
話を聞いていたイーロウさんは、廊下の方へ踵を返し、振り向きもせずこう言った。
「後で……。きちんと、説明してもらうからな!?」
そうして、ダイニングルームの方へ歩いて行ってしまいました。
「やはり……。人狼の存在をみなさんに隠していたのはまずかったですかねぇ。」
私は、そんなイーロウさんの後ろ姿を見ながら、コンジ先生に言った。
イーロウさんはエラリーンさんを失って本当にショックだったから、怒っているんだわ。
するとコンジ先生は私のほうを向きもせず、こう言った。
「でも、彼、涙一つ流していなかったな。」
え……!?
たしかに、イーロウさんは涙は流していなかったけど。
「いや。コンジ先生! それはそうですけど、この惨状を見てショックが大きかったからじゃあないですか?」
「ふむ。君はそう思うのかい? そうかもしれないし、そうじゃあないかもしれない。少なくとも僕の目には彼がエラリーンさんを亡くして悲しんでいるようには見えなかったと言うだけさ。」
「そ……それは……。」
「ま、それはどうでもいい。それより、ジョシュア。これを見てくれ。」
「あ、それは落ちていた書類ですか?」
「ああ。これには、エラリーンさんとある人物との今後の取引についての契約内容が書かれているんだ。」
「え? 何の取引ですか?」
「エラリーンさんの財産の管理……と言ったところか。」
「財産の管理!?」
エラリーンさんと言えば、まだ若くして未亡人になったイギリスの公爵夫人です。
亡くなった公爵の資産をたった一人で相続したので莫大な財産を持っている。
「いったい誰との取引なんですか?」
私はコンジ先生に質問をした。
「それは、亡くなったアイティさんだよ。」
なぜ? 死んだアイティさんとの取引の書類が部屋に落ちていたの?
どうしてエラリーンさんが襲われたのか?
その答えは、ベッドの上で冷たくなっている彼女自身は知っているに違いないが、もう語ることはできないのであったー。
~続く~
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