20 / 62
第2日目
第15話 到着2日目・昼その6
しおりを挟む私たち、私とコンジ先生の二人は、まずはパパデスさんの部屋に向かった。
ちょうど、シュジイ医師がパパデスさんの部屋から出てきたところに出くわした。
「ああ! ドクター……。ちょっとお話がありまして……。今一度、パパデスさんの部屋へどうぞ。」
「え? どういうことかね?」
「まあまあ。先生。立ち話も何なので、どうぞ部屋の中へ。」
私も自分の部屋でもないのにちゃっかりパパデスさんの部屋にシュジイ先生の身体を押し込む。
「ああ。キノノウ先生。なにかわかりましたか?」
私たちが部屋に入ると、パパデスさんが声をかけてきた。
「はい。その前に、パパデスさんにお聞きしたいことがありまして……。」
「ふむ。何の話かな? どうぞ。答えられる範囲であればお答えしますよ。」
「ありがとうございます。昨夜なんですが、夕飯が終わった後、どうなさっていましたか?」
「夕飯の後……ですか? それがなにか? 事件は深夜の出来事だろう? ……まあいい。」
パパデスさんは一瞬、戸惑った様子を見せたが、素直に答えてくれた。
「そうだな。夕飯の後はすぐに自室へ引きこもらせてもらった。なにせ健康に優れないものでね。」
「その時はお一人で?」
「いや。シープのやつと我がシンデレイラ家所有の株や債券の今後の展開や取り扱い、さらにはビジューさんとの取引についてのことなどいろいろとな。打ち合わせをしておったわい。」
ええ。さきほどのシープさんのお話とも合致しますね……。
続けてコンジ先生がシュジイ医師に話を振った。
「ドクター。あなたはいかがですか? 夕食の後ですが……。」
「ええ。ワタクシはジニアス様、アイティ様と遊戯室でビリヤードをしておりました。……ああ! 途中でジェニー警視がいらっしゃったので、そこからはワタクシとジェニー警視はチェスを指しましたね。その後、パパデス様の検診のお時間になりましたので、御暇させて頂き、パパデス様の部屋に行きました。部屋にはパパデス様とシープ様がいらっしゃいましたよ。」
「そのお時間は?」
「ええ。22時です。いつも検診のお時間がその時間なもので。」
「診察は何時に終えられたのです?」
「はい。パパデス様の自室でシャワーを浴びられるのをお手伝いさせて頂き、診察を終えてパパデス様の部屋を出たのは……えーと……。」
「22時半ごろだな。ドクターが出てから、私が自室でシャワーを浴びようとした時に、23時の時計の音がしておったわ。ああ。もちろんドクターが出てすぐ部屋の鍵はかけたぞ。」
パパデスさんがそう証言した。
へえ。ああ、たしかに部屋の隅に、シャワー室……ありました。パパデスさんは自室にシャワー室がついてるんですね。
まあ、そりゃそうか。金持ちだし、ご病気ですもんね。いちいち1階のシャワールームまで行くのは大変そう。
「ああ。パパデス様。ありがとうございます。そうでしたね。その後はワタクシはシャワーを浴びさせて頂き……、ああ、その際イーロウさんと会いましたね。彼はワタクシの後にシャワーを浴びられたのです。その後……、自室で休ませて頂きました。」
「自室に戻ったのは何時頃でしたか?」
「部屋の時計を見ましたので23時10分でございました。」
「なるほどね。ありがとう。」
私たちはその後、キッチンへ向かいました。
メッシュさんの確認を取るためです。
メッシュさんは忙しそうに後片付けと、昼食の準備をしていましたが、協力して頂けました。
「あっしは、夕食の後はカンのやつと一緒にキッチンで片付けと、今日の朝食の仕込みなどをしてましたね。ああ。途中、2回ほどワインとつまみを遊戯室のお客様に持っていきましたがね。時間は……21時と22時ですぜ。んで、その後はカンは警備室で、あっしはキッチンで過ごして、それぞれシャワーを浴びてから自分の部屋で寝ましたよ。」
ふむふむ。カンさんのお話とも合いますね。
「シープさんはキッチンへ、来ましたか?」
コンジ先生が質問する。
「ああ。いつもあの人は決まって晩酌に来ますぜ。そうですねぇ。23時過ぎだったんじゃあないかな。しばらく話をして、あっしはシャワーへ行かせてもらいましたけどね。」
****
※アリバイ表
こうして私たちはジェニー警視、シープさんらと手分けしてみなさんの昨夜の夜の行動を確認したのでした。
それが以下のとおりです。
では、シンデレイラ家の方々。
パパデスさん。
20時30分~22時 自室。 シープさんと一緒。
22時~22時30分 自室。 シュジイ先生と一緒。
以降、証言なし。
ママハッハさん。
20時30分~22時 自室。
22時~22時30分 シャワー。 ※シープさんが呼びに行っている。
シャワー後、シープさんに声がけし、自室へ戻る。
以降、証言なし。
アネノさんとジジョーノさん。
20時30分~22時30分 アネノさんの部屋。 アネノさんジジョーノさんの二人一緒。
22時30分 アネノさんがシャワー。 その間、シープさんとジジョーノさんが一緒。
23時00分 ジジョーノさんがシャワー。 アネノさんは自室へ戻る。
23時30分 ジジョーノさんも自室へ戻る。
以降、証言なし。
最後にスエノさん。
20時30分~23時 書斎でずっと本を読んでいたという。証言なし。
23時30分ごろシャワーを浴びて自室へ。
以降、証言なし。
そして執事のシープさん。
20時30分~22時 パパデスさんの部屋。 パパデスさんと一緒。
※22時に主治医シュジイ先生が部屋を訪ねてきた際、顔を合わせている。また部屋を出た際は、ジョシュアと会っている。
22時~22時30分 ママハッハさんの部屋に行ってから、自室へ移動。
※22時30分前に戻ってきて浴場前で待機していたという。シャワーから出てきたママハッハさんが声がけし、アネノさんの部屋に行った。
22時30分~23時 アネノさんの部屋。 アネノさんはシャワーを浴びに移動。ジジョーノさんと一緒。
23時~23時30分 キッチン。 メッシュさんと一緒。
23時30分以降 自室。
以降、証言なし。
管理人カンさんとメッシュさん。
20時30分~22時 キッチンおよびダイニングルーム。 二人はほぼ一緒。
21時、22時の2回、メッシュさんは遊戯室へ移動。※ジェニー警視、シュジイさん、ジニアスさんの証言あり。
22時~23時 カンさんは警備室。 証言なし。
22時~23時 メッシュさんはキッチン。 証言なし。
23時~23時30分 カンさんは見回り。
※見回りの際、アイティさん、シュジイ先生、ジョシュア、スエノさんと会っている。
23時~23時30分 キッチン。 メッシュさんはシープさんと一緒。
※カンさんがシープさんとメッシュさんがキッチンにいるところを見かけている。
23時30分~24時 メッシュさんがシャワー。カンさんは自室。交代の際メッシュさんはカンさんに声がけした。
24時~24時30分 カンさんがシャワー。その際スエノさんと会っている。
以降、証言なし。
シュジイ先生。
20時30分~22時 遊戯室。 アイティさん、ジニアスさん、ジェニー警視と一緒。
22時~22時30分 パパデスさんの部屋。 パパデスさんと一緒。
※22時にシープさんと会っている。
22時30分~23時 シャワー。 終わった後メッシュさん声がけしている。
23時 自室へ戻る。
以降、証言なし。
そして、泊り客……私たちも含めて。
まずは被害者のアイティさん。
20時30分~22時 遊戯室。 シュジイさん、ジニアスさんと一緒。
21時30分~22時30分 遊戯室。 ジェニー警視と一緒。
※またこの間、21時、22時の2回メッシュさんが遊戯室で彼を目撃している。
22時30分~23時 この間に自室へ移動。
23時~23時30分 部屋を訪れたカンさんに扉越しに返事をしている。※これが生きている彼を確認した最後だった。
23時30分以降、彼の姿を見たものはいなかった。
アレクサンダー神父は確認した通り。
20時30分以降ずっと『左翼の塔』で祈祷をしていた。※シープさんの証言あり。
朝の解錠まで塔にいたことは間違いなし。
エラリーン夫人とイーロウさん。
20時30分~21時 エラリーン夫人はシャワー。イーロウさんはエラリーン夫人の部屋で待っていたという。
21時~23時 エラリーン夫人の部屋。 二人ずっと一緒だったという。……何してたんだか。
23時~23時30分 イーロウさんはシャワーを浴び、その後自室へ。エラリーン夫人はそのまま自室で就寝。
以降、証言なし。
ビジューさん。
21時30分~22時の間にシャワーを浴びた以外、ずっと自室。 証言なし。
以降、証言なし。
ジニアスさん。
20時30分~22時 遊戯室。 アイティさん、ジェニー警視、シュジイさんと一緒。
22時~22時30分 シャワーを浴び、その後自室へ。
以降、証言なし。
ジェニー警視。
20時30分~21時 自室。
21時~21時30分 シャワー。 ※エラリーン夫人は見ていない。シャワーを出た際、ジョシュアと会っている。
21時30分~22時30分 遊戯室。 ※22時まではアイティさん、ジニアスさん、シュジイ先生と一緒。以降はアイティさんと二人。
22時30分 自室へ。
以降、証言なし。
そして私たちですが。
コンジ先生は20時30分から、シャワーを……。
「おい! 20時34分からだと何度言ったらわかるんだ?」
「あー! はいはい。」
20時34分~21時……。
「21時03分だったよ。」
その21時03分 コンジ先生の部屋。
えっと私が21時30分にシャワーに……。
「21時25分な!」
「もう! 細かい時間はいいんですよ!」
「何を言うんだね? 君は! 正確な時間じゃあないとダメに決まってるだろう?」
「わーかーりーまーしーたーぁ!!」
21時25分~22時 シャワー。 行った際にジェニー警視と、終わった後、パパデスさんの部屋の前でシープさんと会っています。
22時~23時 自室。 業務日誌を書いていました。
23時 コンジ先生にお声がけして、就寝。
以降、証言なし。
「ふむ。よくまとめてくれたね? まあ、それが仕事なんだからできなかったら困るんだけどね。」
「一言多いですぅ! コンジ先生の四次元映像記憶にインプットできましたか?」
「ああ。しっかり記憶したよ。人狼たりえる人物もこれで浮かび上がったな。」
ええ……!? もうわかったんでしょうか? コンジ先生の明晰なる頭脳の前に、人狼はその尻尾を掴ませたのでしょうか……。狼だけに……。
「あと、確認しておくべきは、ここだな。」
「え? どこですか?」
「うむ。2階3階を除くとだな、トイレと物置の窓ははめ殺し、クローゼットに窓はなし。そして男女浴場の窓は開けられていなかった。」
「ああ、そうすると!?」
「そうだな。1階は玄関ホールの『コの字型』の内側にある玄関側の反対側にある窓が4つ、メッシュさん、カンさんの部屋の窓、それにあとは扉だが。」
「裏口のようなものありましたっけ?」
~続く~
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
特殊捜査官・天城宿禰の事件簿~乙女の告発
斑鳩陽菜
ミステリー
K県警捜査一課特殊捜査室――、そこにたった一人だけ特殊捜査官の肩書をもつ男、天城宿禰が在籍している。
遺留品や現場にある物が残留思念を読み取り、犯人を導くという。
そんな県警管轄内で、美術評論家が何者かに殺害された。
遺体の周りには、大量のガラス片が飛散。
臨場した天城は、さっそく残留思念を読み取るのだが――。
密室島の輪舞曲
葉羽
ミステリー
夏休み、天才高校生の神藤葉羽は幼なじみの望月彩由美とともに、離島にある古い洋館「月影館」を訪れる。その洋館で連続して起きる不可解な密室殺人事件。被害者たちは、内側から完全に施錠された部屋で首吊り死体として発見される。しかし、葉羽は死体の状況に違和感を覚えていた。
洋館には、著名な実業家や学者たち12名が宿泊しており、彼らは謎めいた「月影会」というグループに所属していた。彼らの間で次々と起こる密室殺人。不可解な現象と怪奇的な出来事が重なり、洋館は恐怖の渦に包まれていく。
声の響く洋館
葉羽
ミステリー
神藤葉羽と望月彩由美は、友人の失踪をきっかけに不気味な洋館を訪れる。そこで彼らは、過去の住人たちの声を聞き、その悲劇に導かれる。失踪した友人たちの影を追い、葉羽と彩由美は声の正体を探りながら、過去の未練に囚われた人々の思いを解放するための儀式を行うことを決意する。
彼らは古びた日記を手掛かりに、恐れや不安を乗り越えながら、解放の儀式を成功させる。過去の住人たちが解放される中で、葉羽と彩由美は自らの成長を実感し、新たな未来へと歩み出す。物語は、過去の悲劇を乗り越え、希望に満ちた未来を切り開く二人の姿を描く。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
双極の鏡
葉羽
ミステリー
神藤葉羽は、高校2年生にして天才的な頭脳を持つ少年。彼は推理小説を読み漁る日々を送っていたが、ある日、幼馴染の望月彩由美からの突然の依頼を受ける。彼女の友人が密室で発見された死体となり、周囲は不可解な状況に包まれていた。葉羽は、彼女の優しさに惹かれつつも、事件の真相を解明することに心血を注ぐ。
事件の背後には、視覚的な錯覚を利用した巧妙なトリックが隠されており、密室の真実を解き明かすために葉羽は思考を巡らせる。彼と彩由美の絆が深まる中、恐怖と謎が交錯する不気味な空間で、彼は人間の心の闇にも触れることになる。果たして、葉羽は真実を見抜くことができるのか。
魔法使いが死んだ夜
ねこしゃけ日和
ミステリー
一時は科学に押されて存在感が低下した魔法だが、昨今の技術革新により再び脚光を浴びることになった。
そんな中、ネルコ王国の王が六人の優秀な魔法使いを招待する。彼らは国に貢献されるアイテムを所持していた。
晩餐会の前日。招かれた古城で六人の内最も有名な魔法使い、シモンが部屋の外で死体として発見される。
死んだシモンの部屋はドアも窓も鍵が閉められており、その鍵は室内にあった。
この謎を解くため、国は不老不死と呼ばれる魔法使い、シャロンが呼ばれた。
どんでん返し
あいうら
ミステリー
「1話完結」~最後の1行で衝撃が走る短編集~
ようやく子どもに恵まれた主人公は、家族でキャンプに来ていた。そこで偶然遭遇したのは、彼が閑職に追いやったかつての部下だった。なぜかファミリー用のテントに1人で宿泊する部下に違和感を覚えるが…
(「薪」より)
思いつき犯罪の極み
つっちーfrom千葉
ミステリー
自分の周囲にいる人間の些細なミスや不祥事を強く非難し、社会全体の動向を日々傍観している自分だけが正義なのだと、のたまう男の起こす奇妙な事件。ダイエットのための日課の散歩途中に、たまたま巡り合わせた豪邸に、まだ見ぬ凶悪な窃盗団が今まさに触手を伸ばしていると夢想して、本当に存在するかも分からぬ老夫婦を救うために、男はこの邸宅の内部に乗り込んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる